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M.N.S.T

初投稿中です。

憧れの職業、探偵ものです。

読みやすく書くつもりでいます。読みにくい感想でもいいのでいただけたら幸いです。

以前こんな話を聞いたことがある「動物と目が合った場合、先に視線をそらしたらなめられる」と。

たぶん家族向けの動物番組だろう「噛まれた場合逆に手をより突っ込め!」という教えとともに記憶している。


俺はまだ目を合わせないで居た。こいつは黒目が大きい、履歴書を机に置かれた時に確認した。

一度目が合えばきっと壮絶なバトルになるだろう、俺は先にその履歴書とにらみ合うことにした。

これまた意思表示のはっきりうかがえるような凛とした綺麗な字だ。女子高生が用いそうなかわいい感じの書体とは違う。硬筆書写の覚えでもあるのだろうか。

実際その迫力のある文字群に魅せられカモフラされているが、氏名、生年月日、高校入学までの経歴くらいしか書かれていない。まぁ高校生ならそうだろう。バイトの面接に用意する履歴書なんてこんなものだろう。

しかしその空白の目立つ履歴書には、趣味や特技はいいとして志望動機すら書かれていない。いや、正確には書かれている「面接にて」と。

正直ソレは給与等詳細をつめる時などに用いる「こっちのセリフ」だと思うのだが、もしやこの小さな履歴書の欄には書ききれないほどの、3万字くらいの熱い思いをお持ちなのかもしれない。

よし、それじゃあ志望動機はメインディッシュにしよう。


コースのメインは決まった。しかし前菜やスープが決まらない。

面接時の簡単な質問テンプレートでも考えとくべきだったか、いや必要ないだろう。

なぜなら…よし、この質問を最初にしよう。

「えーっと、じゃあまずこの事務所はどこで?」

「ウェブサイト。この街の探偵事務所を検索したの。なかなか引っかからなくて苦労したわ」

なるほど。こっちも初の面接希望者だ。こちらをどこから知ったのか、実際すごく気になる。

「中身もまだまだ製作中でね。味気ないんだ」

「そう?私は逆に落ち着いてて雰囲気があると感じたわ。華やかだったり凝りすぎていたりしたら信用できないもの。あれくらいがいいいのよ」

褒められた。上からだけど。

「それはどうも。じゃあ自己紹介してもらっていいかな、もちろん履歴書の字は全部読めたよ」

スープを注文。

「森野サクラ、16歳。梅の丘の二年。他に聞きたいことは?」

慌ててメインの肉を焼き上げる

「志望動機を教えてくれ。最初は冷やかしかと思ったんだけど。ちなみに今も疑いははれてない」

「探偵って仕事に興味があったのよ。実際はどんな感じなのかなって」

「推理小説でも読んでってところ?」

「そうね。そんなところよ」

俺の勝ちだ。

「じゃあもう一つ。なんで目をそらしたの?」

「え?」

「その大きい瞳と広大な黒目では嘘つくの大変だろう。すぐばれちゃうんじゃない?」

「ふんっ。普段嘘なんてつかないもの。ちょっと説明するの面倒だっただけよ」

「かまわない。3万字までなら聞くよ」


俺は正直興味が沸き始めていた。どうか「下で友達が待ってる」などの興醒めするようなことを言わないでおくれ。

そう、ただふらっとバイトしに来る空間じゃないのだ此処は。単純に狭い階段が怖かったりする。

お前の腰掛けてるソファだって業者さん運ぶの苦労してたんだぜ?

とにかく眼前の麗しき女子高生が似合いそうなバイトはウエイトレスとかそんなんだ。食後の約束のパフェをすぐ持ってきちゃったってギリ許す。

実際ここまでのふざけた口の利き方や態度、俺は流しているだろう?

「サイトでも募集なんてかけた覚えは無いんだけど?」

「ええ。なかったわ一応探したもの」

一応探してくれたらしい。

「そろそろ言葉はまとまったかい?」

「そうね。簡単に言うと私は自分を試したくてここに来たの」

「事件や謎や推理とか?悪いが―」

「わかってるわ。そんなたいした事件なんてそうそう起きないんでしょ?」

「まぁね。浮気現場おさえる位で結構しびれる」

「そんなところからでもいいの。私は私の能力を試したいの」

「じゃあ教えてくれ。ずばり能力とは?」

一度下を向いた視線はまたまっすぐこちらに向き、大きな瞳が二度まばたきをする。

二回目、大きな黒目部分が文字通りすべてお目見えした時、

「念写よ」

「ん?…超能力、か?」

「ええ。そこには無いものが写真に写る。と考えてもらえるといいわ」

フックしていた。エッジが効いていた。アールがきつい。今、不安に思っていることが二つ。

結局下に友達が待っているというオチと壷を売りつけられるオチ。

「まぁ信じないわよね」

「ああ。すまないな。超能力者に会った事も自称超能力者に会った事もなくてね。できれば超能力者の方に会わしてくれないか?」

「今、やれと?」

「入社試験としようか。カメラは?デジカメなら貸すが」

「けっこう。なんでもいいのよ。携帯のカメラでもね。で、何を写すの?」

こいつ引かないな。さっさと壷やお札の紹介しろよ。という俺と本気で興奮している俺。

「ちょっと待って」

俺は立ち上がり流しへ向かい一枚の皿をもって再びソファへと戻った。

流しとこことは簡単な仕切りで区切っている。屏風(びょうぶ)みたいなものだ。

「この皿はもう洗っちまったが三時くらいにおやつを食べるのにに使ったものだ。皿の上のデザートを写しだして俺の三時のおやつを当ててくれるか?」

「そんな必要はないわ。そこのゴミ箱にパヴェルの箱が捨ててあるじゃない。お皿の上にはあそこの名物、モンブランがあったのよ。私、一応探偵志望でここへやって来ているの」

洋菓子店パヴェル。この街の大人気のケーキ屋だ。8割近くのお客さんが名物のモンブランを求めるため、ショートケーキは誕生日などの完全受注生産だ。店頭には並ばない。

「ふーん…あ、お茶もまだだったね。すまない」

俺は再び流しへきびすを返す。

電気ポットの再沸騰ボタンを押し

「お茶とコーヒーどっちがいい?」

と背中から質問する。紅茶は俺の気分ではなかったのだ。

「お茶。」

「はいよ」

と背中から返事をし急須(きゅうす)に手をやる。その時、仕切りごしに

「カシャ」

という音が聞こえた。振り返るとサクラは携帯のカメラレンズを白い皿に向け、しかめツラをして舌打ちしていた。


「っち!」



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