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T.U.S

辺りは住宅街。主に二階建ての一軒家がひしめき合っている。御多分に漏れず松田邸も立派な二階建てで、駐車スペースには銀色のセダンと、自転車が二台置かれていた。

「うーん…」

バイクを泊めさせてもらうスペースが無い。この辺りは道幅がとても狭いので路肩に止めると通行する車にかなり迷惑だろう。もし自分が運送会社に従事していたのなら、このエリアの担当は勘弁していただきたいと思う。

「ちょっと、回るか」

サクラをもう一度後部シートに乗せ、もう一度ゆっくりと走り出す。見た目とは裏腹に排気音の小さいこのバイク、土曜の昼過ぎとはいえ閑静な住宅街に騒音を撒き散らしたくは無いので助かる。そして50mほど進んだところにオアシスを見つける。

「何だここ?」

家々の森の中に現れたのは、遊具が一つもない小さい公園。公園もどき。広さ的にはその辺の家と同じくらいの面積だろう。ぽっかりとここだけに扉と壁と屋根が無い。ある物はといえば動物をモチーフにした小さい腰掛けのみだった。そしてパンダとワニの腰掛けに、中学生くらいと思われるカップルが座っている。

「……」

きっと俺たちが来る前までは、会話が盛り上がっていたのであろうが、今は黙ってこちらを窺っている。無理やり例えると、カラオケで熱唱していて店員がドリンクを持って来たときのような雰囲気ってとこだ。

俺はエンジンを止め、ヘルメットを外し、髪の毛を右手で整えながらパンダ側に座る少年に話しかけようと目線を送る。が、受け止めてもらえず、結局彼の横顔に向かって話しかける。

「こんにちは。えっと、この自転車って君たちのかな?」

公園の入り口に、寄り添って二台留められている自転車がある。彼らもこれくらい大胆に寄り添えばいいのに、パンダとワニの間には憎きライオンが居る。

「はい。そうです…けど?」

俺の柔らかめの口調が聞いたのか、少年はこちらに向き合い、わざわざ立ち上がって答えてくれた。

「えっと、ちょっとご近所のお宅に用があってね、少しの間ここにバイク止めておいても問題ないかな?」

爽やかに。爽やかに。

「はいっ。大丈夫だと思います!」

おおっ!こいつもかなり爽やかだ!と、いうわけで、ここに駐車させてもらおう。ん?そういえばサクラは?

「うーん、うーーん」

と、うねり声を上げながら例のあご紐と格闘していた。ふらふらと狭い公園の入り口スペースを何周もしている。そうだな、こいつ用のヘルメットは「パチン」って留められるやつにしてやろう。

「ほら、顔かせ」

あごを突き出すサクラ。一瞬恥ずかしそうに目線をそらそうとするが、それよりも早く紐は外れた。なんでこんな単純な仕組みがわからないのだろう…ヘルメットをようやく外し

「ふー、ありがとう」

と言ってバイクのミラーで髪の毛を整えるサクラ。別にどれだけくしゃくしゃになっていても、こいつのボブヘアは様になっていると思う。清潔感と独創性とが、こいつの頭の上では珍しく仲良くしている。

「んじゃ行くぞサクラ。ありがとうね、少年」

そう言って最後にもう一度中学生カップルに目をやると、なにやら羨望の眼差し。たぶん俺たちをベテランカップルと勘違いしているのだろう。違うんだよ君たち。こいつとはまだ出合って4日くらいだ。

「じゃね!仲良く!」

なんて言って小さく手を振り、「まって!」なんて言ってこちらへと小走りでついてくるサクラ。たぶんまた大きく勘違いされたと思う。まぁ今朝は同じアンパンを仲良く食んだ間柄ではあるがな。きっとあのアンパンもお互いの胃の中で今際の際を迎えている事だろう。炭水化物が消化されるのは8時間くらいと聞いたことがある。もう2,3時間の付き合いだ。


松田邸の玄関の前に到着し、俺はまだ連絡していなかった事を思い出す。そう、

「近くに着いたら連絡します」

みたいな事を言ってたのを完全に失念していた。

「ちょっと…あの子達と喋るか?」

「へ?」

俺たちは先ほどの公園へきびすを返し、到着する間に俺は萌さんに電話をかけた。

「あ、あと10分くらいで到着いたしますので」

うん。大人のマナーなんだ。もしも萌さんが今シャワーを浴びていたとしたらどうする!


えっと確かアザラシとライオンの腰掛けが空いてたっけ


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