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S.S.U-2

 熱々のお茶が来るより早く、ツバキはその新着メールを開き、二周ほど読み返す。

「どうぞ」

と言って腿の上から俺の右手へ。黒い小型のノートパソコン、今日はあっちこっちと忙しい。

メールは言わずもがな依頼者からのものだった。メールフォームからではなく、依頼者のみにこちらから伝えるホットラインのアドレスへ送られてきている。ウェブサイトに載せているものとは違うのだ。こうしてうちの事務所はいくつかのアドレスを使い分け、そのうちのいくつかは定期的に変更している。これは事務所立ち上げ時に俺がたまたま見たB級スパイ映画にて主役の諜報員が使ってた手段を真似たのだが、今のところただの骨折りにしかなっていなかった。

「いつでもかまわないと」

メールに目を通し小型ノートをツバキに戻す。

メールの内容はただこちらの要項に答えるものであった。つまり面談についてだ。場所はこの事務所、時間は本日中のなるべく早い時間を指定してきた。

「了解」

再び定位置である腿の上に戻った黒いノートの上をツバキの両手がリズミカルに走る。

「おまたせー。返信来たの?」

お盆から熱々のお茶を差し出すサクラ。だんだんとお茶くみ係が板についてきている。いつかその木製のお盆を銀のトレイにしてやろう。

「サンキュー。あちち」

熱いのはわかってるんだけどね。

「送ったわ。ありがとう」

ツバキもまた熱々に手を伸ばす。

「ああ。とりあえず、今日この事務所に来てもらって話を聞く。そこで―」

作戦会議のスタートだ。三人になってからのフォーメーションは初めてだからな。監督である俺は本日の戦術を手短に伝える。

「わかったわ!」

新加入のストライカーが親指を立ててかえす。俺の人差し指へのオマージュだろうか?

「テロン」

今回もすばやい返信。きっとあちらもパソコンの前で待機してるのだろう。

「すぐ来るって。25分くらい」

メールに目を通したツバキが告げる。

「え?」

そしてじわじわと慌てはじめる俺。

「お茶請けあったけ?つうか急だな、掃除くらいさせろっての!」

そういって流し横の戸棚へ。日本茶にマッチするものを探る。無かったらサクラにダッシュでお使いさせよう。

「うわー、ちょっと緊張してきたー!」

と言って、サクラは自らのショルダーバックから黒ぶちのメガネを取り出す。おそらく伊達だろう。

「なんだよそれ?」

と、クッキーを手に戻る俺。コーヒーか紅茶にしよう。

「探偵!」

もともと大きめのデザインなのか、サクラの顔が小さいのか?試着はしたのだろうか?まぁ似合ってない事は無い。探偵っぽいかどうかは知らないけどな。


ツバキだけは一人落ち着き、慌てる二人の様子をにこやかに眺めていた。

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