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最後の一杯。

作者: める252
掲載日:2026/09/27

「いつものを。」


なんだこいつは。初めましてだろうがよ。

そう思ったが、アイリッシュコーヒーを出すことにした。


「お客さん見ない顔だねえ。」


彼の顔が曇った。

同時に少し寂しげな顔をする。


「来たくなっちゃったんですよ。ここにね。」


なんだ?グルメサイトでも見たのか。


「そうかい。」


とりあえず返事をする。


「はいよ。いつもの。」


こいつはありがとうと言って一口。


雑誌を開き、なんとなく読む。


「雑誌、面白いこと書いてあります?」


馴れ馴れしく聞いてきた。


「別に。感染症が流行ってるみたいだな。」


懐かしいな。そうぼそっと言っている。


「最後に高橋さんの顔を見にきたんですよ。」


なんだ唐突に。


「失礼だが、名乗った覚えはないんだが」


少し笑っている。


「でも私は高橋さんのこと知ってますよ。昔から。そうずっと昔から」


怖いこと言っている。だが不思議と気持ちはあたたかい。


「ありがとう。ここはかけがえのない場所でした。」


初めましてで別れみたいなことを言っている。

そしてご馳走様と金を置いて出ていった。


少し多めのお金と共に、手紙が置いてあった。


そうか。彼は…。


女性が入ってくる。


「お疲れ様。最後の店じまいしよう。」


最後?


「最後思い残すことはなかった?」


続けて言われる。


「今日は久しぶりに彼にも会えたんだ。」


そう伝えると女性は少し笑みをこぼす。


「彼には感謝しなきゃね。毎日来てくれたんだから。」


店を閉める。

そして帰路についた。

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