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第3話 真相

グリッドに載せるリクの記事は、会場で撮った写真と新たに撮る絵の画像、

そして玉城のコピーのみが使われることが決まり、短い打ち合わせが終了した。

「前みたいにリクさんに密着取材しないんですか? 私も参加したかったのになあ。ざーんねん」

とボヤく多恵をひと睨みした後、長谷川は昼からの予定のため、その多恵を連れて退席した。

けれど立ち去る前玉城に「またちゃんと話聞かせてもらうよ。怪我のこと」と、付け加えるのも忘れない。

玉城は苦笑いして二人を見送った。


玉城の怪我の真相が酒のせいでは無い事くらい、あの人にはお見通しなんだろうと玉城は思った。

そして、ただの仕事仲間であるにも関わらず、そうやって気に掛けてくれる事も正直嬉しかった。

別に隠さなきゃいけない理由がある訳ではない。ただ問題はある。説明するのが難しい。


玉城はまだ憮然としてこちらを睨んでいるリクと、渋々目を合わせた。

この青年には逆に説明はいらない。

それはそれで、また問題だった。


「追いかけられたんだろ? 玉ちゃん。それで怪我したんだろ? どんどん力が強くなってる。

今までみたいな人畜無害の浮遊霊じゃない、振り払えないほどタチの悪い連中に出会うこと、多くなったんじゃない?」

まるで責めるような目をしてリクは言った。

それはさっき嘘を付いたからなのか、それとも霊力が強くなってしまったからなのか。

後者ならば自分のせいではない。玉城はほんの少しカチンと来た。


「長谷川さんに説明するの、面倒だろ? あの人の事だから絶対霊なんて信じないし。

それにさ・・・だいたい、お前にそんな風に怒られる筋合いはないよ」

「怒ってなんかないよ」

「じゃあ、睨むなよ」

「睨んでなんかない」

「その言い方がもう・・・・・・」

リクに言い返そうとした瞬間、ぐらりと視界が回る感覚に捕らわれ、玉城は頭を抱えてテーブルに突っ伏した。

そしてしばらくそのまま黙り込む。


「どうしたの?」

青ざめてリクがテーブル越しに体を乗り出した。

「ん・・・落ちたときに頭打ったからかな。時々クラクラする。でも大丈夫だよ。ちゃんと病院で精密検査もしてもらって、退院のOKが出てるし。少しの間だけ記憶の混乱があるかもって言われたけど、どうってことないよ」

「・・・本当に?」

「本当だ」

「いったい、どんな状況だったの」

「まあ、簡単に言えば、強面の連中にいきなり追っかけられたんでとにかく逃げて、神社の階段降りようとしたら、踏み外して転がり落ちて、気を失ってるところを運良く散歩中の人に階段の上から見つけて貰って病院に運ばれた、みたいな」


「・・・ひどい状況だね」

リクは笑っていいのか心配していいのか分からない表情を浮かべる。

玉城はニヤリとした。

「知ってるか? 頼みもしない検査いろいろ受けさせられたのにさ、全部請求されるんだぞ病院って。あんなヤクザな商売ないよな」

「なに言ってんだよ、助けて貰ったくせに」

今度はリクは可笑しそうに笑った。玉城も笑う。


“心配すると不機嫌になる”

玉城は今日、またもう一つリクの厄介な癖を発見した。


ため息をひとつ付き、玉城はぐるりと辺りを見回した。

昼下がりの大東和出版のラウンジは大きな窓を通して程良い光が取り込まれ、

いつも心地よい明るさを保っている。玉城の好きな時間であり、場所だった。

そして向かいにはやっと機嫌の直ったリクがいる。まるで狙い通りのシチュエイションではないか。


玉城には、前日から相談しようかどうしようか迷っていた事が一つだけあった。

切り出すにはちょうど言いタイミングだと思い、玉城は向かいの青年の方にぐっと体を乗り出した。


「なあ、リク」

「ん?」

「リクはさあ、例えば誰かに殺されてしまった人の霊に、犯人を捜して欲しいとか頼まれたらどうする?」

「・・・」

リクは大きな瞳をさらに丸くして玉城を見た。

玉城は続けた。

「だからな、こいつが犯人なんだ! って、そんな映像を見せて教えて来たら、どうやって助けてあげる?」


「・・・何の話?」

リクは真剣な目で質問してくる玉城を、困惑したように見つめた。



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