表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/16

第2話 嘘つき

「あれえーーー! どうしたの?玉城先輩、その怪我」

いち早く玉城を見つけた多恵の甲高い声に、長谷川とリクばかりでなくラウンジにいた数人の社員まで一斉に振り返った。


・・・だから嫌だったんだ。

玉城はバツの悪そうな顔をし、そっと長谷川達のテーブルに近づいて行った。


長谷川もリクも多恵も、玉城をマジマジと見つめたまま、しばらく唖然としていた。

その額には真っ白い包帯。首にも腕にも指にも至る所に包帯や絆創膏が貼られている。


「すいません、遅れてしまって」

申し訳なさそうにぺこりと頭を下げる玉城。

「すいませんじゃないよ。どうしたの玉城、その怪我。ヤクザに喧嘩でも売られた?」

「あ、するどい! 長谷川さん」

長谷川の冗談に笑いながら飛びついた玉城だが、逆にギロリと睨まれた。

「で? もう一度聞くけど、どうしたの玉城。その怪我と、携帯にも繋がらなかった理由を説明しなさい」

今度の長谷川の声は厳しかった。

子どもの悪ふざけを咎める親の厳しさに似ている。

玉城はようやく取り繕った笑いをやめ、改めて説明の体勢に入った。


口を開く前に一度チラリと窓際に立つリクと視線を合わせたが、その問いつめるような目に、フイと玉城は目線を反らせた。


「いや・・・。実は昨日の夜、めちゃくちゃ酒を飲み過ぎてしまいまして。帰り道で階段踏み外したんです。そんで転げ落ちて、気を失って、救急車で運ばれて・・・こんな感じです」

玉城は両手を広げて苦笑いをしてみせた。

「携帯もその時無くしちゃったみたいですね」

「うわあ! やっちゃったわね、玉城先輩。言ってくれたら病院まで飛んで行ったのに。水くさいなあ。で、もう大丈夫なの? 入院とかいいの? 検査とかは?」

心配そうに玉城の肩や頭に触れてくる多恵から慌てて玉城は体を離す。

べたべた触ってくるのは昔からの多恵の癖なのだが、まさかこんな所でされるとは思わなかった。

「だ、大丈夫だから、多恵ちゃん。ちゃんと検査してもらって解放されたんだ。ついさっきだけど」

そんな様子を長谷川は、ほんの少し眉間に皺をよせ、じっと黙って見つめている。

ワザと視線を反らす玉城。


・・・気まずい。

早く打ち合わせに入ってくれないだろうか。

俺の怪我の事なんてもう、どうだっていいじゃないか。スルーしてくれ。・・・


玉城はじっとりした空気に呼吸が苦しくなるのを感じた。どうしたものかと戸惑いながら、もう一度リクを見る。

やはりリクはじっと不機嫌そうな目を玉城に向けている。

あの、心をすべて見透かしているような目が苦手だ。

今にもその唇が動きそうで、玉城は怖かった。


「嘘つき」・・・と。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ