1話 この国はもう死んでいる
本編完結済みです!
小説書き始めのひよっこなので誤字脱字、アドバイスなどいただけるととても嬉しいです……!
よろしくお願いします!!
――末代まで祟ってやる!!
冷たい石牢の中で、日数を壁に書き殴った跡を見つめた。
投獄されて15日。今日の正午、わたくしは死ぬ。いえ、殺される。
元婚約者――浪費家ボンボンクソバカ王子に嵌められた冤罪で!!
というか平民の娘をわたくしが突き落とした、なんて意味不明な供述がどうして通るのよ!この国は大丈夫なの!?
人手を割く価値もないと判断されたのか、一昨日から食事係どころか巡回の騎士すら顔を出さなくなった。
涙すら枯れた惨めな身体。滑らかだったその手は荒れ、つい一月前までの面影はない。
……悔しい。腹立たしい。やっぱり直接張り倒したい!なけなしの力で、ボロボロの錆びた鉄格子を握りしめ――――――ポキリ。
ポキリ。
……ポキリ?
手には、根元が折れた鉄格子の柵。
思わず手元の錆びた棒を凝視する。
……まって。これ、よく見たら中身は空洞?
筒の先に目を当てて覗くと、薄汚れた壁が見えた。
鉄格子が……パイプ?鉄格子なのに?それって、駄目じゃない?
……この国、大丈夫なの……?
――とりあえず、わたくしはポッカリと口を開けた柵から抜け出した。
――
白い息がこぼれる。麻の囚人服は寒さの前ではただただ無力だ。裸足に鋭い痛みが走り、持ち上げるのも辛い。
握りしめた鉄のパイプを護身のお守りに、そろりそろりと進む。
……おかしいわね。
幾度となく歩み、参じた回廊。大鏡に映るのは、薄汚れた金髪と翡翠の瞳を持つボロ服の女ただひとり。
普段なら薄ら寒い笑い声と悪意の視線が交差する王城は静まり返り、まるで精巧な偽物の中に放り込まれたような不気味さだ。
一昨日から巡回がなかったのは、そもそも城に人が居ないためだったかしら?不穏な予感に頭を振る。
それでもチャンスだわ。とにかく、城から抜け出す。その後は……バカ王子!見ていなさい!!
無駄に輝くプラチナブロンドを持つ顔だけ特級男。あいつのご尊顔を思い切りひっぱたいてやる。心の中で思い切り手を振り上げたその時、
どん!
「っ、きゃ!」
いけない、前方がおろそかになってしまっていた。――まずい!
思わず身をすくめて――違う、それじゃダメ。この鉄パイプで相手の頭を……ああ、肩を掴まれた。ダメ、このままではまた牢屋に逆戻りだわ……!
「……ディア様!ディアお嬢様ぁ!やっと見つけましたぁ!!」
「……その声……ミュウ?」 「はい!お嬢様のメイドでメモ帳で下僕のミュウです!」
恐る恐る目を開くと、まん丸の目に思い切り涙をためた少女――ミュウが座り込んでいた。
肩の力が抜けて、手が震える。やっと、味方に会えた。
「お嬢様!!ほらほら、こんな場所さっさと出ちゃいましょ!」
「……わ、わかってるわ!でも、どこから逃げれば……」
ミュウの小さな手がわたくしの身体を引き上げる。
「ふふん!ばっちり逃げ出せるように王城の地図はぜーんぶ入れました!」
目元を指さすいつものドヤ顔。落ち着きなさい、ディア。この子は物覚えだけは異常に良い――いけるわ。
「ここから近い秘密の通路は第二応接間の暖炉の隣の「案内!」はい!お家に帰ったら、あったかいお風呂に入りましょ~」
ミュウはわたくしの肩に自分が羽織っていた外套を掛ける。
きっと、大丈夫。大丈夫に決まっているわ。
その温かさに心が緩んだその時。
「待てッ!ディア!ディア・ヴィルシュ侯爵令嬢!!」
今、誰よりも会いたくない美男が目の前に立ち塞がった。
――
「痛っ!やめて!」
「バカ王子!お嬢様を放せ~!!」
「ってぇ!!噛み付くんじゃねぇ!クソガキが!」
鉄パイプごと右の手首を掴まれて引きずられる。
一見華奢な身体のどこにそんな力があるのだろう。二人の抵抗も虚しく、バカ王子はわたくしを引きずり続ける。
「バ……ゴーミル王子殿下!どこに向かわれるのですか!?」
「王子じゃねぇ……俺は、王だ」
「なんですって?!」
その頂に輝く王冠を見上げ、血の気が引く。
彼が、王?どポンコツの、クソバカの、歩く財政破綻装置が?目の前がぐらりと歪む。
わたくしが投獄されている間に、一体何がおきたというの?
「まぁ、貴様には関係ない……いや?あるか?大好きなロンディネ王国の礎になれるぞ?感謝しろ」
ゴーミルはにやりと美しい顔を歪ませて顎で前を示した。
連れて行かれたのは死刑場への扉……ではなく、国鳥である燕の紋章が刻まれた豪奢な扉――玉座の間への道。
厳重に護られているはずのそこには、奇妙なことに衛兵も騎士もいない。
ゴーミルによって乱暴に開かれた扉の向こうに待っていたのは、憎悪に満ちた平民達だった。
貴族しか入れぬはずの広間に、民衆たちが目を血走らせて集っている。ゴーミルはそれらをまるで意に介さず、堂々とした足取りで絨毯を横切り、玉座へ向かう。
そうして辿り着いた彼は、玉座にわたくしを押し込んだ!
「――え?」
臣下が座して良い場所ではない。
咄嗟に立ち上がろうとしたが、力で抑えつけられる。そして、己の頭に載る象徴を、あろうことかわたくしに乗せた。
男は民衆に向かって叫ぶ。
「今この瞬間!王位はこの女に渡った!さぁ愚民ども!王はこいつだ!殺せ!なぁ!?殺せば満足するんだろう!!」
――ゴーミルは唖然とする一同を残し、爆速で広間から逃走した。
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