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第6話 師匠の理論

 翌日。

 全身を襲う筋肉痛と、謎の吐き気と、財布の焦げ跡を抱えながら──俺はまた道場にいた。


「じゃ、昨日の魔法。何かわかったか?」

「え、いや。わかるわけないでしょ」


 こっちは顔に水ぶっかけられて、感電して、胃液リバースして、石に刺されて、最後に焼肉で手打ちになったんだぞ?講義なんて一回もなかったからな!

 てか体罰を講義と虚偽申告するな!!!


「仕方ない。じゃあ今日から理論だ。まず、魔力とは“魔素”の集合体で、そこに属性がついたものだ。ここまでは知ってるな?」

「中学で習いました」

「よろしい。でな、“魔素”には共鳴という性質がある。似た属性の魔力が近くにあると反応するんだ」

「あ、じゃあ昨日のアレは......」

「そう。私の魔力が誠の魔力と波長を合わせて、共鳴させた。結果、お前の魔力を無理やり外に出したってわけだ」


 ......ちょっと待て。それつまり──


「え、じゃあアレって俺の魔法じゃないんですか!?」

「うん。あくまで私の魔法のプラスアルファだ。私と誠の魔力構成が、そこそこ似てたから合わせやすかった」


 そう言って師匠は軽く指を鳴らす。


「お前の魔力構成は、勘だが──雷45%、水30%、風15%。あとは残りの微量混合。火はゼロ」

「......え、そんなに正確に見えるんですか?」

「直感だ。あと経験。私は天才だからな」


 サラッと。しかも自画自賛。いや、天才とかいうレベルじゃない。俺の師匠なんかするようなレベルじゃない。あとなんで火だけゼロなんだよ。


「でな、火属性は完全に使えない。ゼロだ。てか、全ての冒険者は“使えない属性”を一つは持ってる」

「なんでそんな欠陥仕様……」

「知らん。ダンジョンの神にでも文句言え」


 教師放棄は罪だぞ......


「真面目に言えば、諸説あり、だな。だから確実にわかるわけじゃない。今のお前には考えるだけ無駄だ。ちなみに私は水55%、雷20%、風15%、火5%。残りは光闇緑をちょっとずつ」

「いや、メジャーな属性はほぼ全部使えるじゃないですか。ずる......」

「それでも土だけはゼロだ。地割れひとつ起こせん」

「それはそれで不便そう......」

「まあいい。お前は火がゼロ。その代わり、水と雷を主力に育てればいい。昨日、あえて火を撃たなかったのもそれが理由だ」

「え、じゃあ最初から俺の属性わかってて──あんな拷問したんですか?」

「まあな」


 ……怖ッ! 水ぶっかけも、感電も、全部計算ずみ!?その行動よりも計算に驚きだな。


「え、それ普通にヤバくないですか?」

「うん。だから人には教えるな。他人に見せられる指導法じゃない」

「やっぱやましいんじゃないですか!!」

「違う。我流だからな。私に師匠はいないし、誰もこれを知らない。だが、完璧だ。他のズボラ理論とは違ってな。あとワンチャン警察に捕まる」

「ただの最強かよ......」


 こんなバケモンが親の知り合いでよかった。そして最後の一言を聞き逃すとでも思ったか!!!!

 自覚あるんじゃねえか!!!!


 ......ん?なんだこれ?全ての感情を鎮め、ポケットに入ってた紙が何なのか、を思い返す。


「......あっ!」


(昨日の──パーティ勧誘の先輩!)


「師匠、ちょっと外出してきます!」

「おお、行ってこい。魔力感覚、忘れるなよ」

「了解です! って、それ忘れる以前に身体で焼き付いてます!」


 俺は全力ダッシュで大学へ。もちろん、授業があるわけじゃない。あの人がいる可能性が高いからだ。冒険者大学は土日も実習とかサークルとかあるし、二年なら普通に来てるだろ。

 走りながら、ポケットの紙に書かれていた番号に電話をかける。


(頼む、出てくれ...... !)


『はいもしもし?』

「あ、あの! 昨日誘ってくれた宮田です! まだメンバー決まってなかったら、僕......組みたいです!」

『あ〜! 昨日の人!? え、マジ!? ありがとう!』


 電話越しからテンション爆上がりの声。


『てか今どこ?』

「えっと......大学です!」

『え、今日休みだよ? まあいいや。ちょうど今、八王子ダンジョンの7階層だから、上がる間に1階で集合しよ。じゃ!』


 ブチッ。......切れた。


「え、えぇぇぇ!? 俺も今からダンジョン行けってこと!?」


 別にダンジョンに行くのが嫌なんじゃない。


 ───逆方向なのだ。


 俺は、慌てて方向転換。普通に道場で電話しときゃ良かった。仕方ないから全力ダッシュ。もう体力ゼロ。でも、行くしかない。


 こうして俺は──冒険者大学から、八王子ダンジョンへと突っ走ることになった。

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