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間話1 合宿の夜

 眠くなった俺は大草原に仰向けになって寝ようとした。


 ……が、寒すぎる。普通に寒い。

 いくら眠いとは言えこんな寒いとこでは睡魔が撤退していく。それに、夜にも関わらず毛布なしで寝るのは身体も冷え、体調を崩す未来しか見えない。


 ここで荷物なしサバイバルを恨むのが凡人。

 火魔法が使えなくても解決策を出すのが秀才───つまり俺だ。


 近くの雑草をかき集めて、そこにライトボルトを一発放つ。

 バチッ、と火花が散り、乾いた草に引火する。

 やがて小さな火は周囲を巻き込み、じわじわと広がっていった。


 物質は高温になれば発火する。火がなくても雷で代用は出来る。


「……よし」


 これでようやく寝れる。

 安心して仰向けになって目を閉じかけた、その時。


「……何?」


 いつの間にか隣に来ていた師匠が、指でつついてくる。


「なんか話そーよ?」

「……」


 無視でいいな。

 俺は無言で身体ごと反対側へ向き直る。


 つんつんつん。

 次第に少しずつ増える。


「ねぇーねぇー」


 無視。完全無視。


 だが、そろそろ眠気より苛立ちが勝ってきたので、キレようと目を開けて反対側を向こうとする。その瞬間───


「わぁ!」

「うわぁっ!?」


 気づいたら俺の目の前に来てました───じゃないんだよ!!!

 近い近い近い!!!


 まあ多少計画は狂ったが予定通りキレよう……としたが満面の笑顔だった。

 しかも、妙に楽しそうなやつ。


 そんな俺の顔を見ながら、うんうんと頷いて、


「わかるよーその気持ち。"なんか話そう"、じゃダメだよねー。話題をもうちょっと絞らないと話せないよねー」


 ……絶妙に腹立つなこれ。


 俺がコミュ障であることをディスってきてるのか、ただ本能で煽ってきてるのか。キレることには変わらないけどな。

 残念だったな、今の俺は冷房の効いた部屋でふかふかのベッドで寝れないからただでさえストレスがあるんだ。


 覚えておけよ、これが終わる時がお前の命日だ。


「じゃあさ、マコくん」


 軽い調子で言う。

 マコくんって何だよ。(マコト)も3文字しかないんだから略す必要ないだろ。


「恋バナしよ?」


 ……ん、今なんて言った?

 恋バナ……!?

 必死に記憶を遡る。……ダメだ、幼稚園の頃だ。こんなので話せる気がしない。

 終了。これは無理だ。


 聞き流そう。うん、それが最善。

 だが、そんな俺の考えを師匠が知る由もない。


「あれ、大学で女子と話さないの?グループワークとか」

「……組んでない」

「え、なんで?」

「……まあ色々」


 主に対女子コミュ力が原因だが。


(無理してでも組んどけばよかった……)


 今さら気づいた。

 が、組んでたら、それはそれでトラウマになりそうだ。絶対に失敗するし。


「サークルは?」

「入ってない」

「え、大学に何しに行ってんの?」


 お前のせいだよ!!!

 こっちは道場とダンジョンで時間消えてんだよ!!!

 夢見たキャンパスライフは、気づいたらスパルタ道場ライフに差し替えられてたんだよ!!!


 ……いや、半分くらいは自分のせいな気もするが。


 微妙に気まずくなった空気を、師匠が無理やり持ち上げる。


「あ、じゃあ部活は!?」

「帰宅部」

「文化祭は!?」

「裏方」

「……」

「……」


 静寂。

 俺のメンタルが、静かに削れていく。

 その様子を見て、師匠がぽつりと呟いた。


「……誠、苦労してるんだね」


 グサッ、K.O.!!!!

 勝手に頭の中に終了のゴングが鳴り響き、俺のメンタルがノックアウトされ、チー牛だということを強制的に再確認される。


 ……許さん。


 この状況を全部師匠のせいにすることで、俺は精神の安定を保つ。

 人はそうやって生きていくんだ。


「じゃあさ」


 気を取り直したように、師匠が言う。


「女の子と話す時の練習しよっか」

「……は?」

「例えばさ、今の状況でどう話しかける?」


 無茶振りすぎる。

 だが、ここで逃げるのも癪だ。


 少し考えて、口を開く。


「……今日、星綺麗ですね、とか」

「お、普通にいいじゃん」


 お?


「で、そのあとどうするの?」


 詰んだ。


「……」

「……」


 沈黙。

 師匠が肩を震わせる。


「いや、続かないなら意味ないでしょ」

「うるさい」

「せっかく頭いいんだからさ、もうちょい言葉選びなよ。その賢い頭はなんのためにあるの?」


 柔らかいその言葉の中にサラッと悪意に満ちた言葉が詰まってたのは気のせいか?


 いいもん、俺彼女作んないし。俺は全てを冒険者に捧げるんだから。

 世界最強、世界最強。



 それから他愛もない話をいくつかして、時間が少し経った頃。

 ふと、気になっていたことを思い出す。


「……そういえばさ」

「ん?」

「他に弟子っていないの?」


 少しだけ間が空いた。

 師匠は記憶を辿るように視線を上に向ける。


「数年前に一人いたな」

「え!?」


 マジか。

 あのハードモード指導についていけたやつがいるのか?

 ダンジョンに初めて入った日に気絶する直前まで魔法を浴びせられるような訓練についていけるわけがない。


「ついていけてたんですか?」

「かなりな」


 さらっと言う。


「最初は二十人くらいいたけど、最後まで残ったのはそいつだけ」


 ……化け物じゃねえか。

 尊敬するレベルだぞそれ。


「まあ、当時は今よりはマシだったけどな」


 師匠が付け足す。


「そいつが余裕でこなしてたから、誠ならいけると思ってちょっと上げた」


 訂正。

 普通に恨む。

 世間から見たらまともでも、俺から見たらただの悪魔だ。


「無理だろそれは」

「大丈夫大丈夫」


 軽いなこの人。


「せっかくだし、今度呼ぶか」


 師匠が、楽しそうに笑う。


「面白いと思うぞ」


 ───よし。

 その瞬間、俺の中で決意が固まった。


 その元凶、絶対ぶっ倒す。

これにて第1章 冒険者大学入学編が終了しました!!!!

去年の秋頃から設定を練り、冬から作品を書き始め、試行錯誤してようやくここまで来ました!!!

みなさん、ありがとうございます!!!!


で、申し訳ありませんが、第2章公開まで1週間くらいお休みをください。

少し私生活が忙しくなってきて、安定した更新ができるか不安なので、この1週間で何とかします。

次回の更新は3/27の予定です!!!


ということで、第2章もお楽しみに!!!!!

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