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第20話 地獄の合宿6 最終日:ラストミッション

 100頭のオークを倒し、その後に待ち構えていた絶望みたいな訓練を終わらせて、

 ───気づいたら、俺の目の前には朝日があった。



「よし、今日もいいダンジョン日和だ」


 そりゃそうだろうな。あんまダンジョンの草原が曇ってるところ見たことないぞ?

 今日は3日目。つまり最終日。

 となるとやることは一つ。


「今日の目標はわかるな?」

「オークジェネラルの討伐、ですね?」

「そうだ。討伐出来次第、この合宿は終了だ」


 なるほどね。これで終わっちゃうのか。……ってなる訳ないだろ!

 矢も奪ったこと忘れてねぇからな!合宿終わったら冷房の効いた部屋でゴロゴロするんだ!

 俺は冒険者に憧れていたが、戦闘狂になりたかったわけじゃねえからな!!!!

 勝てる見通しが全く立たない敵と戦うほど狂ってない!!!!


「じゃあ、頑張って。私はそこで見守っておくから」


 はいはい。

 まあ、短剣取られるような妨害されるよりはまし。


 とりあえず探しに行くか。




 ◆◆◆◆◆


(……いた)


 200m先、オークの群れ。

 オークジェネラルと、その護衛2頭。


 護衛は……ハイオークか。

 もちろん気付かれないようにちょい遠くから見てるから確証はない。

 だけど、今まで見た中でガタイが一番良い。木剣というよりか棍棒をもったオーク2頭が、それより一回り小さい何も持っていないオークについている。


 つまり武力ではない立場の高さ。

 オークの階級社会で、武器を持たないのにハイオークより上に立てる存在。

 それは───オークジェネラルのみだ。


 残念だったな。

 戦争でその指揮能力が役立っても、1on1のタイマンで武器無しなら俺の勝ちだ。


 まあ、ジェネラルじゃなかったら嫌だけどな。突撃して違いました、とかシャレにならん。

 いざ、突撃!……とはならない。慎重に、慎重に。


 匍匐前進でゆっくりと前に進み、木に近づく。うん、自衛隊も驚くぐらいの匍匐前進だ。下手すぎて。


 なんとか20mくらい頑張って木まで辿り着いた。

 ジェネラルまで60m。息を殺して、矢をつがえて。


 ギィィ……


 まだだ。それじゃあ届かない。目指すは暗殺だ。確実に仕留める。

 狙いを定めて、


 グサッ!


 矢は肩に命中する。オークはうずくまりながら地面に倒れる。

 目標は半分達成。倒したので半分。

 残りの半分は───当たったのは護衛だということだ。


 もちろん倒れたのも護衛。これによりジェネラルに完全に気づかれたため、遠距離戦は不可能。逃げられたら負け。


 よって、

 武器を弓から短剣に切り替えながら、猛ダッシュ。

 オークジェネラルを守ろうと、武器を構える護衛。だけど、


「フラッシュ」


 至近距離の閃光。

 視界が奪われた護衛の腹を短剣で斬り刺す。


 フラッシュを放ったのはほぼゼロ距離。

 目眩しでも適当に棍棒で攻撃されたらこっちが返り討ちに遭う可能性だってあった。ていうかそしたら死んでいた。


 結果オーライ!


 にしても、楽勝楽勝。毎度毎度こうも簡単に引っかかるものかね?

 オークはフラッシュにやたらと弱い。最初から片目でもつぶってろ。


 だが油断している暇はない。すぐにジェネラルへ視線を移す。


 こちらを睨むオークジェネラル。護衛が倒れた瞬間、すぐさま俺から距離をとったのは流石ジェネラル。指揮官系なだけある。


 だが所詮一頭。

 護衛がいない今、コイツだけを倒せばいい。

 いくら戦闘系でないとはいえ、タイマンでは負けるから、少しずつ弱体化させない限り勝ち筋は見えない。


 どこを狙うかと視線を巡らせるが……やはり弱い。

 指揮官とはいえ、そこまで貧弱なオークも慣れるものなのか。

 ただ、格好だけはエリートだ。


 右手の短剣を左手に持ち変えナイフを抜き、投擲姿勢を取ると、ジェネラルは足に力を入れ、いつでも避けれる体勢を取る。


 どうやらテクニックはあるようだ。

 だけど、それだけじゃ上手くいかないってことを教えてやる。


 あと10m。

 身体を貫くようにナイフを投げる。だが、避けれるように俺の手を見ていたジェネラルはさっと避ける。ナイフの延長線上にもうジェネラルはいない。


 ……だけどな。


 ───それぐらい想定してるんだよ!


「フラッシュ!!」


 殴ろうと横に避けていたジェネラルの眼5mの位置で強烈な閃光が放たれる。

 直前に目を閉じた俺はそこまで影響がなく、ある程度見える。


 目が眩んでいるうちに俺はオークの足元に着く。

 すぐさま、足の浮き出ている静脈に刃を───




 ───ドゴッ


 鈍い衝撃。

 次の瞬間、俺の身体は5mほど吹っ飛ばされた。


 ……は?

 この脚力は何だ……?


 蹴り飛ばした音の方向から俺の位置を割り出し、ゆっくりと近づく巨体。その不気味とも思える姿を見て、背筋が凍る。




 ───最初の姿と違う……!?


 頭をフル回転させながら状況を整理する。

 その時、昔聞いた話を思い出す。


(───オークジェネラルは魔法を使えない代わりにその魔力で戦鬼化へと至れる、か)


 普段は実力を隠しておくが戦闘中に真の強さを発揮する。


 ……賢いな。

 伊達にジェネラルやってなかったか……

 そりゃ将軍は単騎でも強いよな。

 だが。


 (……予想より早かったが、これを使うしかないか)




 ───俺も実力を隠してるんだよ!


 実は、昨日の夜、オークを倒し終わってからとある訓練をした。

 何をしてたか知ってるか?


 俺は……《《30もの魔法》》を覚えたんだ!!


「ウィンドブレード!!!」


 見えない空気の刃が気付かぬうちにジェネラルの腹を斬る。

 そしてそれは身体の深くまでつきささる。


 市川の得意技。これで速水が倒された技だ。頑張って覚えたが、所詮俺はE-ランク。

 全然鋭くない風の刃が、ブーメラン程度の速度で飛ぶだけ。

 レベル低下も甚だしいが、鋭利を速度を犠牲にしたことで、攻撃力が上がる。


 これを待っていた!


「ライトボルト!」


 針程度の雷がテラバレットの跡に奔る。


 一旦考えてみてくれ。

 所詮空気の刃だと思っただろ?だけど風の刃だ。どんなに刃がボロそうに見えても、ハサミ以上は余裕である。それが時速70kmで飛んで来るんだ。


 いくら戦鬼化しても、筋肉は筋肉。怪我しないはずがない。もちろん跡には血が流れている。


 ここで質問。血に電気って流れるか?答えは通す。塩分もあるし、鉄分も含まれているから通らないわけがない。もうわかったかい?



 ───オークジェネラルは全身を雷が駆け巡る激痛を味わっている。


「グォォォォ!!」


 オークジェネラルは怒り狂ったように咆哮する。そこに指揮官らしき今までの理性はなかった。


 これが戦鬼化に対するこの時間で考えた最適解だ。

 理性がなければその強さを活かせない。


 俺は逃げずに突進する。

 もちろんジェネラルもそれに呼応するように突進してくる。そして距離が5mを切った瞬間、


(やっぱり馬鹿は楽だな......)


 全速力を殺さず少し進路を変えてジェネラルの右横にスライディング。

 もちろん、こんな動きに怒りに支配された理性のないオークジェネラルはついてこれない。


 スライディングの勢いが止まる前に、ジェネラルの背後で()()()()で魔法を発する。


 目の前から消えて慌てるジェネラルだったが、そこでようやく背後にいるのだと気づく。

 ただ、───遅すぎる。


「エアブースト!!」


 これは俺が初日に使った魔法でもある。元々知っていた魔法だ。

 一瞬3m上空に上がれるという大したことはない魔法だが、使い方によっては効果はとてつもなく変わる。


 もし、───これをスライディングの最中に発するとどうなるか?


 答えは頭より上の位置に背面跳びの格好で着く、だ。三人称視点を想像するとダサいが、一人称視点じゃかなりアクロバティックだ。


 ただし、ここでナイフを刺したところで決定打にはなり得ない。人間とオークの身体の構造が似ているということから考えると、脳は頭蓋骨で守られているからとんでもなく硬い。

 それに、背面だ。ナイフを刺しにくすぎる。重要だからもう一度。背面だ。ほぼ無理ゲー。

 視界が通常と180度違うからな。


 だから、───


 空中で勢いをつけて身体を回転する。その時間で、ちょうど首辺りまで落ちる。


 ジャストタイミング!


 シュッ、ゴッ!


 ナイフで首を斬る。それも首の神経、血液まで噴き出る。

 ただじゃ済まない。鮮血が勢いよく吹き出し、ジェネラルは足に力が入らなくなって倒れる。


 そして俺はうつ伏せで地面に倒れる。

 さっきジェネラルに蹴られた場所も当たってかなり痛い。だが、今がトドメを入れるチャンス。


(これで終わりか……)


 手を前に出して、魔法を発する。


「サンダーショッ───」



 その瞬間。

 横から凄まじい衝撃を受け、十数メートル吹っ飛ばされる。

 草原に身体がぶつかって、その後に背中と肋骨から痛みという言葉では表せないほどの激痛が襲ってくる。

 かつて俺がいた場所を見ると、そこには信じられない奴がいた。


「は……?」




 ────油断。


 それは誰もが一度は経験する危険な瞬間。

 どれほど強い獣でも、獲物を仕留めた瞬間は無防備になる。

 ましてや王ですらない凡人なら——なおさらだ。

 俺の目の前には、




 役職持ちのハイオークが——4体いた。

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