表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生少女リリアの魔法の旅  作者: amya
2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/29

第28話 封印深層――揺れる光と、囁く深影


 影身を倒したあと――

広間の奥にあった巨大な扉が、低く震えるように開き始めた。

ゴ……ゴゴゴ……


白い光と黒い風が混じり合い、境界が溶けるようにゆらいでいる。

「リリア……行くの?」

「うん。ここまで来たら……行くしかないよね」


怖い。

でも、わたしの右手の紋は、さっきよりも強く脈打っていた。

(進めって……言ってる)

おばあさん、ユリオ、そして残った冒険者数名と共に、深い階層へと足を踏み入れた。


◆ ◆ ◆


扉の先は、完全にこの世界ではない場所だった。

空間がたわみ、白い石床は淡く光り、壁は影の霧とともにゆっくり呼吸しているように脈動している。

音はない。けれど、耳の奥で何かが“響いて”いる。

(ここ……封印された世界そのものみたい)


「ユリオ……気をつけて」

「うん。でも、リリアの手……震えてる」

「そ、そりゃ震えるよ! こんな場所、初めてだもん!」


 正直、泣きそうなほど怖い。

 でもユリオが笑ってくれた。その柔らかな笑みに、胸の奥がじわりと温かくなる。


◆ ◆ ◆


  歩くにつれ、空気が重く、黒くなっていく。

 影の霧が濃くなり、床の白い光もかすんでいく。

 右手の紋はまるで警鐘のように脈打ち、視界が淡く揺れた。


 ひゅううう……

 黒い風が、誰のものとも分からぬ声を乗せて流れる。

 ――ヒカリノ……ウツワ……

 ――モドレ……マタ……アエル……

(また……声……! どんどん近づいてる……)


「リリア、顔色悪いよ。大丈夫?」

「だいじょうぶ……じゃないけど、行く」

ユリオがそっと手を添え、支えてくれた。

「無理するな。僕が前に出るから」

「ううん……これは、わたしが進まなきゃ」


胸の奥で、確かな“呼び声”があった。

誰だか分からないけれど……どこか懐かしい声。


◆ ◆ ◆


やがて道が開け、広い空間に出た。

そこには大きな“裂け目”があった。

白い世界と、黒い世界。

真ん中に走る一本の深い亀裂。

そこから、絶えず“黒い風”が噴き出している。


「こ、これは……!」

「封印深層の“源流亀裂”じゃ……! 瘴気の源がここに……!」

おばあさんの声には震えがあった。

(ここが……影の源流の力が漏れ出してる場所……)


そのとき。

右手の紋が強く輝き、亀裂が反応するように脈動した。

「リリア……亀裂が反応してる!!」

「呼ばれてる……気がする」


怖い。

でも確かに――わたしは何かを思い出しかけている。


◆ ◆ ◆


突然、亀裂の奥から黒い霧がうねり上がった。

ズズズズズ……


「な、なんだ……!」

霧が渦を描き、やがて一つの影へと形を変えた。

さきほど倒した影身とは比べものにならない大きさ。

人型のようでもあり、四足獣のようでもあり、無数の触手を持つ深影。


「こ、これ……本当に倒せるの……?」

「……リリアの光以外、通らんじゃろうな」

「そんな……!」


深影が低く、重く、空間を震わす声を発した。

――ウツワ……ケイフ……カエレ……

――マタ……ヒカリト……トモニ……

(わたしを……戻そうとしてる?)


その瞬間、足が無意識に前へ出た。

ユリオが腕を掴んで止める。

「リリア! ダメだ! あれは……危ない!」

「でも……声が……!」

「声に飲まれないで!!」

ユリオの声に、意識が少し戻る。

(理性が……吸われる……!)


◆ ◆ ◆


深影が動いた。

ドッ!


地響きのような音とともに、影の腕が地面に突き刺さる。

黒い波が床を走り、影が足元へ迫る。

「下がれ!!」

「くっ!」

冒険者たちが魔法を放つが――

影に触れた瞬間、すべて黒に飲み込まれ消えた。


「ま、魔法が……効かない!?」

「影の源流のかけらじゃ……格が違う……!」

深影がうねりをあげ、触手のような影を何本も伸ばす。

「くるよ!!」

わたしは右手を掲げる。

(光……出て! わたしを、ユリオを、守って!)


紋が強く輝き、光の障壁が自動的に展開された。

バガァン!!


触手がぶつかり、激しい衝撃が走る。

光はきしみながらも耐えている。

「すごい……リリアが作った……!」

「このままじゃ、押し負けるよ……!」


◆ ◆ ◆


深影が影の塊を飲み込み、巨大な腕をさらに太くした。

 ――ウツワ……モドレ……ワレラノ……モトヘ……!


「う、うるさい!!」

わたしの叫びに反応するように、右手がさらに光を強めた。

(負けない……!)


光の矢を連続で撃つ。

深影の身体へ突き刺さるが、大したダメージにはならない。

「もっと……強い光じゃないと……!」

「リリア!」

ユリオが影をかいくぐって走り寄る。

彼の剣が深影の腕に当たると――

ジジッ!

「っ……!? 吸われて……っ!」

深影は、魔力を奪うように力を吸収していた。

「ユリオ!!」

右手が勝手に動いた。

「光よ!!」


眩い閃光がユリオを包み、深影の吸収を断ち切った。

ユリオが膝をつき、息を荒げながらも笑った。

「……ありがとう。リリアがいなきゃ……ほんとにやられてた」

(ユリオが……危なかった……)

胸の奥で何かが弾けた。


◆ ◆ ◆


「リリア! 胸の光が!!」

「えっ……!?」

見ると、右手の紋の中心から、光が“糸”のように溢れ出している。

(これは……前の影身を浄化したときの……)

光の糸がわたしの周囲に広がり、深影へ向かう。


――キエロ……!


深影の黒い体を光の糸が縛る。

影はうねり苦しむように吠えた。

(今……いける!!)


「ユリオ! 一緒に!」

「うん!!」

ユリオが剣を構え、

わたしは右手の光を集中させ、深影の胸元――影の核へ向けた。


「ここ……!」

「リリア、撃って!!」

「――光!!」

放たれた光が深影の核へ突き刺さる。

――パアアアアアアアン!!

深影が大きく崩れ、黒い霧となって吹き散った。

静寂が訪れた。


◆ ◆ ◆


「……はぁ……はぁ……っ……!」

わたしは膝をつき、肩で息をした。

ユリオが隣にしゃがみ、背中を支える。


「リリア……よくやった……!」

「ユリオも……ありがとう……ほんとに……」


深影は完全に消えたわけではない。

しかし、確実に“弱った”。

「今のは……ほんの一部じゃ……」

おばあさんが低く言った。

「本体は……この先に眠っとる」


わたしたちは前を見た。

深影が消えたその奥――

巨大な光と影が交差する扉が静かに揺れている。

右手の紋が、脈打つ。

(進む……! 次で……本当の答えに触れる)

わたしは震える手を握りしめ、ユリオと共に扉へ歩き出した。


「行こう……ユリオ」

「うん。どこまでも、一緒に行く」

光と影の狭間――

封印深層のさらに奥へ。

物語は、次の段階へと進む。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ