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第1話 お前たちはこの世界のモノではない……だから何をやってもいいんだ……

 この世界には、悪魔と呼ばれる存在がいる。世界の理から外れた、異物だ。


 そして、その悪魔を狩る者たちがいる。夜の狩人。悪魔と同じく、この世界に属してはいない傭兵たちだ。


 だから――俺たちは、何をやってもいい。

 人間相手には躊躇してしまうような残虐なことがいくらでもできる。


 その夜もまた、『狩り』は始まった。


 今回の目標は、無限再生を繰り返すという厄介な悪魔だった。つまり、通常の殺し方では意味をなさない。首をはねても、心臓を貫いても、傷口から黒い靄が立ち上り、瞬く間に元通りになってしまう。


 だからこそ、俺たちは徹底的にやる。再生の速度を、破壊の速度が上回るまで、ただひたすらに。


 肉を刻み、神経をズタズタに引き裂き、骨を砕く。首を斬り飛ばし、間髪入れずに水月へ膝を叩き込む。呻き声を上げる口にナイフを突き立て、ぐらついた体勢の股間を思い切り蹴り上げる。再生しかけた両の目を、親指で容赦なく潰した。


 敵の攻撃もまた、苛烈を極めていた。空間そのものを裂くような黒い矢が、無限に射出される。風切り音すら置き去りにするその一撃を、俺は身体をスライドさせ、ステップを刻みながらすり抜けていく。


 前へ、横へ、斜めへ、ジグザグに。敵の視界を欺き、死角へと滑り込む。


(跳べ)


 低く呟き、足場を蹴った。悪魔の頭上を飛び越え、空中で身を翻しながら、腰の鞘から愛用の日本刀を抜き放つ。闇に溶けるような静かな蒼光が、陽炎のように刀身を覆っていた。その青い残光が一閃、悪魔の首筋を薙ぐ。肉が裂ける鈍い感触。悪魔の動きが、ほんの一瞬だけ止まった。


「ははっ! 止まったな!」


 着地と同時に膝の裏へ回り込み、アキレス腱をナイフで断ち切る。よろめいた悪魔の首へ、青い闘気をさらに強くほとばしらせた刃を、もう一度叩き込んだ。


「何回でも、何度でもだ。お前が再生するたび、俺はまた殺してやるよ」


「あはっ、あはははは! 無限に狩れるじゃん!」


 闇の中から聞こえる相棒の甲高い笑い声が、やけに心地よく耳に響く。楽しい。ひたすらに楽しい。この世界の理不尽を、俺たちの理不尽で塗り潰す。それが――『夜の傭兵』という存在意義だった。


 しかし、永遠の夜はない。東の空が、じわりと死の色に染まり始める。


 タイムアップだ。悪魔は朝日には勝てない。その巨体が塵となって崩れ落ち、この世界から消えて、永遠の夜へと帰っていく。


 俺たちは、また夜を待つ。次の『狩り』のために。

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