第8話 計画は完璧!? ~暴走妹の誘惑作戦~
「でゅふふ……♡」
授業が終わった放課後の教室。
生徒たちはクラブ活動や帰宅の準備に忙しく立ち回る中、玲奈だけは一人、窓際の席でスマホを見つめながら不気味な笑みを浮かべていた。
画面には、送信済みのLINEメッセージ。
『お兄ちゃん♡ 今夜も一緒に寝よ?♡ 今度は玲奈の部屋で♡ ダメって言ったら、赤点答案拡散するからね~♡』
太ももをぱたぱたと叩きながら、玲奈は嬉々として独り言を呟く。
「ふふふ、今日は玲奈の部屋だから、お兄ちゃん逃げられないね♡ 美月が言ってた『間違い』……うふふ、玲奈も期待しちゃうな~♡」
昼休みの美月との会話は、玲奈にとって啓示のようなものだった。
「間違いが起きたら」という言葉が、彼女の脳内で奇妙な化学反応を起こしたのだ。
「そうだよね、美月の言う通り……健全な男子高校生のお兄ちゃんと密着して寝たら、『間違い』が起きてもおかしくないよね♡ でも昨日は何も起きなかった……ってことは! 玲奈がもっと積極的にならないといけないんだ!♡」
完全に美月の意図とは逆の方向に解釈した玲奈は、スマホを胸に抱きしめながら頬を赤らめた。
「よーし、今夜は作戦決行だよ! お兄ちゃんに『間違い』を起こしてもらうぞ~♡」
その時、背後から声がかかった。
「……玲奈、何企んでるの?」
美月が、疲れた表情で立っていた。
「あ、美月! ありがと! 玲奈、いいこと思いついたんだー♡」
「……え?」
「美月が言ってたこと、そうだなって思ったの!」
美月の顔に一瞬、希望の光が差す。まさか、自分の忠告が届いた? 玲奈が正気に戻った?
「そう! だから今夜は、玲奈の部屋にお兄ちゃん呼んで、『間違い』起きるように頑張るの!♡」
「は?」
「だって、美月が言ってたでしょ? お兄ちゃんは健全な男子高校生だから、玲奈みたいな美少女が誘惑したら間違いが起きるかもって! だったら積極的に誘惑しないとね♡」
美月の表情が見る見る崩れていく。
「……私の言葉が、そういう意味だと思ったの?」
「うん! でも、どうやって誘惑したらいいかな?」
玲奈は首を傾げ、真剣に考え込む様子。
「パジャマじゃダメかな……もっと薄い服とか……? それか、お兄ちゃんの好きなアニメのキャラのコスプレとか? どれがいいと思う?」
美月はもはや絶望的な表情で、天井を仰いだ。
「……玲奈、私が言いたかったのは、そういうことじゃ……」
「あ、もう時間だ! ごめん、美月! 今日は先に帰るね! アドバイスありがと~♡」
玲奈は美月の言葉を遮って、さっさと荷物をまとめると、風のように教室を飛び出していった。
後に残された美月は、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
「……これは、もうダメかもしれない……」
その夜、神崎家の二階。玲奈の部屋の前で、俺はLINEのメッセージを見返しながら、深いため息をついていた。
(くそっ……本気で脅してきやがった……答案写真、本当に拡散する気なのか?)
昨日の夜のことを思い出すだけで、顔が熱くなる。あの密着感、あの甘い香り、あの温もり……。そして何より、玲奈のあの満足げな寝顔。
「……しょうがない、行くか」
覚悟を決めて、俺は玲奈の部屋のドアをノックした。
「はーい♡ お兄ちゃん、待ってたよ♡」
中から聞こえる、妙にテンション高めな玲奈の声。なんか、いつもと違う雰囲気を感じるのは気のせいだろうか……。
「おい、玲奈。昨日の件はもう……」
ドアを開けた瞬間、言葉が喉に詰まった。
そこに立っていたのは、いつものパジャマ姿の玲奈ではなかった。
薄手のキャミソールに、ショートパンツ。肌の露出は決して多くないのだが、その肌が透けるような生地の薄さと、肌に密着するシルエットが、俺の目を釘付けにする。
ピンクのツインテールは、いつもより少しだけ緩めに結われ、柔らかな印象を与えていた。
「お兄ちゃん♡ 入って入って~♡」
玲奈は、妙に上機嫌で俺を部屋に招き入れる。
「お、お前……なんだよその格好は!?」
俺は慌てて視線を逸らした。これは、まずい。非常にまずい。心臓の鼓動が早まる。
「え? これ? 暑いから、薄手の服にしただけだよ? 何か問題ある?」
玲奈は、わざとらしく首を傾げて見せる。その目は、明らかに「効いてる?効いてる?」と言わんばかりの色を宿していた。
「い、いや、でも……」
俺は後ずさりながら、ドアノブに手をかけた。
「やっぱり今日はやめとくわ! お前、変だぞ! 俺、帰る!」
しかし、玲奈の動きは俺よりも素早かった。
「だー~め♡」
ドアを閉められ、同時に俺の腕を掴まれる。次の瞬間、昨夜と同じように合気道のような技で、あっという間にベッドへと連れて行かれてしまった。
「ちょ、おい! 玲奈!!」
俺は抵抗するが、どういうわけか、この小柄な妹の力を振りほどくことができない。
「お兄ちゃん、約束でしょ♡ 赤点答案、拡散されたくなかったら、おとなしく玲奈と寝るの♡」
ベッドに押し倒された俺の上に、玲奈が覆いかぶさるようにして身を乗り出してくる。
その顔は、いつものからかうような表情ではなく、どこか……期待に満ちたような、熱っぽい色を浮かべていた。
「あ、あのさ、玲奈……お前、ちょっと変じゃないか……?」
「ふふ、お兄ちゃん♡」
玲奈はゆっくりと顔を近づけてきて、耳元で囁く。
「そろそろ、『間違い』が起きても……いいんじゃない?」
「は? 間違い……?」
俺の頭に、大きな疑問符が浮かぶ。玲奈の言動が、いつも以上に意味不明だった。
「ほら、お兄ちゃん♡ 健全な男子高校生でしょ? 玲奈みたいな美少女が、こんな薄着で誘惑してきたら……ね?」
玲奈は、自分の服の肩紐をちょっといたずらっぽく指でつまんでみせる。
「どう? 間違い、起こしそう……?」
「間違いって何だよ!? お前、何言ってんだ!?」
俺は完全にパニックに陥っていた。これはあの玲奈なのか? いつもの小生意気な妹なのか?からかいの度が過ぎている!
「もう、お兄ちゃんったら、鈍感なんだから~♡」
玲奈は頬を膨らませると、さらに距離を詰めてくる。
「ほ、ほら、玲奈! 冗談はここまでにして……!」
俺は必死で玲奈を押しのけようとするが、それもうまくいかない。こんな小柄な妹に、なぜこんなに力で負けるのか? 訓練でもしてるのか?
「冗談じゃないよ♡ 玲奈、本気だもん♡ お兄ちゃんと、今ここで……♡」
玲奈の目がトロンとして、さらに顔が近づいてくる。その唇が、俺の顔に迫り……。
「ちょっと!!!! 何やってるのよ、あんたたち!!!!」
突然、怒声が部屋に響き渡った。
ガチャリ、とドアが勢いよく開かれ、そこに立っていたのは……。
「か、母さん!?」
そう、神崎家の母・神崎美奈子だった。両手を腰に当て、怒りに満ちた表情で立っている。
「ひぃっ!!」
玲奈は、まるで電気ショックを受けたかのように、俺から飛び退いた。
「いったいこれはどういうことなの!? 説明なさい!」
母の怒声に、部屋の温度が一気に氷点下まで下がったような感覚。
「あ、あの……これは……」
俺が言葉に詰まっていると、玲奈が小さな声で言った。
「……罰ゲーム、だよ?」
「罰ゲーム?」
「う、うん……お兄ちゃんがゲームで負けたから、罰ゲームで一緒に寝るって……」
母の視線が、俺と玲奈を交互に行き来する。その目には、深い疑念と呆れが混ざっていた。
「あなたたち……いい加減にしなさい! そんな馬鹿な罰ゲーム、許すわけないでしょう!」
「でも、お母さん! 玲奈とお兄ちゃんは……」
「いいえ、ダメ! 玲奈、あなたはもう高校生でしょう? 兄妹とはいえ、いい年した男女が同じベッドで寝るなんて、常識的におかしいわ!」
母はそう言うと、俺の腕を掴んだ。
「秀一、あなたは自分の部屋に戻りなさい。今すぐに!」
「は、はい!」
俺は言われるがまま、玲奈の部屋から逃げ出すように出ていった。
「そして玲奈、あなたとはゆっくり話をするからね」
「……はい」
しゅんとなる玲奈の姿を最後に見て、俺は部屋を後にした。
部屋のドアが閉まり、兄が追い出された後は、重苦しい沈黙だけが玲奈の部屋に満ちていた。
母・美奈子は、腕を組み、厳しい表情で立ったまま、前を見つめる。
一方、玲奈は小さく縮こまるように床に正座させられていた。
ピンクのツインテールさえ、気勢を削がれたように垂れ下がっているように見える。
「……」
「……」
しばらくの間、部屋には時計の秒針を刻む音だけが響いていた。
玲奈は、ちらりと母親の顔を見上げては、すぐに視線を伏せる。
この静寂が、叱責の嵐の前の静けさであることは、玲奈にも痛いほどわかっていた。
ついに、美奈子が口を開いた。その声は、冷静だが、明らかに怒りを抑えているものだった。
「さて、説明してもらおうかしら?」
「え、えっと……お母さん、これは……」
玲奈は、言い訳を探そうと必死に頭を巡らせる。しかし、思いつく言い訳はどれも苦しいものばかり。
美奈子は、そんな娘の様子をじっと見つめると、ふっと小さなため息をついた。
「どうせあの子は巻き込まれただけであんたが主犯なんでしょう?」
「!」
予想外の言葉に、玲奈は思わず顔を上げた。その表情には驚きと「見透かされていた」という動揺が浮かんでいた。
「お母さん……どうして……」
「あのね、玲奈。あんたのことは産まれた時から見てるんだよ? 性格だってお母さんが一番よく知ってる」
美奈子は、呆れたような、でも少し愛情の混じった表情で続けた。
「秀一があんな風に積極的に妹を誘うわけないじゃない。むしろいつも振り回されてる側なんだから」
「う……」
的確すぎる指摘に、玲奈は言葉に詰まる。
「で、どういうつもりだったの? 実際のところを正直に話しなさい」
美奈子の声は、これ以上嘘をつくと許さないという厳しさを帯びていた。
玲奈は、小さく唇を噛みながら、おずおずと口を開く。
「あの……確かに、玲奈がお兄ちゃんを無理やり誘ったけど……でも、これはちゃんと罰ゲームの結果で……! お兄ちゃんがゲームに負けたから、玲奈の言うことを聞く約束だったんだよ! だから……」
「言い訳しないの!」
美奈子の鋭い一喝が、玲奈の言葉を遮った。玲奈は、びくりと肩を震わせる。
「私が聞きたいのは、なぜあんな格好で、あんな態度であの子を誘惑しようとしたのか、ということよ」
美奈子は、玲奈の薄手の服装を一瞥し、厳しい視線を戻す。
「あの子はあんたの実の兄なのよ? 兄妹でそんなことをして、一体何をしようとしていたの?」
「……」
玲奈は俯き、小さな声で言った。
「だって……お兄ちゃんと……もっと近づきたかったから……」
美奈子は深いため息をついた。そして、これまでの厳しい表情から、少し柔らかな、心配そうな表情に変わる。
彼女は玲奈の隣に腰を下ろし、優しく、しかし諭すように言った。
「玲奈、あなたは昔から本当にお兄ちゃんが大好きなのは知ってたわ。小さい頃からいつも秀一の後をついて回って、『お兄ちゃん、お兄ちゃん』って。それは可愛らしくて、微笑ましかった」
美奈子は、遠い日の思い出を振り返るような目をしている。
「でも……大きくなったら、さすがに自然と離れていくと思ってたのよ。普通、思春期になれば、兄弟姉妹は少し距離を置くものでしょう? それなのに、あなたはどんどん……どんどん……」
言葉を選ぶように、美奈子は一度言葉を切った。
「あなたの兄への執着が、どんどん強くなっていってる気がするの。これじゃ……いい加減、お兄ちゃん離れしなさい。あなたにも、秀一にも、それが一番いいわ」
「………………」
玲奈は、黙って母の言葉を聞いていた。その表情は読み取りにくく、何を考えているのかわからない。
まつげに覆われた瞳が、わずかに揺れている。
そして、突然。
「お兄ちゃん離れ……?」
玲奈の声は、驚くほど静かで、冷静だった。しかし次の瞬間、彼女の目が大きく見開かれ、カッと何かが灯るように輝いた。
「お兄ちゃん離れ、ですって……?」
玲奈はゆっくりと顔を上げ、母を真っ直ぐに見つめた。
その表情には、これまでにない決意と情熱が浮かんでいた。
「そんなの、絶対にできないよ!」
玲奈は両手を強く床について、身を乗り出す。
「玲奈は、お兄ちゃんが大好きなの! 昔からずっと、これからもずっと! 一生お兄ちゃんから離れないからね!」
その宣言は、小さな体から発せられたとは思えないほど、力強く、揺るぎないものだった。
「玲奈……」
美奈子は、呆気にとられたように娘を見つめる。我が子のこの熱量に、一瞬言葉を失ったようだ。
「お兄ちゃんはね、玲奈のものなの! 玲奈だけの、特別な人なの! 他の女の子に取られるくらいなら、玲奈が守るんだから!」
玲奈は情熱的に語り続ける。まるで、長年胸に秘めていた想いが、一気に溢れ出したかのように。
「いつか玲奈は、お兄ちゃんのお嫁さんになるの! それが、玲奈の夢なんだから!」
興奮のあまり、頬を赤らめながら玲奈は恥じらいも忘れて続ける。
「だから、お母さん! お兄ちゃん離れなんて、絶対に、絶対にしないからね!」
美奈子は、そんな娘の熱弁を聞きながら、ゆっくりと手で顔を覆った。
そのジェスチャーには、諦めと、途方に暮れた感情が滲み出ていた。
(もうダメだ……この娘……)
心の中でそう嘆息しながら、美奈子は頭を抱える。玲奈のブラコン症状は、もはや手の施しようがないレベルにまで達していたのだ。
「玲奈……あなた、本当に……」
美奈子が言葉を続けようとした時、ふと壁の時計に目が留まった。
「あら……もう2時過ぎ?」
深夜2時を回っている。母親としての現実的な判断が、一瞬で彼女の頭の中を占めた。
「……はぁ」
美奈子は深いため息をついた。今この問題を徹底的に話し合っても、明日の学校に差し支える。
それに、この状態の玲奈と話し合っても、どこまで理解させられるか……。
「玲奈、今日はもう寝なさい」
美奈子は立ち上がりながら、疲れた声で言った。
「え?」
玲奈は首を傾げる。母の怒りがここで終わるとは思っていなかったらしい。
「もう遅いし、明日学校でしょう? それに……」
美奈子は少し言葉を選びながら続けた。
「お兄ちゃんのことは……まぁ、また今度ゆっくり話し合うわよ」
典型的な問題先送りだった。しかし今の美奈子には、娘のあまりにも直球すぎる兄への愛情表現にどう対応すればいいのか、正直途方に暮れていたのだ。
「本当? じゃああの、お兄ちゃんと一緒に寝るのも……?」
玲奈は、すかさず交渉のチャンスを見出そうとする。
「ダメ!」
美奈子は即座に拒絶した。それだけは絶対に譲れない一線だった。
「あなたたちはもう子供じゃないんだから。兄妹でも、一緒に寝るなんてダメなの。わかった?」
「うぅ……」
玲奈は不満そうに唇を尖らせるが、今夜はこれ以上反論しても無駄だと悟ったようだ。
「じゃあ、おやすみなさい」
美奈子は、玲奈の額に軽くキスをし、部屋を後にした。
ドアを閉めた後、廊下に立った美奈子は、再び深いため息をついた。
(あの子、どうしたらいいのかしら……。秀一も心配だわ……)
玲奈のブラコン症状は、思春期の一時的なものだと思っていたが、どうやらそうではないらしい。
むしろ年齢を重ねるごとに悪化しているようだ。
(主人に相談してみようかしら……いや、あの人に言っても『可愛い盛りだから』で終わりそう……)
途方に暮れた美奈子は、自分の寝室へと向かった。この問題は、明日ではなく、もっと先の課題となりそうだった。
一方、秀一の部屋では、別の種類の葛藤が繰り広げられていた。
「……ね、眠れねぇ……」
俺は、布団の中で何度目かの寝返りを打ちながら、小さく呟いた。時計は既に午前2時半を指している。明日の一時間目は数学だというのに、全然眠れない。
目を閉じれば、脳裏に浮かぶのは、あの光景。
薄手の服を着た玲奈が、俺の上に覆い被さってくる姿。
その柔らかな体温、甘い香り、そして、近づいてくる唇……。
「うわぁぁぁっ!!」
俺は布団の中で身をよじり、頭を振った。
「なんだよ、俺! 何考えてんだよ!」
俺は自分の頬を、パシンッと叩いた。痛みで現実に引き戻される感覚。
「玲奈は妹だ! 妹! バカ! 何考えてるんだ! 変なこと考えるな、俺!」
自分に言い聞かせるように、俺は何度もつぶやく。
(でも……あの格好の玲奈、可愛かったな……。いや、いつもの玲奈も可愛いけど、あんな風にセクシーな服装の玲奈も……。って、何考えてんだ俺は!!)
俺は再び自分の頬を叩く。今度はもう片方を。これで均等だ。バランスが取れた。
(母さんが来てくれて良かった……。あのまま二人きりだったら、俺……)
その先の想像は、危険すぎる。俺は布団を被り、完全に頭まで覆った。
真っ暗な布団の中で、なお赤くなる顔を隠すように。
「明日の朝、玲奈とどう顔合わせればいいんだよ……」
俺は絶望的な気持ちで呟いた。
きっと朝食の席は、極度に気まずいものになるだろう。
玲奈は何食わぬ顔で「おはようお兄ちゃん♡」とか言ってくるんだろうか。
それとも、昨夜のことで少しは反省してるんだろうか……。
「はぁ……」
俺のため息は、布団の中の温かい空気と共に漏れていく。
結局、俺はその夜、なかなか眠りにつけなかった。
時々まどろんでは目を覚まし、またまどろむ。
明日からの兄妹関係は、一体どうなるのか。
俺にも、そして恐らく母にもまだ答えは見つかっていなかった。
「いやだ……早く朝になれ……」
俺は布団を強く握りしめ、無理やり目を閉じた。
その夜の神崎家は、それぞれの部屋で、それぞれの思いを抱えたまま、静かに明けていくのだった。




