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第34話 ゲーム対決!逆襲の兄

玲奈は、早速ゲーム機の電源を入れ、慣れた手つきで「ストレートファイター6」を起動する。

タイトル画面の派手なロゴとBGMが、部屋に鳴り響く。


「ねえ、お兄ちゃん♡」


キャラクターセレクト画面を出しながら、玲奈が念を押すように言ってくる。


「わかってると思うけどぉ、負けた方は、勝った方の言うことを、1つだけ聞く。だよ? 後から『やだ』とか『聞いてない』とか、ごねたりしないでよねぇ♡」


その目は、完全に獲物を狙うハンターのようだ。


「……わかってるよ」


俺は、ごくりと唾を飲み込みながら、真剣な表情で頷いた。もう後には引けない。

勝つしかないのだ、兄の尊厳と、平和な暮らしを取り戻すために!


俺たちは、それぞれのコントローラーを手に取り、キャラクターを選択する。

俺が選んだのは、もちろんこの前玲奈にボコボコにされた雪辱を果たすべく、使い慣れたメインキャラ「豪雪鬼ごうせつき

白く逆立った髪に、紫色のボロボロな道着をまとった、見るからに強そうなキャラクターだ。

強力な飛び道具「覇王拳」と無敵の対空技「閃竜拳」そして一度捉えれば相手の体力を一気に奪う高火力のコンボが持ち味だが、反面、体力は全キャラ中でも最低クラス。

うまく立ち回らないと、一瞬で大ダメージを受けて負けてしまう、リスクの高い玄人向けのキャラだ。


一方、玲奈が選んだのは……やはり、この前の対戦と同じキャラクターだった。

「タカシ」黒いハチマキに、茶色い道着を身に着けた、いかにも主人公といった風貌の、スタンダードな性能を持つキャラクターだ。

飛び道具の「覇王拳」、対空技の「閃竜拳」、そして突進技の「ハリケーン旋風脚」と、必要な技が一通り揃っており、どんな相手とも戦えるバランスの良さが特徴だ。


(ふふん、どうやらキャラは変えてこなかったようだな……。だが、油断はできない。特訓したというあの動きは、明らかに上級者だった……!)


俺は、気を引き締めてコントローラーを握りしめる。


「いっくよー、お兄ちゃん♡ せいぜい頑張ってねぇ、ざこお兄ちゃん♡」

「うるさい!」


いざ、尋常に……勝負!


【ROUND 1、ファイッ!】


対戦開始のゴングが鳴る!

俺と玲奈は、ほぼ同時にバックジャンプで距離を取り、互いの出方を窺う。そして、牽制の応酬が始まった。


「覇王拳!」

「覇王拳!」


俺の豪雪鬼と、玲奈のタカシが、突き出した両手から青白い気弾を放つ! 画面中央で2つの「覇王拳」が激突し、バチッという音と共に相殺される。


「覇王拳! 覇王拳!」

「覇王拳! 覇王拳!」


互いに気弾を連発し、画面上を飛び交う覇王拳。しばらくは、互角の撃ち合いが続く。

しかし、俺は隙を見て、別のコマンドを入力。


「灼熱!」


豪雪鬼が、赤黒いオーラをまとった、より強力な覇王拳――「灼熱覇王拳」を放つ! これは、通常の覇王拳を貫通する性能を持っている!


「ふふん、どうだ!」


俺の灼熱覇王拳は、玲奈のタカシが放った通常の覇王拳を打ち消しながら、一直線に彼女へと迫る!


しかし!

パシンッ!

玲奈のタカシは、灼熱覇王拳が当たるまさにその直前、一瞬だけ前方に身構えるような動作を見せた。

すると、派手なエフェクトと共に、俺の灼熱覇王拳は跡形もなく消滅してしまったのだ!


「なっ!? パリィだと!?」


俺は驚愕した。「パリィ」それは、相手の攻撃がヒットする瞬間に、タイミング良くレバーを前に入れることで、攻撃を完全に無効化する高等テクニックだ!

しかも、打撃に対して成功すれば大きな有利フレームを得られるため、反撃のチャンスにも繋がる。

この前の対戦では使ってこなかったはずだが……!


俺が動揺している隙を見逃さず、玲奈は次の行動に移っていた。


「甘いよ、お兄ちゃん!」


俺が再び灼熱覇王拳を撃とうと構えた瞬間、玲奈のタカシはそれを読んでいたかのように高くジャンプ!

発射された弾を軽々とかわすと、そのまま空中から強烈なキックを俺の豪雪鬼に叩き込んできた!


「ぐあっ!」


ジャンプ大キックがヒットし、玲奈は流れるような連続攻撃を叩き込んでくる!

しゃがみ中パンチ、目押し立ち大パンチ、そしてキャンセルフロントステップから近距離大パンチキャンセル必殺技へと繋がるコンボ!

あっという間に、俺の体力ゲージが4分の1ほど消し飛んだ!


「うおっ! このコンボ痛てぇ……!」


俺は驚きの声を上げる。この前の対戦では見せなかった、新しいコンボだ!


「ふふふ♡」


玲奈は、コントローラーを握りながら、楽しそうに笑っている。


「この前の勝負で、玲奈様にボロ負けした時のこと、もう忘れちゃったのかなぁ?♡ やっぱり、お兄ちゃんはよわよわだねぇ♡ このまま一気に決めちゃおっかな♡」

口元に手を当て、クスクスと笑いながら挑発してくる。


(くそっ……! 油断した……!)


俺は、気持ちを切り替える。玲奈は、確実にこの前よりも強くなっている。もしくは手加減していた?だが、俺だって!


玲奈は、ダウンした俺の豪雪鬼が起き上がるタイミングを狙い、ガードしにくい中段攻撃を重ねてきた。いわゆる「起き攻め」だ。しかし!


「――その動き、読めてるぜ!」


俺は、玲奈の攻撃が当たる瞬間、冷静にレバーを前に入力! パリィ!

見事に玲奈の中段攻撃を捌ききった!


「なっ!?」


今度は玲奈が驚く番だ。パリィ成功による有利フレームを利用し、俺はここぞとばかりに反撃を開始する!


「喰らえぇぇぇっ!!」


豪雪鬼特有の、高火力コンボを叩き込む! 連続ヒットの派手なエフェクトと効果音!

玲奈のタカシの体力ゲージが、みるみるうちに減っていく!

コンボを叩き込み終えると、互いの体力ゲージはほぼ同じになっていた!


「……どうだ?」


俺は、コントローラーを握りしめ、ニヤリと笑って言った。


「あの頃の、お兄ちゃんだと思うなよ?」


「ま、まさか……お兄ちゃん……!」


玲奈は、信じられないといった表情で、俺の顔と画面を交互に見る。


「ああ、そうだ」


俺は、まるでバトル漫画の主人公のようなセリフを口にした。


「あれから……お前にコテンパンにされたあの日から……俺は、密かに猛特訓を積んできた! オンライン対戦で揉まれ、攻略サイトを読み漁り、トレーニングモードでコンボ練習を重ねた! 全ては……!」


「この日のために! 兄としての尊厳を取り戻すために!!」


「な……!」


玲奈は、俺の予想外の成長に、明らかに動揺していた。


(ま、まずい……!)


玲奈の心の中に、焦りが生まれる。


(お兄ちゃん、めちゃくちゃ強くなってる……! あの勝利に油断して、玲奈、このゲーム、あれから全然触ってなかったのに……! 絶対に勝てると思ってたのに、まさかの接戦!?)


対戦ゲームにおいて、焦りは最大の敵だ。

心の動揺は、プレイの精度を鈍らせ、判断を誤らせる。

一度傾き始めた天秤は、なかなか元には戻らない。


その後、試合は一進一退の攻防が続いた。俺も玲奈も、互いに持てる技術を駆使し、一歩も譲らない。

まさに死闘と呼ぶにふさわしい接戦だった。

しかし、最後は、わずかな焦りから動きが硬くなった玲奈の隙を、俺が見逃さなかった。


「これで、終わりだぁぁぁっ!!」

俺は、ゲージを全て消費する超必殺技、「天獄殺」を叩き込む!

画面が暗転し、派手な演出と共に、玲奈のタカシの体力ゲージがゼロになる!


「K.O.!」


画面に表示される「YOU WIN」の文字!


「いよっしゃぁああああああああああああ!!!!!!」


俺は、コントローラーを放り投げ、思わず立ち上がってガッツポーズを決めた!

勝った! ついに、玲奈に勝ったぞ! この前の雪辱を果たした! 本当に嬉しい!


一方、敗れた玲奈は……。


「う……うそ……。この玲奈様が……よわよわのお兄ちゃんに……負けたぁああああああああああ!!!!」


床に両手をつき、まるでこの世の終わりのような顔で、心底悔しがっていた。

罰ゲームで兄を翻弄する計画が、まさかの敗北によって崩れ去ったのだ。そのショックは大きいだろう。


俺は、勝ち誇った顔で、床に突っ伏す玲奈を見下ろした。そして、ふんぞり返って言ってやった。


「へっへっへ……玲奈よぉ」

「うぅ……」


「『負けたら罰ゲーム』って……ちゃんと、覚えてるよなぁ?」


俺は、ニヤリと、意地の悪い笑みを浮かべて言った。

さあ、どんな罰ゲームを要求してやろうか。この前の仕返しも兼ねて……。


すると、玲奈は目に涙を浮かべながら、ゆっくりと顔を上げた。


「……うぅ……わかってる、もん……」


そして、次の瞬間。

玲奈は、いきなり立ち上がると、履いていた部屋着のショートパンツのゴムに手をかけ……。


「!?」


俺が何事かと見ていると、玲奈は、何の躊躇もなく、そのズボンをずり下ろし始めたのだ!


「お、おい!? 何やって……」


俺が慌てて止めようとする間もなく、玲奈は、さらにその下に穿いていたパンツにまで手をかけ、ゆっくりと下ろし始めた!


「な、な、な、何やってんだこらぁああああああああああ!!!!!!」


俺は、顔を真っ赤にして絶叫し、玲奈が膝まで下ろしていたパンツを、思いっきり上に引っ張り上げた!


「いひゃっ!?」

パンツごと一瞬持ち上がった玲奈が変な声を上げる。

そして、構わずそのままズボンも無理やり穿かせる!


俺は、玲奈の両方のほっぺたを、むにーっと左右に引っ張った。


「いったい! 何をやってるんだ! 何を考えてるんだお前は!! そーいうとこだぞこらああああああ!!!!」


俺は、トマトのように真っ赤になった顔で、照れと怒りが混ざった感情のまま、玲奈を叱りつけた!


「ふぇ〜? ほひょふぉひょひは、めいひふぁふげーむっふぇ、ほーいうほほひゃふぁいふぉ〜??」

(訳:え〜? 男の人が命じる罰ゲームって、こーいう事じゃないの〜??)


玲奈は、頬をグリグリと引っ張られながら、わけのわからないことを言っている。


「お前は兄を何だと思ってるんだ!? そんなわけあるか、この大馬鹿妹!!」


俺は、玲奈のあまりにもトンデモない理論と行動に、心底ドン引きしながら叫んだ。


こうして、様々な陰謀(主に玲奈の)が渦巻いていた兄妹ゲーム対決は、兄である俺の正義の勝利によって、ひとまずの決着を見た。


勝者である秀一が、敗者である玲奈に命じる「罰ゲーム」

果たして、その内容とは、一体何なのか?


秀一は、まだ頬を引っ張られて涙目になっている玲奈を見下ろしながら、これから命じる「お仕置き」について思案を巡らせるのだった。

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