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第32話 アニメ鑑賞とお家デート計画

「いや〜、面白かったなぁ〜♡ ハッピーエンドって、やっぱり最高だよねぇ♡」


さっきまで兄妹間の恋愛と濡れ場シーンに度肝を抜かれていた俺をよそに、玲奈は満足げに伸びをしながら、屈託のない笑顔を浮かべている。

その反応に、俺はますます混乱し、そして自分の過剰な意識を恥じるしかなかった。


「……お、おう。そうだな」


俺は、まだ少し残る気まずさを誤魔化すように、曖昧に頷く。


「じゃあさ!」


玲奈は、テレビのリモコンを俺にぽいっと投げてよこした。


「次は、お兄ちゃんのオススメのやつ、見せてよ♡ さっきのアニメ、玲奈の趣味に付き合ってくれたんだから、今度はお兄ちゃんの番ね♡」


(お、助かった……!)


俺は内心で安堵のため息をついた。あの気まずい空気からようやく解放される。

しかも、自分の好きなアニメを見せるチャンスだ。


「おう、任せとけ!」


俺は、さっきまでの動揺を振り払うように、意気揚々とリモコンを受け取った。


「ちょうど今期始まったばかりで、めちゃくちゃ面白いロボットアニメがあるんだよ! 絶対玲奈もハマるって!」


俺が選んだのは、最近話題沸騰中の新作アニメ「機動戦士ガンダリア・ジークソード」

巨大な人型兵器、MSが活躍する、人気シリーズの最新作だ。

これなら、まず間違いなく変な空気になることはないだろう。

さっきのアニメの気まずさを払拭するには最適だし、何より、この神アニメの面白さを妹にも布教したいという気持ちが強かった。


俺が動画配信サイトで「ジークソード」を検索し、サムネイルを表示させると、玲奈が「あ!」と声を上げて画面を指さした。


「これ! 最近CMでよく見かけるやつだ! なんか、すごい剣持ってるロボットの!」


「そうそう! よく知ってるな。TV放送前に、劇場で先行上映なんかもやっててさ、それがまたすごい出来で……!」


俺は興奮気味に説明する。


「へぇー、なんかすごそうだね」


玲奈も少し興味を持ったようだ。


「本当はさ、このシリーズ、80年代にやってた最初のやつから観た方が、より深く楽しめるんだけど……まあ、いきなりそれは流石にキツいだろうしとりあえずこの最新作から観てみようぜ! 第一話からな!」


俺は、そう言って第一話の再生ボタンを押そうとした。


その時だった。


「よいしょっ」


という掛け声と共に玲奈が、俺があぐらをかいていた足の上に、すとん、と座ってきたのだ。


「!?」


俺の膝の上に、玲奈の小さな体がすっぽりと収まる形になる。

背中が俺の胸にぴったりとくっつき、玲奈の頭はちょうど俺の顎のあたりにある。


「あ、あの……玲奈さん……? なんで、俺の上に座るの……?」


俺は、突然の密着状態に戸惑い、思わず敬語になってしまう。


玲奈は、俺の胸に背中を預けたまま、えへへ、と楽しそうに笑った。


「だってさー、ここだとお兄ちゃんの背中がシートみたいで、なんだかコックピットに座ってるみたいじゃない?♡ ロボットアニメ観るなら、やっぱり臨場感って大事でしょ?♡」


悪びれる様子もなく、とんでもない言い訳をしてくる。


「いや、あのさぁ……」


俺は、動揺をなんとか押し殺し、努めて冷静な声で言い聞かせようと試みた。


「お前は、仮にももうJK(女子高生)なんだぞ? 兄とは言え男子高校生の膝の上に、こんな風に乗っかるのは……その、世間一般的に見て、ホントどうかと思うぞ?」


俺の心臓は、さっきのアニメのせいか、それともこの密着状態のせいか、ドクドクと嫌な音を立て始めている。


すると玲奈は、くるりと首だけをこちらに向け、俺の顔を下から覗き込んできた。その目は、からかうような光を宿している。


「え〜? 気にしすぎだよぉ、お兄ちゃん。たかが兄妹なんだから、このぐらい普通でしょ?」


そして、さらに意地の悪い笑みを浮かべて続けた。


「……っていうかぁ、もしかして、そんなに意識しちゃってるわけぇ?♡」

「なっ……!?」


「まさかお兄ちゃん……さっきのアニメみたいに、この可愛い妹のこと、ちょっと異性として意識しちゃってたりするのぉ〜?♡ だから、玲奈が足の上に座ると、ドキドキしちゃって、むらむら〜っとしちゃうとか?♡」


玲奈は、俺の耳元で、わざと甘えた声で囁くように言う。


「きゃー♡ ひょっとして玲奈、この後お兄ちゃんに襲われちゃうのかなぁ?♡ どうしよぉ〜♡」


くっ……! こいつ、俺がさっきのアニメで動揺していたことを見抜いて、そこを的確に突いてきやがる……! なんて悪魔的なんだ!


「ば、馬鹿言うんじゃないぞ!!」


俺は、顔を真っ赤にしながらも、なんとか虚勢を張る。ここで動揺を見せたら、それこそ玲奈の思う壺だ!


「い、いいぜ! 座りたきゃどんどん座れよ! か、可愛い妹が足の上に座るくらい、な、なんでもないに決まってるだろ!」


「だよねー♡」


俺の強がりを、玲奈はあっさりと受け流した。そして、満足そうににっこり笑うと、再び画面の方へと向き直った。


「じゃあ、再生するね~♡」


玲奈がリモコンの再生ボタンを押す。画面にアニメのオープニング映像が流れ始めた。

よし、これでようやく落ち着いてアニメに集中できる……そう思った、次の瞬間だった。


「あ、そうだ♡」


玲奈が、何かを思い出したように声を上げた。

そして、俺の腕を掴むと、それを自分の体の前にぐいっと持ってきたのだ。


「え? お、おい、玲奈?」


俺が戸惑っていると、玲奈は俺の両腕を、自分の細い腰の前で組ませるように固定した。

まるで、俺が玲奈を後ろから抱きしめているような格好だ。


「はい、じゃあ、更にコックピットっぽくするために、シートベルト、よろしくね♡」


玲奈は、悪戯っぽく笑いながら、俺の腕をぎゅっと握る。


(し、シートベルト!?)


必然的に、玲奈の背中と俺の胸は、先程よりもさらに強く密着することになる。

玲奈の頭が俺の顎にこつんと当たり、シャンプーの甘い香りが鼻腔をくすぐる。

背中に伝わる玲奈の体温と、驚くほど柔らかな体の感触……。


(う……わ……)


俺は、息を呑んだ。

いつもの生意気な妹。ガキ大将みたいな、平坦な体つきのただの妹。

そう思っていたはずなのに……。今、背中に感じるこの感触は……明らかに「女性」のものだ。

いつの間に、こんなに……。


俺が、妹の成長と、このあまりにも近すぎる距離感に内心激しく動揺している間、玲奈は、俺に見えないように再びニヤリと口角を吊り上げていた。


(ふふふ……♡ お兄ちゃんの心臓、さっきからすっごいドキドキしてるのが、背中に伝わってくる……♡ やっぱり、あのアニメ観せたのは効果てきめんだったみたい♡ 意識してる、意識してるぅ〜♡ うへへへへへへ♡)


玲奈は、自分の計画が順調に進んでいることを確信し、満足感に浸っていた。

兄が内心でどんな葛藤を抱えているかなど、全くお構いなしに。

むしろ、その動揺こそが、彼女の狙い通りなのだから。


画面の中では、「ジークソード」の熱いオープニング映像が流れている。

しかし、俺の意識は、もはやアニメの内容どころではなかった。

背中に感じる温もりと柔らかさ、そして甘い香りに、俺の理性は限界を迎えようとしていた。


(だ、ダメだ……! これは、まずい……!)


玲奈の「お兄ちゃん攻略♡デートプラン」は、着実に、そして確実に、兄の心を侵食し始めていた。


ーーーーーーーーーー

メインヒロインであり秀一の妹である神崎玲奈の設定イラストを近況ノートに描きましたので、本文をお楽しみいただくためにご覧いただけたら幸いです。

https://kakuyomu.jp/users/TamayanHRO/news/16818622173948400161

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