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うちの猫はしゃべりたがっている〜その後〜

作者: かずぺあ

うちには猫がいる。

妹が知り合いのおばちゃんからもらってきた猫だ。

うちに来たときはとても小さな子猫だった。


それから15年経ち、今ではお腹の皮膚がたるんで地面につきそうになっている、おばあちゃん猫だ。


15年の間に妹は結婚し、もうこの家にはいない。


やっとのことで就職をした弟は、一人暮らしを始めた。


最初はあまり関心が無い素振りをみせていた母は、今では猫を溺愛している。


定年退職をした父の膝の上に乗って眠りにつく猫。




俺は誰もいないところで猫に語りかける。




もうしゃべってもいいんだぞ?




今さらお前がしゃべっても家族は驚かないぞ?




妹に、結婚おめでとうって。




弟に、就職おめでとうって。




父に、定年お疲れさまって。




母に、いつも、ありがとうって。




全部お前がしゃべっていいんだぞ?




俺が言えなかったことを。




「それは君からいいなよ」



うちの猫はしゃべりたがっている。





うちには猫がいた。

20年間、無口でふてぶてしい態度の猫だった。



俺は誰もいないところで猫に語りかける。最後の最後まで。



そろそろほんとにしゃべっていいんだぞ?



俺とお前だけの秘密にしてやるから


妹と子供たちにも


弟とお嫁さんにも


毎日心配そうに見守っている父と母にも



誰にも言わないから



俺がちゃんと伝えるから、あの頃とはもう違うから


だから…最後に



「君はもう大丈夫」



うちの猫はしゃべりたがっている







俺は泣きじゃくっている



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