表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
204/205

204 断れないよね

 ――ハインリッヒの執務室。


 無言でお互いの顔を見る、二人。


 どうしても、2週間の間、諸々のことを任せたいハインリッヒ。

 何が何でも、引き受けたくないミハイル。


 空中戦が繰り広げられている最中であった。


「……やめましょう。見合っていても、しょうがありませんよ。どの道、断れないですよね? 分かりました! 謹んで、お受けします!」


 ミハイルは、いつも通りの笑顔になる。


「おお! それは、ありがたい! これで、安心して、王都ハリルを離れることができます!」


 一転、ハインリッヒも、笑顔になっていた。


(……お願いではあるけど、実質、強制だからね。ここで、ハインリッヒ殿との関係悪化はマズ過ぎるよ。僕だけならまだしも、話は、ミハルーグ帝国とアミーラ王国の関係性にまで、発展しそうだし……はぁ、何も起きないワケないよな~)


 笑顔の裏で、ミハイルはため息をついてしまう。


「それで、いつ出発されますか? フレイギンやら、反体制派やらの対処について確認したいです! それに、引き継ぎとかもお願いしたいのですが?」


 ミハイルは、高速で頭を回転させていた。


 ローマルク王国内の不穏分子。

 ハリル士官学校。

 部隊の展開状況。

 現状と今後の動向。


 知りたいことは、山のようにあった。


「もちろんです! 早速、始めましょうか! フレイギンやら反体制派ですが、これに関しては、一人一人、確実に潰していきましょう! ただ、普通に生活している国民への被害はナシの方向が良いですね! これ以上の国民感情の悪化は、問題ですから!」


 ハインリッヒは、理想的な条件を語る。


「となると、こちら側から反体制派に人員を潜りこませる他はないですかね? もしかして、もう、やられていますか?」


 大規模な検閲は、国民感情の悪化につながるだろう。

 手間はかかるが、内部情報を集め、虱潰しにしていく。

 確実な方法の一つであった。


 もちろん、画期的な方法も、他にはあるだろう。


「もちろん、やっています! ただ、フレイギンを始めとして、反体制派も、かなり警戒している! 中々、上手くいっていないのが現状です!」


(だろうな。エンバニア帝国がいる以上、簡単に潜りこませてはくれないか。となると、カレンとレナード殿に頼むのが良い気がする。正直言って、ミハルーグ帝国の諜報員より、優れていると思うし。というか、多分、もう動いているだろうな)


 ミハイルに驚きの表情はない。


「とは言っても、何個かの拠点は、確認しています! 取り急ぎ、強襲すれば、反体制派も動きづらくなるでしょう! すでに、部隊も動かしています! 本当は、もっと全容を解明してからにしたかったのですが、反撃をしないワケにもいきませんしね! こればかりは、しょうがない!」


 ハリル士官学校を襲撃され、しかも、無差別殺人まで起こされている。

 ここで、何もしないのは、有り得ない選択であった。


 ミハルーグ帝国の面子が完全に潰されてしまうからだ。

 それに、ローマルク王国の国民も、不信感を抱いてしまう。

 反体制派も、我々に屈したと盛んに喧伝するだろう。


 やりたくなくても、反撃するしか道はない。


「そうですか! なら、ある程度は、抑止力になるかとは思います! さて、その他にも、教えていただいてもよろしいでしょうか?」


「もちろんです! それでは……」


 そこから、ハインリッヒは、諸々の引き継ぎを行っていく。

 ミハイルはというと、いつも通りの笑顔ではあるが、必要事項を聞き出していた。






 ――次の日の朝。


 早速、ハリル士官学校の入校生削減が発表される。

 残ると希望した者以外は、家に帰ることが可能になった。

 もちろん、入校生の多くは歓迎の声を上げていた。


 入りたくて、入っているワケではないからである。


 加えて、連日の襲撃。

 命の危険がある場所にいたくはない。

 当たり前の感情である。


 負傷させられ、恐怖は極致に達していた。


 危険地帯から逃れられる。

 喜ばないワケがなかった。


 そして、歓喜の声を上げていたのは、入校生だけではなかった。


「これは、もしかすると、もしかするかもしれませんわ!! 思ったよりも、早く帰れるかもしれませんの!!」


 エレノアは、ムシャムシャしながら、喜んでいる。

 現在、アリアたち、補助教官は、食堂で朝食を食べていた。


 別に、まとまっていこうと示し合わせたワケではない。

 偶然、同じ時間になっただけある。

 近衛騎士団にいた際も、良くあることであった。


「まぁ、エレノアの言い分も一理ありますかね。物理的に、入校生が減りますから。それだけ、担当する教官もいらなくなるでしょう。全員は無理でしょうが、何人かは、帰れるかもしれませんね」


 ステラも、珍しく、エレノアに同意する。


「まぁ、エレノアは残りそうだけどな。なんとなく、そんな気はする」


 静かに食事をしながら、エドワードは、冷や水を浴びせた。

 学級委員長三人組は、黙って、食事を続けている。

 触れると、面倒になるのは明らかであった。


「ふざけるんじゃありませんわよ! そのときは、エドワードを推薦しますの! ワタクシたちの中で、一番雑魚なのだから、それくらいやってほしいですわ!」


 エレノアは、無茶苦茶な論理を展開する。

 もちろん、そこから、言い合いに発展していた。


(ほとんど寝れていないのに、元気だな、二人は。私には、そんな元気ないよ。とりあえず、早く寝たい……)


 アリアは、静かに食事をする。

 サラも、黙々と食事をしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ