表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
189/206

189 我慢できるかな?

昨日、投稿したと思っていたら、していませんでした。

まぁ、そういうこともありますよね。

 ――午後。


 バスクのおかげで、8組の教室は、若干、緩やかな空気が流れる。

 アリアは、自然と教壇から離れた。

 と同時に、バスクが、登壇する。


「8組の主任教官を務めるバスクだ! よろしく!」


 バスクは、気楽な様子で話し始めた。


「よろしくお願いします!」


 対して、8組の入校生は、アリアのときと同様、大きな声で返事をする。

 和やかは和やかな雰囲気だが、区別はついているようだ。


「お! 元気があるな! 俺にも分けてほしいくらいだ! とりあえず、自己紹介しておくか。出身は、ミハルーグ帝国の獅子軍団だ。さっき、正門で戦っていた奴らがいただろう? あいつらの中隊長をしている。まぁ、主任教官のほうが優先ではあるけどな」


 バスクは、凄く面倒そうな顔をする。


(ちょっと! 中隊長と主任教官の兼務が面倒だからって、そんな顔しないでくださいよ! 教官としての威厳がなくなってしまいますって! もう、本当に面倒くさがりだな!)


 アリアは思ったが、口には出さない。

 ついでに、表情にも。


 言ってしまえば、余計に面倒なことになりそうであったからだ。

 入校生たちはというと、少し戸惑っている。


 想像していた教官像とは、違うようだ。

 ただ、まだ、警戒しているのか、気楽に質問などはないようである。


「お前ら、警戒しすぎだ! 別に、怒ったりしないから、普通にしておけ! こっちの肩まで凝りそうだ! まぁ、とはいっても、無理か。軍隊生活が染みついていたら、そうなってしまうものな」


 バスクは、頭をポリポリとかいていた。

 入校生は、先ほど変わらず、堅いままである。


「まぁ、気楽にやっていこうぜ。とりあえず、俺からは、こんなものか。細かいことを言い出すとキリがないからな。アリア中尉。後は頼んだ」


 バスクはそう言うと、教壇から降り、近くにあったイスに座る。

 眠いのか、『ふわぁ~』と、普通にあくびをしていた。


(……なんだか、私も取り繕うのが面倒だから、普通にやるか。バスク少佐も、そのつもりみたいだし。私だけ無理しても、仕方がないか)


 アリアは返事をしつつ、そんなことを思う。

 もう、教官としてというよりは、普通の軍人としてやっていくつもりであった。


 そこから、アリアは、ハリル士官学校の生活について説明を始める。

 入校生たちはというと、必死になってメモをとっていた。


 変なミスをして、目をつけられるのは避けたい。


 それが、共通した思いである。


 説明が終わった後は、入校生が自己紹介をすることになった。


(まぁ、事前の書類通りか。それ以上の情報は、特になさそうだ。あ、でも、好きな食べ物とかは、覚えておいたほうが良いか。あと、名前と顔を一致させよう)


 アリアは、自己紹介を聞きつつ、入校生の顔と名前を覚える。

 バスクはというと、気になったことを、都度、質問をしていた。


 大体は、和ませるようなことばかりであるが。

 そのおかげか、入校生たちも、少しずつ、笑顔が増えていった。


 そんなこんなで、士官学校の生活についての説明も終わる。


「お前ら! 分かっているとは思うが、貴族の奴らと問題は起こすなよ! というか、何かあったら、すぐ教官室に来い! あと、明日までに学級委員長を決めておけ!」


 バスクはそれだけ言うと、8組の教室を出ていった。


「バスク少佐も言っていたと思いますけど、多分、貴族がケンカ売ってくる可能性は高いですから。そうなったら、すぐに教官室へ来てください。なんとかしますので。それでは、学級委員長決め、頑張ってください」


 アリアも、一応、注意しておく。

 入校生はというと、大きな声で返事をする。

 ただ、本当に分かっているかどうかは、分からなかった。






 ――教官室。


 アリアが席に座ったのを見計らって、バスクが話しかけてくる。


「アリア中尉。あいつら、貴族にケンカを売られて、我慢できると思うか?」


「多分、無理だと思いますよ。今日、パッと見た感じではありますけど、結構、やる気がある入校生が多かったので。戦場を知らない貴族とかに、馬鹿にされたら、キレてしまいますよ」


「だよな。はぁ……頼むから、自制してほしい限りだ。なぁ、アリア中尉?」


「心配なんですか?」


 アリアは書類書きをやめ、バスクのほうに顔を向ける。


「心配だな。貴族の奴らがな。多分、殴りかかっても、うちの組の奴らがボコボコにして終わりだろう? それはマズいよな」


 どうやら、相手のほうを心配しているようだ。


 戦場帰りの平民と戦場を知らない貴族。


 殴り合いの結果は明らかだ。


「まぁ、マズいですね。貴族の親が出てきたら、平民なんて、やられてしまいますよ。何か、話がこじれそうなときは、団長……副校長にお願いするしかありません」


「ミハイル少将か。結構、優しい感じがするが、そこらへんは厳しくないのか?」


 バスクは、よく分からないといった顔をする。


 貴族は、貴族の味方であった。


 それは、ローマルク王国だろうが、アミーラ王国であろうが変わらない認識である。


「多分、大丈夫だと思います。普通に、貴族、平民の関わりなく、話を聞いてくれるハズです」


 アリアは、自信をもって答えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ