表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
186/206

186 教官なだけはある

 ハリル士官学校の正門が見えてきたアリアたち。


「まぁまぁいますね。というか、本当に治安が悪いですね、王都ハリルは。こんなことを起こしても、すぐに兵士が飛んでこないなんて」


 ステラは、剣を抜き、戦闘態勢に入る。

 もちろん、アリアとステラの組の主任教官も、戦う準備をしていた。


「同時多発的に発生しているのかもしれません! そうでないと、兵士が飛んでこないのは、考えらませんよ! とりあえず、入校生を守らないと!」


 襲撃した者たちは、丸腰の入校生を狙っている。

 対して、入校生たちはというと、剣を持ち戦っている者、逃げ惑っている者、様々であった。

 悲鳴、怒号、鉄の打ちつける音などなど、状況は混沌としている。


 そんな中、笑い声が響き渡る。


「おーっほっほっほ! ハリル士官学校を襲撃するなんて、良い度胸していますわ! その程度の実力で、勝てると思いますの? 丸焦げにしてあげますわ!」


 赤髪が特徴的なエレノアは、炎の球を連発し始めた。


 結果、襲撃した者の一人が、反応できず、燃えてしまう。

 壮絶な叫び声とともに、地面を転がっていた。

 だが、その隙を見逃すような者は、教官にはいない。


 すぐに、剣でトドメを刺されていた。


 アリアたちも、負けじと、入校生に襲いかかる者たちを倒していく。


「それにしても、この人たちは、どこから湧いて出てきたんですかね? 襲撃するにしても、もっと、人数がいりそうな気がしますけど?」


「さぁ? 捕まえて、尋問しないことには分かりませんよ。ただ、入校生の中には、ケガしてる者もいそうですね。そこらへんが狙いなのでは?」


 アリアとステラは、襲撃者を倒しつつ、推測する。

 周りでは、続々と教官が集まり、戦闘を始めていた。


 相手は、よくて一般兵ぐらいの実力である。

 教官を務めるほどの実力者にとっては、大した相手ではなかった。

 ほぼ一方的に倒されていく。


 そんな中、白い長髪をまとめた人物が現れる。


「君たち! 何人かは、捕まえておいてよ! そうじゃないと、背後関係とか分からないからさ! あと、暇な教官は、ケガした入校生の手当てをして!」


 ミハイルは、いつも通りの笑顔で指示を飛ばしていく。

 その声に反応したのか、襲撃者の何人かが、ミハイルのもとに向かう。


「え? 僕を狙うの? 目的は、入校生じゃないのかな? まぁ、あとで調べれば良いか」


 焦った様子は、一切ない。

 向かってきた襲撃者の剣を避けると、蹴りで腕を折っていた。

 どうやら、剣を使うまでもないようだ。


(……相変わらず、団長はおかしい。まぁ、私でも余裕を持って相手できるくらいだからな。団長からしてみれば、剣を抜く必要もないということか。というか、他の組の主任教官って、やっぱり、強いんだ。まぁ、そうでもないと、教官は務められないか。近衛騎士と互角か、それ以上の人もチラホラいるな)


 アリアは、襲撃者の相手をしつつ、周囲の状況を見ていた。


 ある主任教官は、槍を使うようだ。

 剣での斬りかかりを受ける前に、心臓を一突きにしている。


 ステラの組の主任教官はというと、双剣を使っていた。

 半身で攻撃を避けると、二人同時にトドメを刺す。


 いずれも、かなりの実力者であるのは間違いないようだ。


 そんなこんなで、アリアたちが戦闘を開始してから、数分後。

 40人ほどのまとまった集団が、正門に集まってくる。


 ほとんどの者は、巨大なランスと大盾を持っていた。

 ただ、全員共通して、鎧はつけていないようだ。


「お。アリア中尉。頑張っているみたいだな。感心、感心。もう、これなら、俺たちの出番はないか」


「バスク少佐!」


 アリアは、大きな声を上げる。

 対して、バスクは凄く面倒そうな顔であった。


 できるなら戦いたくない。


 そんな態度がありありと見えた。


「アリア中尉。俺は、帰るから、あとはよろしく」


「いや、何を言っているんですか! 副校長もいるので、ちゃんとやらないと、マズいですよ!」


 アリアは、大きな声で中尉をする。

 対して、バスクはというと、『はぁ……面倒だな。とはいえ、ハインリッヒ上級大将に、サボっていたと報告されたマズいか。ちゃんとやるしかないな』などと、つぶやいていた。


 本人的には、小さい声で言ったのだろうが、アリアにはバッチリ聞こえている。


(これは、あれだな。私がしっかりしないとダメだ。どうやら、バスク少佐の面倒くさがりは、私の想像を超えているみたいだ。とはいえ、獅子軍団で中隊長をやっていたみたいだし、戦闘は折り紙つきか)


 アリアは、ひそかに心の中で思ってしまう。


「よし! お前ら! あいつらを捕まえてこい! 殺すなよ! 副校長も言っている通り、なるべく、生かして捕まえろ!」


 先ほどとはうって変わり、バスクは指揮官に相応しい声を出す。

 と同時に、率いていた兵士たちが、大盾を持って、突進していく。

 どうやら、ランスはあまり使わないようである。


 馬上でなくても、獅子軍団の集団突撃はそれだけで、迫力があるものであった。


(うわ! 筋骨隆々な人たちが、集団で突っこんでいる! あれにぶつかられたら、ひとたまりもない!)


 アリアは、邪魔をしないよう、負傷した入校生を運ぶことにする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ