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181 歓迎されていない

 王都ハリルに繰り出していた、ミハイル一行。

 夕食を食べるため、お店に入るが、どうやら食べられそうにはなかった。


「……ここは撤退したほうが良さそうだね。お店を出ようか」


 ミハイルは、笑顔である。

 ただ、いつもと違って、少し残念そうな声色であった。


 その声に従い、ミハイル一行は、お店を出ていく。

 罵詈雑言が飛んでくるワケではないが、冷ややかな視線を感じていた。


「もう! 何ですの、あのお店! ただ、食事をとりにきただけなのに! 意味が分かりませんの! もう二度と行きませんわ!」


 エレノアは、普通に憤慨していた。

 現在、ミハイル一行は、王都ハリルの通りを歩いている。


「エレノア! 怒っても、しょうがないよ! 王都ハリルの人たちから見れば、僕たちは外国人だからね! 我が物顔でお店に来たら、気に食わない人もいるのでしょう! でも、困ったな! 私服もないし、どうしよう?」


 ミハイルは、いつも通りの笑顔に戻っていた。

 あまり引きずってはいないようだ。


(私服がないと、やっぱり困るな。外国だと、勝手が違う。というか、気にしないようにしていたけど、私たち、目立ちまくりだよ。良い意味じゃなくて、悪い意味で。さっきからチラチラ見られて、鬱陶しいよ)


 アリアは、それとなく周囲を確認する。

 

 別にケンカを売ってくるワケではない。

 ただ、遠巻きに見られているだけである。


 どうやら、あまり歓迎している雰囲気ではないようだ。


「私服があれば、軍人だと分からなくて良いですね。カレン、潜入用の服とか持ってきていないんですか?」


 ステラは、解決策を求める。

 このままだと、埒が明かないと感じていたようだ。


「あると言えば、ありますよ。取ってくるので、皆様は、先にハリル士官学校に戻っていてください」


 カレンはそう言うと、次の瞬間には姿を消していた。


(あるんだ、私服。まぁ、軍服姿だと、買い物をするのも一苦労だから、あるに越したことはないけど。とりあえず、ハリル士官学校に戻って待つか)


 遠巻きの視線を感じながら、アリアは空を見上げる。






 ――1時間後。


 カレンは、秒速で帰ってきてくれた。

 なにか見覚えのある衣服とともに。


 現在、アリアたちは、エドワードの部屋に集合している。

 なぜかは分からないが。

 流れで、集まることになっていた。


「……カレン。これって、もしかして……」


 ミハイルは、笑顔である。

 ただ、凄く何か言いたそうであった。


「これ、もしかして、トランタ山に潜入したときに着ていたものではないですか?」


 ステラは、カレンの持ってきた服を手に広げる。

 お世辞にもキレイとは言えないが、着る分には問題なさそうであった。


「そうですね。服には違いないので、別に良いかと思いまして」


 カレンは、当たり前といった感じである。


(……どこから持ってきたんだ、この服。また、着ることになるとは……つらかった日々を思い出すな……)


 アリアは、当時のことを思い浮かべる。

 

 悪辣な罠が張り巡らされている森。

 鉱山での採掘労働。

 エンバニア帝国の士官との出会い。

 寂れてしまった宿場街。


 様々な思いがこみあげてきていた。


 ロウソクに照らされた部屋で、皆、感慨にふけっている。

 そんな中、エレノアが声を上げる。


「とりあえず、着られれば、この際、何でも良いですの! さっさと着替えてきますわ!」


 それだけ言うと、エドワードの部屋を出ていった。


「私も、別にこれで良いですかね。服には変わりないので」


「なんだか、色々と言いたいことはありますけど、これで良いですの。早く食事にしたいですわ」


 ステラとサラも、部屋を出ていく。


(まぁ、背に腹は代えられないか……エレノアさんではないけど、この際、着られれば良いよ。そんなことよりも、早くお腹に食べ物を入れないと死ぬ)


 アリアも、二人の後を追う。

 後ろからは、『……これ、着るのか。普通に嫌なんだけど……』という声が聞こくる。

 どうやら、ミハイル的には、カレンの持ってきた服を着るのは、感性が許さないらしい。


「嫌なら着なくても大丈夫ですよ。どうにかして、自分で調達してきてください」


「はぁ……しょうがないか。もう、探すのも面倒だしね。とはいえ、美麗な僕が、この服を着ることになるとは思わなかったよ。まぁ、それでも、僕の輝きを隠せるとは思わないけどね!」


「どうでも良いので、早くしてくれませんか。私は、外で待っているので」


 エドワードの部屋からは、そんな声が聞こえてきていた。


 10分後。

 宿舎の外に、アリアたちは集まっていた。

 見た目は、完全に鉱山で働いてそうな感じである。


「そういえば、私たち以外の教官も、この宿舎にいるんですよね? それにしては、一回もすれ違いませんでしたね」


 ステラは、思いついたかのように言葉を発した。


「うん、それは当然だよ! 他の教官は、別に住居を用意してもらっているからね! 君たちは、ハリル士官学校の入校生が使っていた建物を使っているというワケ! 本当は一人一人探してあげようかと思ったけど、面倒だからやめたんだよ! それに、皆で集まっていたほうが良いでしょう?」


 ミハイルは、笑顔で答える。


(まぁ、そこらへんは、正直、どうでも良いかな。ちゃんとした部屋だったら、どこでも良いよ)


 アリアは、興味がなさそうに、ミハイルの言葉を聞いていた。

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