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173 馬でも、さすがに厳しい

「ステラさん! 私は、エドワードさんを何とかするので、エレノアさんをお願いします!」


 アリアは、包囲に突っこんでいく。

 現在、エドワードとエレノアは、周囲を敵に囲まれてしまっている。

 馬を奪っても、逃げ出すのは難しそうであった。


「え? エレノアですか? 普通に嫌なんですけど?」


 対して、アリアの近くにいたステラは拒否する。


「そんなこと言っている場合ではありませんの! ステラ、行きますわよ!」


 ステラと並走していたサラは、エレノアのいる方向に馬を走らせた。

 渋い顔をしたステラはというと、サラの後ろをついていく。


「エドワードさん! 大丈夫ですか!?」


 アリアは、一足先にエドワードのもとに到着する。


「アリアか! 助かった! さすがに、この状況で馬を奪うのは無理だ! 乗せてくれ!」


 現在進行形で、エドワードは、騎馬兵の槍攻撃をさばいている。

 しかも、一体ではなく、何体も、であった。


 どう見ても、馬を奪うのは難しそうだ。

 そんな隙が一切なかったからである。


「分かりました! 乗ってください!」


 アリアは、敵の騎馬兵を強引に排除し、エドワードに手を伸ばす。

 その手を、待っていましたとばかりに、つかむ。


「ありがとう、アリア! 本当に死ぬかと思った! まさに、救いの女神だ!」


 エドワードは、いつもにも増して、嬉しそうな顔を見せる。


「そんなことを言っている場合ですか!? 向かってくる敵を、なんとかしてください!」


 アリアは、群がる敵をさばきつつ、大声を出す。


 エドワードとアリア。

 二人が乗ったことで、馬の速度が落ちてしまっている。

 当然、敵の騎馬兵が見逃すワケはなかった。


 アリア一人でいたときより、集中攻撃をされている。


「分かった! 馬を動かすのは頼んだぞ!」


 エドワードはそう言うなり、騎馬兵の攻撃をさばき始めた。

 さすがに、近衛騎士である。

 いくらアリアたちの中でも、弱い方とはいえ、一般の兵士に後れをとることはなかった。


 群がってくる敵を、バサバサ倒しまくっている。


(とりあえず、エドワードさんを助けることができて良かった。逃げ切れるかは分からないけど、最善を尽くすだけだ。そういえば、エレノアさんは大丈夫だったのかな? 確認しておくか)


 馬を走らせながら、アリアは、キョロキョロとした。

 目的の人物はというと、すぐに見つかる。


「エレノア! ちゃんと、馬につかまってください! このまま、行くので!」


 アリアの近くにきたステラは、大きな声を出す。


「ふざけるんじゃありませんわよ! 早く手を貸してほしいですの! このままの体勢だと、落馬しますわ!」


 対して、エレノアも負けじと大声を上げる。

 それも当然であった。


 エレノアは、なんとか、馬の脇腹につかまっている状態だ。

 もう、いつ落ちてもおかしくはない。


 だが、ステラは、エレノアを引き上げようとはしなかった。


「ステラ! さすがに、落ちますわよ! 引き上げたほうが良いですの!」


 当然、ステラの近くにきたサラは、指摘をする。


「いや、剣を振るのに邪魔なので、このままで良いですよ。それに、エレノアだったら大丈夫です。こんなことで死ぬなら、とっくの昔に死んでいるので」


「何ですの、その信頼は!? 良いから、早く馬に、ちゃんと乗せますの!」


 サラは、思わずツッコミをしてしまう。

 ステラはというと、『はぁ……邪魔だから、嫌なんですよ』などと言った後、手を伸ばす。

 エレノアは、伸ばされた手を、すぐにつかむ。


「もう、頭おかしいんじゃありませんの!? 普通、あの状態で馬を走らせませんわよ! あそこで、落馬していたら、化けて出ているところでしたの!」


「助けてあげたのに、随分な言いようですね。お礼も言えないんですか? レッド家の令嬢として、恥ずかしいですよ」


「キー! 本当に腹が立ちますわ! この怒り、どこにぶつければ良いんですの!?」


 プリプリ怒り出したエレノアは、顔を前に向けたまま、敵の騎馬兵に向かって、剣を振るう。

 狙われた騎馬兵はというと、完全に動きが遅れてしまっている。

 まさか、前を向いたまま、剣を振るってくるとは思っていなかったようだ。


 横なぎの剣は、そのまま、胴体を斬りつけ、通り過ぎてしまった。


「エレノア! 私は、馬を動かすのに集中するので、敵は頼みましたよ! 少しでも危なくなったら、馬から振り落とします!」


 ステラはそう言うなり、前を向いてしまう。


「言われなくても、分かっていますわよ! そっちこそ、ちゃんと馬を走らせますの! そうでないと、逃げきれませんわ!」


 エレノアはというと、群がる敵に向かって、炎の球を連発している。

 かなり距離が近いため、避けることはできないようだ。


 火がついてしまった馬は、暴れ回り、他の馬を巻きこんでいる。

 そんな中、陽気な声が聞こえてきた。


「君たち! ちゃんと、ついてきてよ! 後ろを向いたら、ついてきていないんだもん! 死んだかと思ったよ!」


 ミハイルは、凄まじい速さで剣を振っている。

 その勢いに、敵の騎馬兵たちは、完全に気圧されてしまっていた。

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