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160 もう昇進

 結局、近衛騎士団にブルーノがいる事実は変わりようがなかった。

 ステラとサラが騒いだところで、どうすることもできない。

 それほど、権力があるワケではないからだ。


 なので、朝食を食べ終わった後、大人しく部屋に戻り始める。

 その道すがら、アリアたちは、いつも通り、談笑をしていた。


「それにしても、ブルーノさんがいたのはビックリです。というか、女の子はやっぱり入ってこないんですね」


 アリアは、少し残念そうな顔をする。


 そもそも、軍隊に入りたいという女性が少ない。

 輪にかけて、厳しいとウワサされる近衛騎士団に、入ろうという女性はいないのが現状である。

 男性でも、入りたがらないのに、女性はなおのことであった。


「当たり前ですの。ワタクシたちが、珍しいだけですわ。近衛騎士団でも、女性は少ないですわよ」


 ブルーノはどうにもならないので、サラは切り替えていた。


「どうしても筋力は、男性のほうがありますからね。しょうがありません。ただ、カレンとか、たまにおかしい力を持った人がいるのも事実。そういった人は、近衛騎士団にいても遜色はないでしょう」


 ステラは、冷静に分析をする。

 とはいえ、ステラ自身も、普通の女性を凌駕する腕力の持ち主ではあった。


「バール大尉のお姉さんも、凄い力ですよね。大剣で、鎧ごと真っ二つですから。普段から鍛えているんですかね?」


「絶対、鍛えていますわよ。下手したら、そこらへんの男性より、腕が太いかもしれませんの。やっぱり、淑女たるもの、筋肉ムキムキは嫌ですわ」


 サラは、自分の二の腕を見る。

 贅肉はないが、心なしか太くなっている気がした。

 というか、明らかに一回り大きくなっている。


「軍隊にいるんですから、しょうがないですよ。それに、サラさんは、結構、力押しが得意ではないですか? なら、筋力があったほうが良いでしょう」


「それはそうですけど、やっぱり、ワタクシも女性ですの。ステラみたいに、細い腕で力が出せるようになりたいですわ」


 サラは、ステラの腕に注目していた。

 細い腕に、羨ましそうな視線が刺さる。


「こればかりは、体質もあると思います。サラさんは、筋肉がつきやすい体質なんですよ。それはそれで、良いことだと思います」


「私なんて、鍛えても、全然、力が増した感覚がないですよ。腕が太くなっても良いので、サラさんくらいの力がほしいです。そうすれば、戦術の幅も増えますし」


 今度は、サラの腕が注目される。

 視線の主は、羨ましそうな顔をしたアリアであった。


「そうですの? でも、鍛え続けたら、いつかバール大尉のお姉さんみたいになってしまうかもしれませんの! それは、嫌ですわ!」


 サラは、声を大にして宣言をする。

 ここで、まさかの登場人物が現れた。

 高身長、高筋肉の女性である。


 サラの前方に大きな影が生まれていた。


「へ? いきなり暗くなりましたの」


 サラは後ろを振り返る。

 そこには、バール大尉の姉を始めとして、先輩方三人組がいた。

 しかも、なぜか、笑顔である。


(あ……サラさん、終わったな。というか、なぜか、私たちも見られている。なんでだろう? 何も言っていないハズだけど……)


 アリアは、悪い予感がしてしまう。






 ――2時間後


 アリア、サラ、ステラの姿は、近衛騎士団の団長室にあった。

 他にも、エレノア、エドワード、学級委員長三人組を始めとして、バール、フェイもいる。

 そんな面々を前にして、ミハイルがイスに座っていた。


「何かあったの? もしかして、ケンカでもした?」


 軍服はキレイである。

 ただ、アリア、サラ、ステラの頭には大きなたんこぶができている。

 当然、ミハイルは見逃さない。


「ちょっと、こけてしまいました」


 ステラは、いつも通りの顔で返答をする。


「三人一緒に? それはないと思うんだけど?」


 笑顔のミハイルは、速攻で矛盾に気づく。

 そこに、フェイの解説が入る。

 

 バール大尉の姉に、げんこつをされたことを話す。


「ふ~ん。まぁ、陰口はいけないよね! 三人とも気を付けるように!」


 ミハイルは、話題にあまりふれず、注意だけをする。

 どうやら、深掘りしないほうが良いと考えたようだ。


「さて、それじゃ、新しい軍服を渡していくね!」


 ミハイルは切り替えると、机から立ち上がる。

 と同時に、軍服の束を持った、副団長も動く。


「昇進おめでとう! まぁ、これからも色々と大変だと思うけど、頑張ってよ!」


 副団長が持っていた軍服を確認し、エドワードに手渡す。


「ありがとうございます!」


 大きな声で返事をした後、満面の笑みで受け取る。

 どうやら、中尉になれたのが、嬉しいようであった。

 そこから、一人一人、短い言葉とともに、軍服が渡されていく。


(もう中尉か。なんだか、あっという間だったな。結構、戦ってきたし、それなりに経験はしてきたのかな? とはいえ、中隊長とかと比べたら、まだまだの気がする。中尉になったら、仕事も増えるだろうし、頑張らないと)


 アリアは、手に持った軍服を見ている。

 真新しいそれには、中尉の階級章がついていた。

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