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159 事情

04ー07時更新における、

注目度ー連載中のランキングで88位になっていました!


読んで下さって、ありがとうございます!

「まったく、お前たちは朝から何を騒いでいる! 食事も静かにできないのか!」


 おかっぱ頭の女性こと、フェイはげんこつをしていく。

 ゴッゴッと短い音が鳴るたびに、『イタッ!』、『そんな理不尽な!』などと声が聞こえてくる。

 なぜか、何もしていないブルーノも殴られていた。


 食堂にいた他の近衛騎士はというと、別に気にしていないようである。

 何も起きていないかのように、食事を続けていた。


「それで、騒いでいた理由は何だ!?」


 一通り、全員をげんこつし終わった後、フェイはイスに座る。

 アリアたちも、それにならい、静かに着席をしていた。


「いえ、別に大したことではありません。中隊長は、お気になさらず、食事を楽しんでください。私たちも、そうするので」


 ステラは、いつも通りの顔で答える。


「いや、答えになっていないぞ! どうせ、あれだろ? ブルーノが近衛騎士団にいるから、それで騒いでいたんだろう? まったく、いざこざがあったのは、昔の話! いつまでも引きずるな! なぁ、ブルーノ?」


 フェイは、ブルーノのほうに顔を向ける。

 対して、本人はというと、堅い表情のまま、動かなくなってしまう。


「……フェイ大尉。さすがに、答えづらいと思いますよ。どう答えても、敵が生まれてしまいます……」


 事態を見かねたエドワードが、助け舟を出す。


「あ。まだ大尉か。団長に任命されてから、少佐か。まぁ、それは良い。たしかに、ブルーノの状況を考えたら、答えに窮するか! アッハッハッハ!」


 フェイは、何事もなかったのように笑う。


(今日付けで、中隊長も少佐か。試験は、無事に通ったみたいだ。最近、機嫌が良かったのも、そのおかげだろう。やっぱり、少佐に上がるための試験って、面倒なのかな? まぁ、私にとっては、まだまだ先の話だし、考えるのはやめておくか)


 アリアは、モグモグしながら、ブルーノの様子を確認する。

 まるで借りてきた猫のようであった。


(……恐いだろうな、ブルーノさん。別に私は気にしていないけど、ステラさんとサラさんは、違うだろうし。とはいえ、ブルーノさんって、近衛騎士団に入れるくらいの実力はあるんだ。この前は、遭難してたし、逃げ回っていたから、勝手に弱いと思っていた)


 近衛騎士団に入るのは、言うまでもなく難しい。

 レイル士官学校でそれなりの成績をとらなければいけないのは、当然である。

 加えて、個人で戦える強さも必要だからだ。


 弱い士官には、誰もついてこない。

 それが、近衛騎士団の文化であった。


「中隊長、質問をしてもよろしいでしょうか?」


 ステラは食事をやめ、口を開く。


「何だ? 言ってみろ?」


「私の記憶だと、ブルーノは大して強くなかったハズですが? しかも、遭難していましたし。どう考えても、近衛騎士団には入れないと思うんですけど」


「まぁ、それにはワケがあるんだよ」


 フェイはそう言うと、食事を一旦やめる。

 一同も興味があるのか、フェイに視線を集中させた。


「最近、内乱があっただろう? 普通なら、教育をしている場合ではない。それでも、レイル士官学校は、通常通り、動いていたワケ。それで、そこにいるブルーノは、卒業試験の優勝者なんだよな。つまり、今の代で一番マシなのがブルーノというワケだ。だから、近衛騎士に入れたらしいぞ。しかも、本人が熱烈に希望していたみたいだしな」


「そうなんですか。ということは、もしかしなくても、私たちの一個下の代は、不作だったということですよね?」


 ステラは、ズバリと真実を提示する。

 まったく、ブルーノのことは気にしていないようであった。


「まぁ、見どころのある奴は、ほとんどいなさそうではある。首席だったエレノアの弟も、魔法兵団に行ってしまったしな。しかも、今年は近衛騎士団の希望者がブルーノしかいなかった。例年だと、10人くらいはいるハズなんだけどな」


 フェイは、よく分からないといった顔をする。

 近衛騎士団は、ローマルク王国の最前線で戦っていたため、忌避されていたのが実態であった。

 誰しも、死ぬ可能性のある部隊に行きたくはない。


 その結果、希望者はブルーノだけというのが真実である。


「それで、ブルーノが選ばれたと。別に無理をして、士官を入れなくても良かった気はしますけど、そこらへんはどうなんですか?」


「いや、さすがに一人も入れないのはマズい。近衛騎士団が回らなくなるからな。ただ、例年はそれなりの人数は入ることになる。お前たちの代は、多すぎだけどな。それだけ見どころのある奴が多かったんだろう。団長も色々と考えていたみたいだぞ」


「なるほど。それで、ブルーノが入ったと。他に近衛騎士団に入った人はいるんですか?」


「いや、ブルーノ一人だけだ。さすがに、質を落としてまで入れる気にはならなかったらしい」


「ということは、それなりにできると思って良いんですね?」


 ステラはそう言った後、ブルーノのほうに顔を向ける。

 無機質な瞳が、紫色の髪をした男性を射抜く。


「まぁ、本当にギリギリだろうな。多分、近衛騎士団の中でも一番弱いハズだ。ただ、本人は凄いやる気みたいだし、入れたって聞いたぞ」


「分かりました。とりあえず、納得はしました。まぁ、こっちにちょっかいを出してくるようなら、エドワードさんもろとも、あの世に行っていただきますので、注意してくださいね」


 普段からは考えられない壮絶な笑みである。

 ステラの顔を見ていたブルーノはというと、青くなってしまっていた。

 エドワードは、『ふざけるな! 何で私まで巻き添えなんだ!』などと騒いでいる。


(……恐いよ、ステラさん。というか、エレノアさんに弟とかいたんだ。しかも、首席だし。まぁ、とりあえずは落ちついたかな。それにしても、何でブルーノさんって、そんなに近衛騎士団に入りたかったんだろう?)


 アリアは、怯えてしまっているブルーノを観察していた。

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