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153 相手が悪い

 空に現れた竜騎兵。

 まだアリアたちの上空には来ていないが、時間の問題である。

 当然、騒ぎになっていた。


「イザベルさん! 竜騎兵です! 空からの攻撃が厄介極まります! バリスタを貸してください!」


 アリアは、イザベルの下にたどり着くなり、要請をする。

 そばには、サラ、ステラ、エレノアもいた。


「貸してやっても良いが、多分、意味ないぞ! バリスタで追い払うにしたって、船の上では狙いが定まらないからな! 波の揺れで、照準できないだろう! まぁ、物は試し、やってみろ!」


 イザベルはそう言うと、バリスタの場所を教える。

 アリアたち四人はというと、さっそく船に備えつけられたバリスタに向かう。


「ステラさん! バリスタって、このまま角度をつけて放てば良いんですよね?」


「そうだと思います。私も始めて使うので、断言はできませんが。まぁ、十分に引きつけて放てば当たるかもしれません」


「やっぱり、追い払うのは難しいですわよね! ただ、バリスタを放ち続ければ、当たるかもしれませんの!」


「そろそろ来ますわよ! 準備をしてくださいまし!」


 エレノアは大きな声を上げる。

 もう、すでに準備を終えているようであった。


「うわ! こんなに近くにきているなんて! やっぱり、空を飛んでくるのはズルいですよ!」


 エレノアの声で状況を確認したアリアは、急いで準備をする。

 すでに、竜騎兵3騎は、はっきりと見える距離まで来ていた。


 1分後。

 ついに、バリスタの出番が訪れる。


「皆さん、今です!」


 ステラのかけ声を合図に、ビュンとバリスタが放たれた。

 飛んでいく矢は、竜騎兵に向かって、真っ直ぐ飛んでいく。


(当たってほしいけど、どうかな? 結構、引きつけて放ったから、悪くないとは思うけど)


 アリアは、急いで矢を装填をしつつ、行き先を見守る。

 矢は竜騎兵に向かって飛んでいき、そして普通に避けられてしまう。


「結構、良い線はいっていたと思うんですけね。やっぱり、物量が足りませんね。たかだか、四人だけでは意味がないも同然ですか」


 ポチャンと海に落ちたのを見送った後、ステラはつぶやく。


「ちょ、ステラ! 落ちついて分析している場合ではありませんの! 来ますわよ!」


 バリスタを諦めたサラは、剣を抜き、構えている。

 竜騎兵3騎はというと、アリアたちに狙いをつけていた。


 竜騎兵自体は矢を、竜からは炎の球が飛んでくる。


「矢はどうでも良いですけど、炎の球はなんとかしないと! 船に当たったら、燃えちゃいますよ!」


 アリアは、飛んできた炎の球を斬り払う。

 他の面々も、矢を無視して、炎の球に集中をする。

 だが、それも、すぐに限界がきた。


「エレノア。何をしているんですか? 船に当たっていますよ?」


「キー! 空を縦横無尽に動いているのに、防げるワケがありませんわ! ステラの方こそ、ダメダメですの!」


 ステラの言葉に、エレノアは怒り出す。

 そんな二人の近くでは、火の手が上がっていた。

 というか、船のいたるところが燃えてしまっている。


(ああ……船が燃えていく。鎮火させようにも焼け石に水だな。というか、まだ、反乱軍が戦っているのに、全部の船を燃やしている。もしかして、最初から始末する気だったのかな? そうだとしたら、納得がいくよ)


 近くの船で騒いでいる反乱軍を見ながら、アリアはそんなことを思う。


「……帰りは水泳ですの。レイテルまでたどり着けるか、心配ですわ。というか、その前に、海で漂っているところを竜騎兵に狙い撃ちにされそうですの……」


「まぁ、十中八九、そうなるでしょうね。海では動きも制限されますし、ただ一方的にやられるだけかと」


「ああああああ! もう! どうして、こうなりますの!? もう少しで帰れると思いましたのに! 死ぬなんて嫌ですわ!」


 サラは諦めの境地。

 ステラは、いつも通りの表情。

 エレノアは、頭をクシャクシャとしていた。


 そんな中、アリアたち四人に近づく影が一人。


「……野郎。あたしの船を燃やしやがって! 絶対に許さねぇ!」


 声のしたほうにアリアたちは振り向く。

 そこには、青筋を立て、凄まじい殺気を放っているイザベルがいた。


(うわ! 滅茶苦茶、怒っているよ! これは話しかけないほうが良さそうだ!)


 アリアは、一瞬で状況を察する。

 近くにいたステラたちも、同様であった。

 そんなイザベルを、四人が見守っていると、動きがあった。


 突如、イザベルが走りだす。

 もちろん、肩には、大斧を担いでいた。


 走りだしたのも束の間、船に張ってある帆に近づくと、跳び上がる。

 そのまま飛びながら、垂直な木の柱を登っていく。

 まさに、滝を登る魚の如くである。


(おいおい! 凄すぎるだろう! 垂直な木の柱だぞ! 普通、はしごを使って登るだろう! なんで、跳び上がりで移動できるんだよ! もしかして、団長とかカレンさんと同じくらい強いのか? というか、帆の上に立って、何をするつもりなんだろう?)


 アリアは、木の柱を凄い速度で登っていくイザベルを見ながら、呆気にとられていた。

 いつの間にか、近くにいたエドワードと学級委員長三人組も、同様である。

 船が燃え盛るのを気にせず、イザベルの動きに注目していた。

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