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139 眠気からの覚醒

「とりあえず、カレンも帰ったことだし、このまま大通りを進んでプレミールの正門を目指そうか! まぁ、ちょっと疲れてきたから、終わってると良いけどね!」


 カレンとレイン、それに男の子が消えたことを確認したミハイルは、再び歩き出す。

 それに伴い、アリアたちも動き始める。


(確かに、緊張の糸が少し切れて、疲れを感じてきたな。まぁ、戦闘になれば、すぐに動けるとは思うけど。ただ、気が抜けているのは問題だな。まだ、プレミールに反乱軍もいるだろうし。ここで、不意打ちを受けて死にましたとか、話にならないよ)


 歩きながら、アリアは、両手で頬を叩く。

 すると、海の塩やら返り血やら汗やらがついた謎物質がはがれ落ちる。

 当然、手にもついてしまう。


(うわ、汚い! はぁ……さっさと、お風呂に入りたいな。こんな状態でいたら何かの病気になっちゃいそうだよ……)


 手についた謎物質を払い、全身の汚れ具合を確認した後、アリアはげんなりとした顔をしてしまう。


「アリア、あと少しの辛抱ですの! この戦いが終わったら、多分、お風呂に入れますわ!」


「サラさんの言う通りです。あと少しですし、頑張りましょう」


 そんなアリアの表情に気がついたのか、サラとステラが声をかける。


「そうですね! あと少しですし、頑張りましょう! あ、そういえば、さっきからエレノアさんの声が聞こえないんですけど、大丈夫ですかね?」


 二人の声に元気づけられたアリアは、エレノアを探すべくキョロキョロと周囲を見渡す。

 すると、ミハイル一行の最後尾でトボトボと歩くエレノアが見えた。

 ただ、様子がおかしい。


(……エレノアさん、歩きながら寝てるよ。もう疲れが限界を超えたんだろうな……まだ戦闘が終わってないのに寝たらヤバいと思うけど、しょうがない気もする。とりあえず、普通に起こしてあげるか)


 同情の念を抱いたアリアは、皆に気づかれないよう、そっとエレノアに近づき起こそうとする。

 だが、アリアの策は上手くいかないようであった。

 いつの間にか、格闘技を使う先輩がエレノアの眼前に移動していたのだ。


「あっ!」


 アリアが、何か言葉を発する前に事態は起こってしまう。

 格闘技を使う先輩が回し蹴りを放ったのだ。

 狙いは、エレノアの顔面のようである。


 ブオンと風切り音を上げながら、軍靴がエレノアの顔面に迫っていた。


(あ。これ、エレノアさん、絶対に避けられないわ)


 アリアがそんなことを思ったのも束の間、回し蹴りがエレノアの顔面に突き刺さる。

 と同時に、


「あああああああ! 痛いですの! 顔がもげましたわ!」


 などと、エレノアが叫びながら、顔面をペタペタと触っていた。

 どうやら、完全に覚醒したようである。


(……あの威力がありそうな蹴りをくらって、あの程度で済むのは凄いな。どんだけ顔が固いんだろう)


 発狂しているエレノアを見ながら、アリアはそんなことを思ってしまう。

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