店長のゆーーつ
筆者が実際に見たのを元に書きました。基本フィクションです。セクハラとパワハラ。働きにくい時代になりました。
あなたを店長に任命します。
オープンから働きようやく店長に上りつめた。これまで品出しをメインに働いてきた。開店から半年でバイトリーダーになり、それから半年で副店長となり、今年の年明けから店長になった。あっという間だった。大変なのはこれからだ。
なんてこった。新年早々問題だ。期待してたバイトが来ない。三が日休んだからくるものだと思い込んでた。休みの理由は?体がだるい?だと?その程度で休むな。と電話先で言ってやりたいが、そんなこと言えばパワハラだのと言われてしまう。はぁ。仕方ない。俺がガンバレばいいんだろ。わかったよ人一倍働くさ。
へ?レジからバーコード読めないって?ちょと待て、同じ商品で他のを読ませてみろ。なんだって。それはもうやった。それでも読み込めない?すていすていすてい。じゃあ、手打ちでやってみろ。命令ですか?ってお前今それどころじゃねえだろ。命令じゃないけど指示だ。指示に従ってくれ。くれ?まてまて。お前の言い分は。お前が気に食わない?パワハラだ?すていすていすていすてい。
わかった俺がレジをやるよ。それでいいだろ。まったく、これだから正月休みの学生バイトは。使えないな。おっと、心の声は出てないよな。よし。
「おまたせしましたー。少しお時間かかりますが手打ちさせていただきます」
どうにか乗り越えたが、問題は先送りしてるに過ぎない。なんだなんだ。他はバーコード読み込むというのに。なぜこれだけ。冷蔵ケースをのぞき込む。他の品と同じバーコードだ。問題ない。
ぴーーー、お客様からクレームが来てます対応お願いします。
なんだまたクレームか。次はなんだ。
カップアイスが表記されてる金額と違うだと?
「89円って書いてあるのに94円で販売するとはどういうことだ」
「見てきますので少々お待ちください」
どれよ。あー89円って書いてある。やべえ。誰だ剥がし忘れたのは。
「お待たせしました。今回は89円で打たせていただきますが、次回からは94円で」
「ああん?俺が89円にしろとお前に行ってるわけじゃねえぞ。別にそのカップアイスが欲しかったわけじゃねえ。ただ、89円でお試しだと思ったから買おうかと思っただけだ。それをなんだ。恩着せがましいこと言いやがって」
「失礼しました。そのような意味ではありません。すみません」
あーあ、あの客いつも来るけどなんなん。いつも俺にばかりケチつけやがって。俺のどこがおかしかった。今回は今回で、次回からは正規の値段でという意味が分からねえのか。まったく一般客の分際でうるせえな。
あー店長になってからロクなことねえな。やりがいの搾取だ。くそ。
ぴーーーー、お客様からのクレームです対応お願いします。
またか。今日何度目だ。
「バーコード読み取れなくて。店長どうしたら」
クレーム対応とちゃうやないか!で?どれよ。
「ちょっといつまで待たせるんです」
「あーすみません。ちょっとお待ちください」
「それ何度も聞いたわ。いつになったら精算できるの?まだかかるの?かかるんだったら帰るわ。他で買うから」
「すぐ。すぐに。すぐに終わりますから」
で?あーさっきのか。後回しにしてた。もうこれこの客だけ販売して裏に下げよう!
ふぅ。無事に購入してもらえた。なんてこった。よし、箱持ってきて。あーさぶっ。おもっ。よいしょっと。ふぅこれでいいか。冷凍ケースにしまって。
ぴーーーー、お客様からのクレームです対応お願いします。
またか。次はなんだ。
「あのさー、さっきまであったさといもどこいったの?急になくなるってことある?」
「はい。それは、本部の手違いで販売できなくなりまして」
「なに?使っちゃいけない薬物でも出たの?」
「いえ。そのようなことは。ただ、登録されてるバーコードが」
「じゃあそれだけ手打ちして販売したらええやん」
「いえ。そういうわけには」
「他のスーパーやったらそうやって販売するよ。なんでお宅はできんの?」
「ですが。しかし、なんというか」
「わかったもうええわ。他のスーパーで買うから。お宅さんとしょうもない話してても意味ないからな」
「すみませんでした」
なんで、こんなこと言われなきゃ。あー。本部が悪い。本部がバーコード間違えたからだ。本部がすべて悪い。私に責任はない。そうだ。そうに決まってる。
ぴーーーーー、お客様からのクレームです対応お願いします。
今日特別多くない?なんなのよ。
「忙しいところごめんね。さといも欲しいんだけど。もう売り切れたのかな」
どいつもこいつもさといもさといも言いやがって。何に使うんだよ!
「はい。申し訳ありません。手違いでやむなく販売中止させてもらってます」
「そうなの?でも、その都度店員さんを呼んでたら仕事にならないでしょ」
「ええまぁ。実のところは」
「だったら、さといもの冷蔵ケースに張り紙貼ったらいいのよ。そしたら、そのことについていちいち声を掛けられなくて済むじゃない」
「はぁ。そうですね。貴重なご意見に感謝します」
「あーそういうのいいから。こっちもなんでないのかなって思っただけだから」
だったら声かけんなや。めんどくせえな。
ようやく無線がならなくなったな。
いつもこうだと楽なんだけどな。
昼めし食って一息つくか。
前の店長は急に消えたからな。あの時は俺が代わりに店長代理をしてたんだっけ。あー。店長なんて受けなきゃよかった。今日だけでクレーム何度あったよ。客だけじゃなくて店員にまでクレームくらってさ。なんなん。
そうだ。さといもだけ他の店から取り寄せておくかな。どれ。
「あーもしもし。A店の店長になったばかりの俺です。ははは。新人マークの店長の俺なんですが、そっちさといもあまってません?あります?じゃあ今から取りに行きますので。あーはい。すみませーん」
良かった。無事あったわ。じゃあ休憩がてら引き取りに行くか。
「あーどうもA店の店長になったばかりの俺です。え?もう面白くない?すみませーん。で、さといも一箱。はい。ありがとうございます。では、はい。また。今度飲みに行きましょ。ね。では」
あーなんかそっけない感じだったな。
「あいつ、去年から同じネタで何度こすってんの。しつこいわ。A店ってそんなにさといも売れてるん?どうした。こっちゃ今日は1つも売れてないのに」
ただいまっと。どれどれ、さといもこっちを入れてと。これで問題解決っと。
ぴーーーーー、クレーム対応お願いします。
は?もう?あーもう。今度は何よ。
「あのさー。何度ここで引っかかるん。もう勘弁してや」
うわっさっきのクレーマーだ。他のスーパーで買うって言ってまた来てる。なんなん。なんの脅しよ。まったく。
「あれ。あれ。バーコード読み込まん。なんで。B店のもなんで。なんで」
「なんでやあらへん。さっさとしてや。手打ちにしなはれ」
「おっかしーな。どれ。あれ?なんで?バーコード同じやん」
「ほれ。さっさとしてや。こっちは仕込みがあるんや。はよして」
手打ちするほかない。あーめんどくさい。販売個数分からなくなるやん!
店長テンパってんな。この店こんなことでいちいち躓いとったら潰れるな。ほんにほんに。
なんだろ。店員たちの目が気になる。私が悪いのか?っていうか電話したろ。
「あーA店の俺です。ちょっとさ。なんで同じもん渡すんよ」
「は?さといもの冷凍あるかと聞くからあるよ。取りに行くというからどうぞ。といっただけやで。なんなん。こっちが悪いんか?」
「あー。そうか。悪い。確認しなかった俺が悪いわ。すまんな。もう今日ずっとさといもで苦しんでるわ」
「なにが?どうしたん?は?じゃあこっちも引き下げとかなあかんやん」
「そっか。うん。わかった。すまなかったね。ごめんね。うん。はい。はい。はーい。はい」
アホやった。なんで確認しなかったんやろ。無駄に在庫抱えてもうた。本部に報告せねば。
「はい。はい。はぁ。ですね。はい。あっそうなんですか。はい。はぁそうでしたか。分かりました。再度出します。はい。はーい。はい。はい。はーい。はぁ。ですが。はい。あー。はい。ですよね。わかります。はい。はい。はーい。はい。はい。はいはいはい。はい。気を付けます。はい」
ながっ!本部しつこ!要点だけ言えや!しつこ。あーしつこ。
で、また出すんか。よいしょっと。
学生のレジは面倒だが教えなくては。
「そうそう。面倒だけどやって。お客様にはその都度口頭で説明してね。はい。そうです。いい感じですね。はい。ではお願いします。はい。はい。はーい。はい」
なんか今日さといも祭りがえげつないな。
ふぅ。さといもの方はどうなってるかな。おっ!売れてるな。爆売れじゃないか。まだ3袋残ってるから。誰かにお願いしとこうかな。
ぴーーーー、クレームです対応お願いします。
またか。で今度はなんだ。
「さといもはもうこれだけですか?」
「いえ。まだありますが。いくつ必要ですか?」
「あのさー。在庫あるなら全部出しちゃえよ。販売機会を失うなよ」
「はぁ。それでいくつ必要ですか?」
「だからさ。それはこっちが選ぶから。とりあえず全部だしちゃえよ」
なんでこんな客に言われなきゃならんのだ。こっちにはこっちの事情があるっていうのに。
「はい。わかりました。お持ちしますが、なんせ一番下にあるのでお時間が」
「そんな言い訳してる暇があったら持ってこい」
「はいただいま」
なんなん。ちょっと。なんなん。なんなんなんなんなんなんな。
よいしょっと。これでようやくさといもか。B店のだな。気づいたら一番下になってたか。うーさむっ。よいしょっと。
「お待たせしました。ってもういない」
なんなん。まったく。なんなん。販売機会ってなんなん。お前何様だよ。なんなん。
よいしょっと。ようやく出し終えた。あっあの客だ。
「お客様。さきほどさといも全部出しましたので」
「知らんがな。儂別にここのオーナーでもないし」
「またおこしを~」
結局買わんのかい!買わんくせに「販売機会失うな」って何様やねん。腹立つ。まぁいいわ。もう閉店作業せな。ほーたーるのひぃかぁあり。
金額はと。あれ。あってないな。ちょっとレジの子はちょっと待ってて。金額合わへんねんけど。うん。うん。そーか。ほうほう。で?なんでなん?うんうん。すていすていすていすてい。
泣かんでもよろしいがな。なに泣いてますの。怒られて?怒ってません。怒ってませんよ。ただ、なんでかなと聞いてるだけで。もう泣いてる。ちょっと待ってよ。すていすていすていすてい。
なんなん。情緒不安定か。これだから学生バイトは。
ううん。いいのいいの。うん。間違いは誰でもね。うん。わかるよ。うん。そうね。うん。そうか。うんうんうん。はぁ。そうですか。大変ですね。で、なんでこんなに額が違うの?桁が異常なんですけど?泣いてもダメ。泣いてどうにかなる金額じゃないからね。いい?数円の誤差ならわかるの。なんで万単位なん。今からカメラで見てくよ。ほら。これ。ね?万札ポケットに入れた。これはどういうことよ。うん。うん。いや。でもさ。うん。うん。いやいや。それは理由には。うん。あー。そうなん。はぁ。でもね。ここは職場だから。うん。わかるよ。うん。ああ。うん。そっか。ってなるかい!ああまた泣く。うん。だけどね。その万札なにするん。うんうん。話したから万札くれって?なるかい!どんな万引きだよ。ホンマに万札抜き取るって。君ね。反省しないならもうね。わかるよね。うん。そう。そういうこと。じゃあ、ここにサインして。そう。うん?なに?退職金くれ?あるかい!学生バイト程度で!ほらまた泣く。あなたが万引きしてこちらとしては今抜けられると人手が足りないから困るの。だけど、あなたをこのまま残しても万引きするでしょ。万札を。諭吉持ってくな。な。他なら?ええわけないやん。なんなん。うん。もうええよ。いくら聞いてもどうにもならんし。サインもらったし。もう帰り。給料は振り込まれるから。はい。終りね。お疲れさまでした。はい。
ー翌朝ー
「店長!」
「あーおはよう」
「店長見ました?」
「なにを?」
「レジの。学生の。あの子」
「あー朝礼で言おうと思ってたけど、あの子辞めてもらったんよ」
「それは知ってます」
「知ってますってなんで」
「これですよ。彼女のSNS」
「店長に泣かされた。私何もしてないのに」
「店長なにしたんです?いいねが1万超えてますよ」
「すていすていすていすてい。私は何もしてない」
「何もしてなかったらこんなことにならないでしょ」
「すていすていすていすてい。ここでは言えないが」
「お尻でも触ったんですか?」
「触ってねえよ!いや、なんていうかね。事を荒立てるつもりはなかったんですよ」
「荒だったんですね。なにしたんです?本部にチクりますよ」
「すていすていすていすてい。ちょい待て。マテ。まて」
「その動揺。胸もんだのですか?ヒドイ!僕のでは飽きたんですか!」
「人聞き悪いこと言うな。君とは元からないでしょ。そういうのボケじゃなくてセクハラですからね。やめてくださいね」
「ちょっとこっちへ」
「暗がりに連れ込むんですか?」
「うるせえな。あのな。ごにょごにょごにょってごにょられたんだよ」
「なんと!ごにょったんですか?」
「ああ」
「立派な犯罪じゃないですか」
「そうだよ」
「ごにょったから辞めてもらったんだよ」
「辞めてもらった?店長ただでさえ人手不足なのに!なんで!」
「朝礼まで待て。全員に話した方がはやい」
「女を泣かせるなんて悪い男ですね」
うるせえよ!
朝礼結局事の顛末をすべて話した。そしたら全員納得した顔をしてるが、どうした。なぜ目を合わせん!
まぁいい。今日もさといも祭りで忙しいかな。あー疲れた。
【あとがき】
店長さんご苦労様です。最近店長になったんだと思いますが、明らかに人手足りてませんよね。店員が品出しに追われてるせいで、笑顔が無くて能面みたいで怖いんですよ。夜中見かけたくないですね。
話は1日と翌朝までですが、私が見かけたのは20日間くらいのことをぎゅっとまとめました。
万引きは犯罪です。やめましょう。
気づいたら5000文字書いてました。
そのほとんどが、はいはい。はいはい。
あっという間に文字数が埋まりましたね。
他でもこういうの書こうかな。
はい。
あぁ。はい。
はいー。
はーい。はい。