あなたの転生、お手伝いします
「畜生、フラれちまったぜー。」
35歳会社員、彼女いない歴35年。今度こそ、と婚活サイトでいい感じになった彼女をクリスマスイブのイベントに誘ったものの、「ごめんなさい、その日は特別な日だから。」と断られた。俺とは特別な日を過ごせないと言う事だね、うん。
缶コーヒー片手に一人歩道にしゃがんで、目の前を楽しそうに歩いている連中を眺める。
『羨ましい・・・。帰ろ。』
「あ、あのっ。」
目の前にいたのは、ミニスカサンタの衣装をきた可愛い女の子だった。
「突然、すみません。異世界転生って興味ありますか?」
「は?」
いやー、本当に唐突だけど。「え?何かのアンケート?」
「そうじゃなくって、今年、コロナのせいで、私成績悪くって、このままじゃ、最悪、消滅・・・。」
何言ってんの?この子。すっげー可愛い子だけど、言ってる事、ちょっと、おかしいよね。ま、コロナのせいで、困ってる人はたくさんいるけど。待て、俺。俺の周りもおかしいぞ。なんで皆、止まってるわけ?
「あ、それは、この場所が、現実世界とずれてるからです。私がしたんですよ。エッヘン。」
エッヘン、って言ってる人、初めて見た。って、問題はそっちじゃ無いでしょ、俺。
「君、誰?何者?」
「あ、私、夢を司ってます。さっきも言ったけど、成績が悪くてピンチなのです。で、異世界転生に興味ありますか?今なら、ハーレムあり、無双あり、イケメン王子、悪役令息もありますよ。」
異世界転生キター!ポンコツ女神?万歳!俺は一も二もなく頷いた。
「ありがと。異世界転生するにはこっちの世界で死ななきゃダメだけど、良いの?」
死んだと思ったら赤ん坊で転生してるってパターンですか、これ。サイコー。
「じゃあ、ここにあなたの名前をフルネームで書いてねっ。」
「おー、夢魔じゃないか。この頃、どう?」
「あ、先輩。こんばんわー。なんか、異世界転生、って言うのが流行ってて、死んじゃうよ、って言ってるのに、みんな、ニコニコ顔で契約してくれるんで大助かりです。」
「大丈夫?後で、魔王様に、騙した魂はノーカンって言われない?」
「え?大丈夫ですよ、ちゃんと転生させてますもん、私の夢の世界へ。でも、すぐにまた死んじゃうんですよねー。その時に回収してますから、騙してません。大体、大人の記憶もった赤ん坊なんて気持ち悪いもの、誰が育てたいんですか?」
わっかん無いなー、と小首を傾げる夢魔の足元に、会社員の死体が転がっていた。