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第64話 岩村城の戦い(中編)

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誤字脱字の報告をして頂きありがとうございました。


 天正三年(1575年)十一月九日。重秀率いる羽柴勢が東濃岩村城を包囲している織田信忠の軍勢と合流した。重秀は宮部継潤と共に岩村城の東側、水晶山にある信忠の本陣へと向かった。


「羽柴藤十郎重秀並びに宮部善祥坊、父筑前守の命により馳せ参じました。合わせて五百の少き兵でございまするが、竹中半兵衛、前野将右衛門、山内伊右衛門等、戦巧者を連れてきました故、存分にお使い下さい」


「藤十郎、善祥坊、大義!共に戦えることを嬉しく思うぞ!」


 本陣の信忠の前で跪いている重秀と継潤に、信忠は嬉しそうに声を掛けた。


 どうやら羽柴勢の到着が最後だったらしく、重秀が本陣についた直後に軍議が開かれた。大盾を利用して組み立てた机の上に、岩村城とその周辺を記した絵図が広げられていた。


「我等はこの岩村城をぐるりと取り囲んでいる。すでに五月(いつつき)は取り囲んでおり、敵の兵糧も尽きて久しいと思われる。しかし、もうすでに冬だ。そろそろ雪が降ってもおかしくはない。ここで決着をつけなければ兵の負担は増すばかりだ。しかも、どうも武田が援軍を派遣しているようだ。そこで、我等も援軍を得ることで、一気に岩村城を攻め落とそうと思う」


 信忠の発言に諸将が驚きの声を上げた。当然であろう。岩村城は高低差180mの険しい山を利用した要害堅固な名城だからだ。これを力攻めするには、味方の多大な損害を覚悟しなければならないのだ。


「恐れながら、あまりにも無謀と存じまする。それがしは反対いたしまする」


 さっそく織田の重臣である河尻秀隆が反対した。続いて池田恒興も反対する。


「岩村城は天下に名高い難攻不落の名城。これを力攻めするはあまりにも無謀」


 この時、軍議の末席にいた重秀はチラリと森長可を見た。長可は口をへの字にして腕を組んで黙っていた。


 ―――森様が黙っているなら、あの人も反対なのだろうな。ま、あんな山城攻めたくもないよな―――


 信忠の本陣に向かう前に岩村城を見てげんなりした事を思い出しながら、そう思った重秀は諸将の反対意見を聞いていた。

 結局、信忠が折れる形で、包囲をそのまま続けることとなった。そして、諸将の陣の位置について話し合われ、羽柴勢は他の援軍に来た諸隊と共に岩村城の西側を担当することとなった。西側と言っても、やや南側であり、武田の援軍がやってくるであろう南側の街道(岩村城の東側は水晶山があり、東から岩村城に行くには北か南側から迂回しなければならない)を防ぐ池田勢や森勢の予備部隊としての役割も兼ねていた。





 岩村城の西側には岩村川と呼ばれる川がある。その川の側には道があり、その道を見張るような形で羽柴勢は陣を張っていた。その羽柴本陣に本多正信が帰ってきた。


「若、只今戻りました」


「うん、どうだった?」


 本陣の上座にて床几の上に腰掛けている重秀が正信に聞いた。


「やはり岩村城はこの西側の川を伝って外部と連絡を取り合っている可能性が高うございまするな。人が通った痕跡がございました」


「半兵衛殿や弥八郎が言ったとおりですね」


 重秀が重治を見ながらそう言うと、重治が頷いた。


「まあ、川沿いに城から出るというのはよくある話ですからなぁ。若君は長篠城の鳥居強右衛門の話を覚えておいでか?」


「確か、鳥居強右衛門は岡崎へ使者に来た時、武田の包囲網をくぐり抜けるのに川を潜ってきたという話でございますね」


 重秀がそう答えると、重治は嬉しそうに頷いた。そこに正信が口を挟む。


「まあ、西側なら警戒は薄そうですからなぁ。大軍を配置できる場所はほぼ無いですし、川沿いの道は南か北の街道に合流しますから、そこを見張れば充分ですし。ただ、それだと見逃すことが多いでしょうな」


 正信が話している時に重秀が急に「あっ」と声を上げた。重治と正信が重秀の顔を思わず見た。


「城内はすでに武田の援軍が来ていることを知っているはず。ならば、援軍が来たのと同時に城内から打って出て挟み撃ちにするのでは!?」


 重秀が興奮しながらそういうのに対し、重治と正信は同時に「でしょうね」と、まるで『そんな当たり前なことを興奮して言わないで下さい』という口調で言った。さらに重治が言う。


「恐らく最終的な打ち合わせのために使者が外から来るか内から来るかのどちらかでしょう。ここ数日は警戒を強めたほうがよろしいかと」


「う、うん・・・」


 興奮して喋った自分の事を恥じながら頷いた重秀は、側にいた使いの者に「宮部殿と伊右衛門、浅野の叔父上に川を伝う間者に注意せよと伝えよ」と命じた。使いの者が陣を出ると、重秀は重治に聞いた。


「警戒には市と虎の部隊を全部使ったほうがよろしいか?」


「それでは二人の部隊は疲労で見逃す確率が高くなりまする。普段どおり交代で十分と心得まする。何、善祥坊様や将右衛門殿ならば見逃しはしますまい。但し、日暮れと夜明けにはご注意を。一番見張りが油断致しまする故」


 重治がそう言うと、重秀は「相分かった」と言って頷くのであった。





「おう、虎。交代だぞ」


 その日の夕暮れ。川の方を見張っていた加藤清正の背後から、福島正則が声を掛けてきた。


「ああ、市か」


 振り向いた清正が正則の格好を見て思わずギョッとした。具足のあらゆる場所に枯れ木や枯れ草をつけまくっていたからだ。

 よく見ると、正則の周りの兵達も似たような格好をしていた。


「・・・なんだその格好は?」


「兄貴に命じられたのよ。これからは目立たぬように見張れってさ」


「・・・何でそんな事しなきゃいけないんだ?」


「それは、間者を、生け捕るため、でござる」


 正則が率いる兵達の後ろから、息を切らしながら声を上げる者が現れた。清正がその方向へ顔を向けると、正信がやってきた。


「いやあ、拙者も昔はお主たちのように山野を駆け回っていたが、桶狭間にて膝に矢を受けてしまってな・・・」


 そう言いながら正信は正則や清正らの近くにやってきた。正信が話を続ける。


「もうすぐ武田の援軍が来ると言うことで、恐らく岩村城の敵は外部と連絡を取るものと思われる。つまり、重要な情報を握っているということだ。その情報を吐かせれば、岩村城の敵の考えが分かるというものよ」


「だってよ」


 正則がそう言うと肩をすくませた。正信はさらに言う。


「こちらが警戒してないと分かれば、敵の間者は必ず現れる。それを捕まえることが出来れば、お主らの功績じゃ。首は取れぬかも知れぬが、武功は武功じゃ」


「だってよ。まあ、一刻(2時間)程で交代するから、俺か虎のどちらかが功を挙げられるかも知れねぇな」


「分かった。まあ、ゆっくりと見張ってろ。一刻経てば交代。その時は俺が手柄を上げるさ」


 清正が自信たっぷりと言うが、正則と正信は顔をニヤニヤさせていた。そのニヤケ顔にムカついたのか、清正が二人を(なじ)った。


「おい!何笑ってるんだよ!」


「大声を出すなよ。目立たなくなるんだから」


 不意に後ろから声を掛けられて清正は飛び跳ねるように驚いた。清正が後ろを向くと、全身に枯れ木や枯れ葉を身に着け、顔に泥を塗った重秀が立っていた。


「うわぁ!って、長兄じゃないですか!何やってるんですか!?」


「目立たない格好のお手本を市達に見せたのさ」


 清正の質問に重秀がニヤリとしながら答えた。正信が呆れたような声を出しながら言う。


「まったく、伊賀者ですらここまでやりませんよ。一体、どこで習ったんだか」


「弥八郎は徳川に戻るから詳しいことは教えぬ。が、御屋形様の小姓を務めたものは大体の者が出来ると言っておこう」


 信長の鷹狩では獲物の発見や監視に、小姓や馬廻衆が変装や偽装して役目を行なっていた。当然重秀も小姓時代にやらされているので、変装や偽装ができるようになっていた。


「長兄、まさか長兄も見張りにつくのか?」


 清正が聞くと、重秀が苦笑いしながら言う。


「今回と未明の見張りには立つつもりだ。一番間者が現れる時だと聞いたからな」


「手柄を取る気か?兄貴」


 正則が笑いながら言うと、重秀は苦笑いした。


「半兵衛殿に諌められたよ。『部下が武功を挙げる機会を大将が奪うな』とな。とはいえ手柄を上げたいと思う気持ちはあるし、そもそも間者が出て見逃すのはよろしくない。というわけで、俺もしっかり見張るから、皆も気張れよ」


「ひでぇ主君だぜ」


 重秀の言葉を受けて笑い出す正則。つられて清正も笑い出した。そんな若い三人の姿を見た正信が「若いって良いねぇ」と歳に似合わず爺臭いことを言いながら笑っていた。





 次の日の朝、羽柴勢の本陣に山内一豊と五島為浄がやってきた。何でも未明に怪しい者を捕らえたと言う。さっそく重秀は事情を一豊から聞いた。


 昨日、山内勢は重秀の命に従い、川方面への監視を怠りなく行なっていた。夜中に怪しい人影を見つけたので、捕らえようとしたところ、怪しい人影は南の方へ逃げ出した。山内の兵達が追い詰めたが、その怪しい者は自ら短刀で喉を突いて死んでしまった。為浄がその怪しい者の身に付けた物を調べたが、身元の分かるようなものはつけておらず、結局誰かは分からなかった。

 未明に辺りが明るくなりつつある時に、その怪しい者が何か投げ捨てていないか周辺を探していたところ、草陰から人が逃げ出すところを見つけ、追いかけたところ、あっさりと捕まえることができた。見るからに百姓というその男はあまりにも怪しいので、本陣に連れてきたということだった。


「で、それがこいつか」


 重秀が見下ろす先には、山内の兵によって縄で縛られた百姓風の男が跪いていた。顔をクシャクシャにし、目と鼻と口からあらゆる液体を垂れ流し、まるで子供のように泣いていた。重秀はそんな様子を見ると、隣りにいた正信の方へ顔を向けた。


「・・・弥八郎とぜんぜん違うな」


「そうですな、拙者はもっと行儀良く若の前にいましたからな」


「嘘つけ、俺を睨みつけていたじゃないか」


「はて、そうでしたかな?」


 とぼける正信に重秀は「取り敢えず尋問しろ」と命じた。正信は百姓風の男に近づくと、その者に優しく囁いた。


「これこれ、そんなに怯えることはない。そなたが正直に言えば、生きて返してやろうぞ」


 ―――そんな聞き方で話すかなぁ・・・?―――


 そんな重秀の心配をよそに、その百姓風の男はべらべらと喋りだした。


 その男が言うには、自分が刈谷城(当時は刈屋城)近辺の農夫で、城のお侍様に命じられて岩村城の近くの山腹の洞に米俵を運び入れていた。その洞から岩村城の兵が夜に取りにやってきて、城に運び入れていたらしい。

 その百姓風の男―――柿助は洞の近くで毒蛇に噛まれたので岩村城へ運び込まれて手当を受けていた。毒が少量だったこともあり、命は取り留めたものの、2ヶ月近く岩村城に厄介になっていた。そして何とか治ったものの、今度は岩村城を織田軍に囲まれて脱出できなくなってしまった。その後、城のお侍に、ある者と一緒に城を出て、刈谷まで帰るように言われた後、昨日の日没後に岩村城を二人で出ていった。

 出ていった後、一旦西にあるさっき言った洞を利用した兵糧庫へいき、日が登るまでそこで待機した後に別行動を取る予定だったものの、洞へ行く途中に山内勢に見つかり、はぐれてしまったらしい。その時に、一緒に城から出た男から「俺が囮になるからお前は走って洞へ行け!」と言って南の方へ行ってしまったらしい。


「・・・それ、本当にそいつが囮になったのか?」


 重秀が柿助の話を聞き終えた後に思わず呟いた。恐らく柿助を囮にしたのでは?と重秀は思ったのだ。


「囮がどちらかはこの際どうでも良いでしょう。取り敢えず、その兵糧庫になった洞が本当にあるかどうかを確認いたしましょう。若君、山内殿に頼みましょう」


 重秀の隣で話を聞いていた重治がそう提案すると、重秀は頷いた。


「そうだな。伊右衛門、ご足労だがその男を道案内させ、本当に兵糧庫があるかどうか探索して参れ」


 重秀の命を聞いた一豊が「承知!」と言うと、為浄と共に柿助と連れて本陣から出て行った。その様子を見た重治が溜息をついた。


「さて若君。厄介な事が出てきましたぞ。刈屋と言えば恐らく三河国碧海郡の刈屋城のことでございましょう。あそこは水野下野守様(水野信元のこと)の居城でございまする。あそこから兵糧が岩村城に搬入されていたとなると、水野様は武田方と内通していたことになりまする」


 水野信元とは、三河刈谷城を居城とし、尾張国知多郡の東部及び三河国碧海郡の西部を領有していた大名である。信元の異母妹は徳川家康の生母、於大の方である。つまり、信元は家康の伯父に当たる人物である。

 信元が生まれた水野家は、元々は松平家と共に今川家についていたが、信元の代になって尾張の織田家に寝返っている。この影響で松平家当主の広忠と於大の方が離縁。息子の竹千代(徳川家康のこと)は母と生き別れとなってしまった。

 話はそれたが、信元は織田に寝返って以来、織田信秀とその息子である信長の傘下大名として振る舞っていた。実際、長島一向一揆平定戦や長篠の戦いでは織田方として参戦している。


「・・・で、なんで刈屋城の水野様がここで出てくるんだ?」


 重秀がそう言うと、視線を三河出身の正信に移した。重治も正信に視線を向ける。正信は右手で頭を掻きながら答えた。


「そう言われましても拙者には分かりかねますな。ひょっとしたら、水野様には預かり知らぬことやも知れませぬ」


 そう言った直後に正信の眼光が鋭くなった。正信は重秀に言う。


「しかし、これは若が手柄を立てる機会やも知れませぬな」


「は?」


 重秀がキョトンとした顔をしている横で、隣りにいた重治は何かを感づいたような顔をした。


「なるほど、若殿様に『刈谷水野家が武田に内通している』と申し上げるのか」


「さよう。三河・尾張の境目に強大な独立大名がいることは参議様(織田信長のこと。実はこの頃に従三位権大納言兼右近衛大将に任じられているが、正信はまだ知らない)も我が主君、三河守様(徳川家康のこと)も望まれぬはず。竹中殿の言うとおりに若殿におっしゃれば、参議様は必ず水野家のお取り潰しにかかるものと存じまする」


 重治に続いて喋った正信に対し、重秀は慌てたように話を止めさせようとした。


「待て待て待て。確固たる証拠がないではないか。あの柿助の証言だけでは、とてもではないが水野家を取り潰すには弱いぞ」


 慌てて話す重秀に対して、重治と正信が声を揃えて言い放つ。


「証拠はでっち上げればよろしい」


「はあぁ!?」


 驚きの声を上げる重秀。そんな重秀にまずは重治が話し始める。


「なに、証拠のでっちあげはこの半兵衛にお任せあれ。見破られぬような証拠を作り上げましょうぞ」


「そういう謀略は拙者の大好物でしてな。なに、ご心配いりませぬ。『せっしゃのかんがえたさいきょうのうそ』を若がそのまま言っていただければ、若は功を上げることができまする」


 重治に続いて正信が楽しそうに話した。重秀は嫌悪感を露わに言い返した。


「何を言っている。もしこれが嘘だと見破られたら、我々はただではすまぬぞ!いや、水野家を取り潰す前ならまだ良い。しかし、取り潰した後に嘘が発覚すれば、我等は切腹・・・いや、切腹すら許されずに斬首だぞ!」


「あ、その心配はございませぬ。罪はそれがし一人で背負います故」


「はあぁ!?」


 重治の言葉に重秀が再び声を上げた。重治の話は続く。


「若君、家臣にとって主君が功を挙げるは喜びでございまする。そのためには犬馬の労をも厭いませぬ。それに、殿より若君のことを託されているそれがしでございまするが、身体が弱く、槍働きができませぬ。よって、こういった謀略でしかお役に立つことができませぬ。何卒、この竹中半兵衛の心中をお汲み取りくださいませ」


 重治に続いて正信が話し始める。


「まあ、拙者の場合は我が主君のためでもありますからなぁ。正直、水野はでかくなりすぎました。あれでは『徳川の代わりに水野でも良くね?』と参議様に思われかねませぬからな。徳川を守るためなので、例え若が拒否しても、拙者はやり遂げとう存じまする」


 重治と正信の進言に、重秀はしばらく悩んでいた。そして、意を決したかのような表情で二人に告げた。


「・・・いや、やはり現状のみを若殿様に伝えよう。今さっき思いついた謀略など、成功するとは思えぬ。仮に水野様が岩村城と内通していたとしても、追求を逃れるための言い訳ぐらいは準備しているだろう。どうせ謀略を仕掛けるなら、もう少し準備をするべきだ。そしてそんな時をしている暇はない。二人共、良いな!」


「しかし・・・」


 重治がなおも言おうとするが、重秀が首を横に振る。


「我が師、半兵衛殿。これは羽柴勢を率いる大将の命である。従わなければ、この事父上にお報せせざるを得ない。弥八郎、勝手な行動を致せば、軍法違反として厳しく処罰する。良いな?」


 十四歳とは思えぬほどの鋭い言葉に、重治と正信は黙って頭を下げた。


「よろしい。私は下がって休む故、伊右衛門達が戻ってきたら呼びに来るように」


 そう言って重秀は立ち上がると、その場から去っていった。残された正信が呟く。


「まだまだ若いですなぁ・・・。あれではこの先生きのこれませぬぞ」


「とはいえ、若君の言うことは一理あります。今回はちと急ぎすぎましたかな?」


 正信の呟きを聞いた重治が話しかけた。正信が答える。


「謀略なんて仕掛けられる時に仕掛ければ良いのです。いちいち準備だ何だで時を取られては、みすみす機会を逃しまする」


「本多殿は積極的ですなぁ。それがしは謀略はちゃんと種を仕込んでから行いたいと考える次第にて」


「なるほど、種を仕込んで見事咲いた花が稲葉山城乗っ取りでござるか」


 正信がそう言うと、重治は笑いながら陣から出て行こうとした。正信が訝しる。


「竹中殿、どちらへ?」


「陣の強化を各部隊に伝えに行こうかと。恐らく数日中には夜襲があるかも知れませぬ故。ま、今のうちに種は仕込んでおいた方がよろしいでしょう」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 尾張三河で24万石の大領を持つ水野さんはこの先生き延びられるか(震え声
[良い点] 重秀は一度辛い目にあって、世の中綺麗事だけじゃなにもできないことを知った方がいいな
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