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空から月は見えるのだろうか  作者: 天和 希
第1章 オーストリア帝国戦 東地中海海戦
4/11

第4話 海の戦い

正真正銘本編です

「俺達は今欧州に向かっている。そしていまから欧州とはなんぞや、と思っているお前らバカに教えてやる。」


 大きい舟の一部屋、艦長室とも言うべき部屋で、いつも通り、玄の口が火を吐く。

 それに対抗しうるのは旭ぐらいだが、まだ未知の欧州について聞きたいせいか、いつもの嫌味は鳴りを潜める。


 ただそのせいでいよいよ尊大に構えて、仲間はともかく主である天がいる中で足を机に乗せて唾でも吐きそうな勢いなのを皆が苦々しく見つめる中玄は口を開く。


 「とにかく、欧州は俺たち「大天帝国だいてんていこく」の本国つまり日本列島がユーラシア大陸の東の東に位置するのに対して、欧州は西に位置する。」


 「なめてるんですか?」


 「すまん さすがに馬鹿でもわかるか」


 「多分誰でもわかると思いますよ」


 玄が誰でも知っているような事を言うのが、気に触れたのか天夢てんむ そらと旭が苦笑する。


 「冗談はさておき、説明をしなきゃな。」


 「さっきから言ってますけど」


 「とにかくさっき言った欧州には9カ国の大国とその傘下の小国が存在する。そして俺たちはそいつらと戦っていく事になる。ちなみに国力は9カ国合わせて本国とその他の支部を全部合わせたぐらいな」


 「ということは私達''大天帝国欧州支部''だけで''大天帝国''と同等の力を持つ集団と戦うってことですか?」


 天夢は眉間にシワを寄せて険しい表情で玄を見つめる。もちろんそれは単純計算して10倍以上の敵と戦うかもしれないと思ったからだ。

 欧州支部では珍しい真面目な会議が広々とした船長室の中で行われている。


 「まさかそんなわけ無いだろう。全部を合わせたら大天帝国と等しいだけだ。あくまで奴らは独立した国で俺たちが陛下のもと団結してるのとはわけが違う。」


 「なんだ よかった」


 口にしたことが杞憂で良かったと天夢はホッとする。すかさず椅子に座っている今まで黙っていた天が立ってまとめ役として話をまとめると、


 「少し早すぎるけど もうすでに敵の領海に入ってるから警戒しよう 一応全員はここで待機ということにしよう。」


 天の提案に全員がうなずき無言で賛同し自然に到着までの自由時間となる。


 「でも人がいるんですね 大天帝国以外に」


 場面は移り船長室のソファで待機している旭と天夢が話している。


 「うん 公式だと欧州と北米にまあまあの数がいるらしいからね。けど大天帝国の人口と同じぐらいいると言われて驚いたからね。」


 「統一戦争みたいに簡単にはいかないんでしょうね。」


 「まあね あの時は玄さんが銃を発明して勢いと圧倒的火力で終わらせたからね。4、500年続いた戦争をわずか2年で」


 まだ見ぬ敵の話からすぐに、数ヶ月前に終わった統一戦争の話に花を咲かせる。彼らにはあるのだろう。自分は500年続いた戦争を終わらせたと言う誇りが。


 話を続けようとした時、実験で搭載されていたスピーカーとでも言うべきものが鳴ろうとする時に、900m程度先の船からよびかけがある。


 「こちらはオーストリア帝国海軍第十九支部沿岸警備隊...」


どうやら欧州統一の敵とでも言うべきものに発見されたらしい。

 甲高い声に全員が手で軽く耳を塞ぐ中、実験で搭載されている艦内拡声器とでも言うべきものからいきなり大きな声が流れる。

 


 「総員戦闘準備。敵艦と思わしきものは巡視船3隻。想定人数は500名。心してかかれ。以上。」


 こういうところで指揮官の才能が出るというが本当にそうなのだろう。少ない時間と口数で物事を的確に伝えた玄は流石というべきだろう。

 一時混乱していた艦内が静まり返り各員が持ち場につく。

 いつでも戦いはできるというように


 そして相対する側では船内で話し合いが行われていた。


  「艦長 あれって「艦隊」ですよ!? 本当にやるんですか!?」


 「やんなきゃいけん。」


 「ですが 相手は艦隊です!ここはひとまず撤退して本国に様子を伝えてからでも遅くありません!だってあれは東の悪魔じゃないですか! あいつらに大英帝国のインド植民地や他の国の植民地ひいては我が国の植民地も取られたんですよ!! 人数も圧倒的不利なんですよ!? 私達は沿岸警備隊の役割を果たすべきです!」


 ソファーなどのある天や玄たちの船の艦長室とは違う、

 この船の機械質な艦長室では悲哀とも言える声がただ惨めにこだまする。

 どちらかが妥協して引き下がるわけ無いだろう。なにせお互い矜持があり抱えている命もあるのだから。


 「考えたことはあるか。東の悪魔に勝って海軍がその存在を喜ばれる事を。」


 「....それとこれとは関係ないですよ」


 「今思ったんだ。もし今ここで反撃の狼煙を、東の悪魔に対する海軍の証明をしたら俺たちは望まれる存在になれるんじゃないかって。」


 「艦長! 私達は沿岸警備隊です。海軍じゃあないんです! 戦うのは不可能です!」


 泣きながら艦長に向かって反対してるのを見ると彼は本心では戦いたいのだろう。ただ沿岸警備隊という立場を弁えて艦長を止めるのだろう。

 

 「なんのために訓練してきたんだ! なんのために銃を握ってるんだ!! なんのために船に大砲がついとるんだ!!! わしゃ老いても漢じゃ!!!! 圧倒的敗北で死ぬのも全て本望!!!! 行くぞ!!!!」


 艦長は副艦長の静止を振り払い艦橋に向かって進んでいく。


 もう開戦は誰にも止められない。

 


 




 




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