第1話 苦しみ
プロローグ
苦しい
死にたい
つらい
天罰なのかもしれない。
父親をあんな死に方させて、
母親のやったことは当然だ。
わかってる わかってるんだ。
でも生きてきた。
ただ逃げる人生だった。
面白みもクソもない。
生きる意味はなかったのかもしれない。
次はいい人生を送りたい。
意識がなくなるに連れて彼の瞳に映る女性の姿はより鮮明になっていった。美しい女性だ。桃色の髪が夜空の月明かりを反射し神々しく見える。桃色の瞳は生きる事すらままならない少年を確かに捉えていた。
美しかった。
全てが、美しかった。女のふざけた美しさが何もかも、苦しみも忘れさせた。
けれども苦しかった。
生きたいと思った。
そんな中、聞こえてくるのは何なのだろう。女が口を開いた。
「ごめん..ね いつ..か また会...おう」
掠れていく意識の中で聞き取れたのはあの人には似合わない弱々しい声だった。
後悔しているようには見えなかった。ただまた会おうという叶うかわからない願いは聞こえた。
――あの人でも息子が死ぬ間際は、そんな顔するんだな
確かに彼は死んだ。
満月の日だ。