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名もなき感情  作者: 谷先 ソラ
3/3

大嫌いだったハズなのに #2《真意と結果》

一話目から続きとして書いているので、最初の方は被っています。

~50分後~

教室内にチャイムが鳴り響く。

「はい、次回は実際に色々やって見るから教科書忘れんなよー。号令」

「姿勢、例。ありがとうございました」

一同「「ありがとうございました」」

言い終わるなり紗々が美樹に近づきながらが大きく伸びをする。

「んあ~、おわった~。次なんだっけ?」

「ん?確か国語だった気がする」

紗々が「そっか」と答え、少しだけ後ろを振り向き何かをしたが、何をしたのかはよく見えなかった。

「じゃ、美樹。戻ろ?」

紗々はそう言うと、美樹の腕を引っ張り教室に向かって歩き出す。


美樹と紗々が廊下を歩いていると後ろから翔太が話しかける。

「なぁお前ら。今日の部活は来るのか?」

紗々が振り向きながら答える。

「行くけど、なんで今聞いたの?」

「いや、普通に気になったから。あと、授業の前にお前らが“カッコいい”って言ってた先輩、実は弓道部の元部員だから『教えてもらう』っていう名目で呼んでみようか?」

翔太が微笑みながら聞く。

すると美樹が光速で振り向き、確認をする。

「え、本当に?」

「ほんとほんと。」

翔太が笑顔で答えると美樹が更に笑顔になる。

その笑顔に釣られてか、紗々がニヤニヤしだす。正直その笑顔は周りから見ると気持ち悪いと思う様な笑顔だ。

紗々と翔太が馬鹿なことを言い合ってお互い笑い合っていると、不意に美樹の胸が傷んだ。

(何・・・?この胸の痛みは・・・?)

美樹が一人悩んでいると無意識のうちに足が止まってしまう。紗々が美樹の顔を見上げるように覗き込んでくる。

「どうしたの?美樹。さっきから暗い顔して」

その紗々の声で気付いたのか、翔太も足を止め美樹の顔を覗き込む。

美樹は自分の顔に血が集まり、ドンドン赫くなっていくのを感じ、慌てて話を逸す。

「い、イヤ。何でも無いよ。それよりさぁ〜、お二人さんは実は付き合ってたりとか無いの?」

翔太が一瞬泣きそうな顔をしたので美樹が謝ろうと口を開くと、紗々が発言を妨げる様に喋りだす。

「いや、それは無いって〜。流石に」

紗々の言葉に合わせて翔太も笑う。

紗々と翔太が二人、笑っているのを見て美樹はまた謎の胸の痛みに襲われる。

(さっきからこの良く分からないこの胸の痛みは一体何・・・?)

その時、紗々が驚いたように美樹に話しかける。

「ど、どうしたの美樹?!急に泣き出して 」

紗々の声色はとても心配そうだった。

そして、美樹自身も紗々に言われて初めて自分が泣いていた事に気がついた。

「なんでもないよ。ただ目にゴミが入っただけだから。それより次、体育だから急がないとね」

笑いながらごまかし、先に走って教室に向かう。

美樹は顔に血が集まり、ドンドン赫くなっていくのを感じながら教室に小走りで向かっていた。

(あ~、もう。何で私あんなこと言ったの?!これじゃ二人にヤキモチ焼いてるみたいじゃん!!)

美樹は廊下を走っているところを教師に怒られ足を止め、ふと後ろを振り返る。

そこに、紗々と翔太の姿は無かった。

「やっぱりあの二人、デキてるんじゃん・・・」

美樹は一人寂しそうにその場に立ち尽くし、ため息をついた。


*~*


~数十秒前~

「なんでもないよ。ただ目にゴミが入っただけだから。それより次、体育だから急がないとね」

そう言うと美樹は小走りで教室に向かっていった。それを紗々は半ば呆れながら後をついていこうと、翔太に声を掛ける。

「さ、私達も急がなきゃね」

紗々が翔太の手を引いて教室に向かおうとするが、動こうとしない。

何かと思い紗々が後ろに振り返った瞬間、翔太がその場に倒れ込んだ。

美樹に手伝ってもらおうと思ったが、美樹はもう結構遠くに行ってしまっている。

結局紗々は一人で翔太を保健室に運ぶことにした。

保健室に着くなり紗々も疲れ切りその場に膝をつく。それと同時に保険室内に始業のチャイムが鳴り響く。周りを見渡したが、そこに養護教諭の姿は無かった。

翔太を保健室のベッドに寝かすのとほぼ同時に、翔太が目を覚ます。

「あれ、ここどこ・・・?」

その声を聞いて、紗々は初めて翔太が目を覚ましたことに気がついた。

「おはよう、翔太。保健室だよ、ここ。アンタが急に倒れるから頑張ってここまで運んだんだから」

「そうか、ありがとうな」

翔太が笑みを浮かべながら言い、その瞬間、紗々の心臓が強く跳ねる。

「そ、それよりさ、何でアンタそんなに軽いの?」

紗々が紅潮した顔を隠すように横を向きながら、聞く。

「軽いって、体重の事?」

「そう」

「えっと・・・聞きたい?」

翔太が恥ずかしそうに少し俯きながら言う。

「聞きたい。教えて!」

「そっか、じゃあこれから言うことは絶対に美樹には内緒にしてね。後から俺が言ったほうが良いことだからね」

「わかった。約束する」

「じゃ、実は俺ね、生まれつき心臓病持ってるんだ」

「え・・・・」

翔太のまさかのカミングアウトに、紗々が凍りつく。

「その心臓病ってのがね、慢性収縮性心膜炎って言うんだけど、その心臓病のせいで胸の所に水が溜まりやすいんだ。それで、結構な頻度で手術とかもするから、なるべく体に脂肪とかがついてない方が良いんだよ。だから軽いんだ」

「えっと・・・その、なんか、ごめん・・・」

紗々は頭が追いつかず、自分でも無意識のうちに謝っていた。

「いやいや、大丈夫だよ。それよりさ、そろそろ校庭行ったほうが良いと思うけど」

そう言うと翔太は窓を指差す。そこには準備運動をしているクラスメイト達が見えた。

「あ、そうだね。じゃ、また後で」

「うん。また後で~」

紗々は保健室を出ると急いで教室に向かう。その途中、廊下を急いでいる時の頭の中は混乱で一杯だった。

教室につき制服から体操服に着替えて、急いで校庭に出る。

急いで校庭に行き、教科担任の磯嶋先生に事情を説明する。説明している途中、紗々の事を名指しで笑っているような会話が聞こえたが、気に留めないことにした。


磯嶋と紗々が話し終わると授業が再開される。紗々が美樹に近づき、話しかける。

「ごめんね、美樹。翔太くんが急に倒れちゃったから、保健室に運んでたら遅れちゃった」

紗々の言葉に美樹は怒りも同情もせず、完全に無視をして他のクラスメイトと話を始めた。

(アハハ・・・流石に授業を5分も遅れたら怒るよね・・・後でジュースでも買って謝ろう)

紗々が心にそう決めて体育の授業を受ける。パット見はいつもどうりだが、耳を澄ますと『紗々ってやっぱり翔太くんとデキてるんじゃない?ww』や『やっぱり友達より恋人のほうが大事なんだねw 残念だったね、美樹』という声が聞こえた。


~授業終了後~

「はぁ・・・」

美樹は一人寂しそうにその場に立ち尽くし、ため息をついた。

(てか、何で私が紗々と翔太がデキてると悲しんでるのさ。それより、急がなきゃね)

再び小走りで教室に向かう。教室に着くと美樹の瞳には涙が少し溜まっていた。

着替え終わり、更衣室出ると紗々とは違うタイプの中学からの親友である霜月 乃々華が美樹に聞く。

「え、どうしたの?泣きそうな顔してるけど・・・」

「ん~・・・なんでも無いよ!大丈夫!」

美樹は笑顔で答えたが、恐らくぎこちない笑顔だっただろう。

「そう? なら良いけど・・・ じゃ、次英語だから急ご!」

「うん! あの先生怒ると煩いから急がないとね!」

美樹は再び廊下を走り出す。それも乃々華と一緒に。


美樹と乃々華が教室に着くと既に英語の教科担任が教壇に立っていた。

教科担任が美樹達を見つけるなり名指しで呼びかける。

「ほ~ら美樹。お前らはよ座れ~」

美樹が席に座り乃々華も席につこうとした瞬間、教室のスピーカーからチャイムとは別の、とても焦っている女性の声がが鳴り響く。

ピーンポーンパーンポーン『ついさっき、高校に爆破予告がされた!犯人がわかるまで自宅待機とする!準備が出来たものから今すぐ帰宅すること!』

放送が終わると校庭の方から男子の「シャーー!!」という歓喜の声が聞こえた。


*~*


高校爆破予告事件から数ヶ月後/6月15日(火)


静寂に包まれた部屋に、美樹の泣き声と布団の擦れる音が響いていた。

その時、美樹の部屋のドアがノックされる。

コンコン「美樹、大丈夫? 晩ごはん出来たけど食べれる?」

美樹の母ー七海ーの声色はとても心配そうだ。

「大丈夫だよ・・・でも、体調は少し良くないから、晩ごはんはいいや」

美樹は出来るだけ声色を明るく言ったが、それでもやはり、暗い感じだった。

美樹がベッドから起き上がると不意に、机の上に置いていたスマホが鳴る。スマホの画面を確認すると『来週の月曜日から授業を再開します。いろいろな確認も含めるので必ず登校して下さい。』と、学校側からのお知らせのメールだった。

「はぁ・・・やっぱり、紗々か篠田くんじゃないかぁ・・・」

あの事件以来、美樹は紗々と翔太の二人と一切連絡をとっておらず、その事が原因で余計にネガティブになっているのである。

疲れたのか、美樹はそのまま寝ることにした。

その後の生活もm決して年頃の女子がやって良いと言える様な生活では無かった。

数日後、美樹が外の景色を眺めていると、不意にスマホが震える。

その画面を見てみると、美樹の学科のグループラインの通知だった。

その文章を読んでみると、クラスが綺麗に2つに割れて学校にスマホを持ち込むのは正しいか悪いかで、口論をしている所だった。


6月21日(月)。

学校全体の空気はいつもどうりだったが、美樹の教室だけは暗かった。その理由は、未だにクラス自体が別れている事と、それが原因でなのか、クラスの1/3程度が登校してないこともあった。

この空気に耐えきれなくなった女子グループが教室から出ようとした瞬間、担任が入ってきてHRが始まる。

担任はいつも以上にみんなを元気づけようとしていたが、全て空回りしていた。

最後に美樹に対して『後で職員室に来るように』と伝え、教室を後にした。

紗々が近づいてきて、美樹に話しかける。

「美樹、なんか体調悪そうだけど大丈夫・・・?」

「うん、大丈夫だよ。元気元気~」

(なんでこんなに嫌な気持ちしながら、紗々と話してるんだろう・・・バカみたい・・・)

美樹は心のなかで自虐しつつ、“笑顔で”受け答えをする。

「それじゃ、私呼ばれてるから・・・」

美樹が話を切り上げ職員室に向かおうと教室を出ると、翔太が美樹を呼び止める。

「ちょ、美樹、大丈夫か?お前」

翔太が美樹の手首を掴み引き止める。

「離してっ!痛い・・・」

翔太の手を振りほどき、向き合う。

「何、なんか用?」

美樹が翔太に対して聞くと、翔太は目をそらしながら答える。

「いや、そんな用って訳じゃないけど・・・なんか具合悪そうだけど大丈夫?」

翔太の声色はとても心配そうだったが、美樹はそんな事ら気付けない程に精神が疲弊していた。

「大丈夫たよ・・・もう行っても良い?」

「あ、うん。自分を傷づけることだけはやんないでね・・・」

美樹が教室を出たときに、翔太は何か言おうとしていたが、結局は何も言えずじまいだった。


「C科1年、姫桜野です。学級担任の美上先生に呼ばれて来ました。入室許可願います」

美樹が言い終わってから10秒ほどしてから返事が帰ってきた。

「は~い、どうぞ~」

美樹が職員室に入ると、職員の視線が美樹に集中する。

「先生、私に用ってなんですか?」

美樹が問う。

「用って感じじゃないけどね。美樹、なんか顔色悪いが大丈夫か?辛かったら早退するか?」

「体調はそんなに悪くないです・・・でも、できれば早退はしたいです・・・」

美樹が答えると、担任の顔が曇る。

「理由を聞いても良いか?」

「はい。そんな、理由って程じゃ無いんですが、その・・・あの教室の空気に耐えきれそうになくて」

「そうか。じゃぁ、荷物の準備はこっちでしとくから、姫桜野は生徒玄関のところで待っといてくれ」

そう言うと、担任は職員室を出て教室に向かった。それに続くようにして、美樹も職員室を出て生徒玄関に向かった。

生徒玄関で1分程待ってから、担任が美樹のバックを持ってやってきた。

「大丈夫か?車で送って行こうか?」

「あ、お願いします・・・」

学校から車で美樹の家までは、コンビニや薬局などに少し寄り道したので5分ほど掛かったが、道中は無言だった。


*~*


~姫桜野家、玄関前にて~

「あの、先生。一つ、めんどくさい質問良いですか?」

美樹が少し上目がちに美上に問う。

「お、何だ?答えられる範囲でいいなら答えるよ」

「紗々・・・いや、折原さんと篠田くんの二人って付き合ってるんでしょうか?」

美樹が勇気を振り絞って聞いてみると、美上は至って真面目な顔で答える。

「多分、あの二人は付き合ってないよ。“世間体では”言われてる『存在しないはずの男女の友情関係』とかじゃないかな?それにしても、何で急にあの二人の色恋を?」

「あ、いや・・・その・・・」

美樹は少し恥ずかしそうに、俯き「そのですね・・・」と続ける。

「あの二人が仲良くしてると、なんだか、胸のあたりが苦しくなって嫌な気持ちになるんです」

その言葉を聞くと、美上が軽く笑った。

「そっか、嫌な気持ちになっちゃうか~」

「先生、笑わないでくださいよ。私は至って真面目ですよ」

美樹が少し怒ったような口調で言う。

「そうか、それは悪かった。それで、美樹はその胸の痛みは何だと思う?」

「わかんないです。多分、篠田くんに紗々を取られるかもって思ったことの嫉妬だと思います」

「嫉妬かぁ・・・」

美上が急に考え始め、「でもね」と話し出す。

「先生はね、その胸の痛みは恋だと思うんだ」

「恋・・・ですか?」

「そう、恋。折原は篠田に取られると思った嫉妬ってのもあってるかもしれない。けどね、先生は姫桜野が篠田に恋をしていて、それを折原に取られると思った嫉妬じゃないのかな?」

「そうですか?」

「そうかもしれないし、違うかもしれない。結果は、姫桜野がもう一度心を入れ替えて、折原と篠田に接してみれば解るかもな」

「なんか適当ですね」

美樹が少し笑いながら言った。

「教師って言うのはね、結構適当なモンだよ。生徒の一人一人にそんなに真面目にしてたら、仕事なんて出来ないからね。だから、今日生徒達と話したことすら明日覚えてないかもしれない。それでも生徒達に偉そうに命令してばっかり。本当にずるい職業だよな」

「でも、美上先生は私とこんなに親身になって離してくれるじゃないですか。たとえ、それが中身がない薄っぺらい言葉でも、救われる人は多いと思いますよ」

「そうか?それは嬉しいな。それはそれとして、明日、これそうだったら来いよ。たとえ早退してもいいから。じゃ、先生はそろそろ学校にもどるよ、じゃないと教頭先生からキツ~い説教されちゃうからな」

「そうですか」

美樹と美上は二人で笑いあった。

「じゃ、たま明日な~」

美樹は美上の車が見えなくなるまで、玄関前で手を振り続けた。


*~*


~翌日/学校内、教室にて~

美樹が教室に入ると同時に、紗々と翔太が近づいてくる。

紗々が美樹に対して話しかける。

「昨日は学校に来てもすぐ早退しちゃってたけど大丈夫?」

「うん。大丈夫だよ。昨日はちょっと体調が良くなかっただけだから」

「そっか。それならよかった。今日は大丈夫?」

「大丈夫~」

美樹と紗々の二人で笑いあった。

紗々が翔太を小突くと、翔太が口を開いた。

「美樹」

「どしたの急に。何か改まっちゃって」

「今日の放課後、ちょっと時間良いか?」

「放課後なら良いけど、なんか用事でもあるの?」

「用事というか、言ったほうが良いと思うことかな。まぁ、部活の今後にも関わることかな」

「ん~、了解。放課後ね。教室で待っとけば良い?」

「おう。それでお願い」

「ういうい」

美樹の胸はよくわからない暖かさに包まれた。

しかし、そこでふと昨日の美上との会話を思い出し、心のなかで幾重にも反響する。

〔それは姫桜野が篠田に恋をしていて、それを折原に取られると思った嫉妬じゃないのかな?〕

(この気持が恋なら、何でなの・・・・?)

美樹が自問したところで、担任の美上が入ってきた。

「お~し、HR始めるぞ~。座れ~」

その言葉を聞いて、立って話をしていた生徒が席につく。

HRが始まり、いつもどうりの今日一日の日程を言い終わると思ったが、最後に美上が美樹に対して一言声をかける。

「姫桜野、今日は体調は良いのか?なんか辛いことはないか?」

美樹は即答する。

「はい、体調も良いですし、特に辛いことのありません。昨日、先生が背中を押してくれたからですかね」

教室内が一瞬ざわついたが、美上が話を続けたことでざわつきは収まった。

HRが終わると紗々が美樹に問う。

「昨日先生と何話したの?」

「あ~・・・まぁ、恋愛相談的なサムシングの・・・」

「なるほどね」

美樹は少し前の翔太との会話を思い出し、紗々に質問をぶつける。

「ねね、篠田くんが言ってた『話』って何だと思う?」

「さぁ、わかんない。あ、でも一つだけこれかなってのはあるかな」

「何?教えてよ」

「う~ん・・・これは本人から聞いたほうが良いかもね。色々と」

紗々は表情を隠すように少し横を向いて答えた。

「そっか~。じゃぁ、放課後まで我慢だね」

「そうですじゃ。人生たまには、我慢も必要ですじゃ・・・」

「なにその仙人みたいな口調。もっかいやってよ」

「え~、やだ~」

美樹と紗々は二人で笑いあい、昨日とは真逆の空間が教室に生まれた。


~放課後 / 教室内にて~

「じゃ、私先に部活行ってるね。一旦バイバ~イ」

そう言うと紗々は教室を出て、弓道部の部棟に向かっていった。

教室に一人取り残された美樹は、緊張を解す為に読書をすることにした。

しかし、いくら読んでも頭に入ってこず時計だけを幾度となく見てしまい、『そろそろ来るかな?』や『言いたいことって一体なんだろう?』などをずっと考えてしまい、読書どころではなかった。

5分ほど待ったが翔太が来なかったので、諦めて美樹も部棟に向かおうと席を立つと同時に翔太が入ってくる。

「スマン、待たせた」

「遅いよ。もう部活に行こうかと思ってた」

「マジでスマン。なかなか此処に入る決心ができなくてな」

「そっか。それで、言いたいことって結局何なの?」

「まず、美樹に一つ伝えないといけないことがあるんだ。それはな、俺、生まれつき心臓病持ってるんだ」

「え・・・」

美樹も紗々の時と同じ様に困惑の色を示した。

「その心臓病ってのがね、慢性収縮性心膜炎って言うんだけど、その心臓病のせいで胸の所に水が溜まりやすいんだ。その病気はね、最悪死ぬんだ」

「そう・・・なんだ・・・」

美樹は思わず下を向いてしまった。

「そう。それで、その事を踏まえた上でお願いがある」

「な、何・・・」

視界の端に映る翔太の顔がみるみる赤くなっていくのを見て、美樹は正面を向き直すことにした。

「その・・・な。俺とだな。・・・付き合ってください」

「はい・・・」

美樹は頭が追いつかず、つい、『はい』と答えたことに気付いて頬が紅潮した。

「本当か?!付き合うって、男女が恋人関係になるヤツだけど、本当にか?」

「本当。本当だよ。私も篠田くんのこと好きだよ」

「でも、俺心臓病持ってていつ何があるかわかんないんだぞ」

「大丈夫。それでも私は篠田くんが好きだよ」

「名前」

「へ・・・?」

翔太が突然別のことを言い出したので、美樹は少し気の抜けた声が出てしまった。

「俺のこと、名字じゃなくて下の名前で呼んでよ。あとできれば呼び捨てが良いな」

「翔太・・・くん。やっぱ下の名前で呼ぶのは良いけど、呼び捨ては恥ずかしいよ」

「そっか。じゃあ俺も美樹の事はこれからは『美樹さん』って呼ぼうかな~」

「え、やだ」

「ウソウソ。ごめんて」

美樹と翔太の二人で笑い合った。

美樹が決心したように席を立ち、一言言う。

「よし、紗々に伝えに行こう!」

「え?マジ?」

「マジ。行こう!」

そう言うと翔太の腕を引いて、紗々の元へと向かった。

教室での事を全て話すと、紗々は「やっぱりそうなるか」と言った。

「やっぱりって何?」

「いや~・・・普通に感のいい人なら、あんたらが両思いってバレバレだったわよ」

「「え、そうなの?」」

美樹と翔太の声が重なりあう。

「フフッ、そうだよ。それよりさ、どうすんのさ。お二人さん」

「どうするって、何を?」

美樹が紗々に問う。

「いや、これからデートでも行くのかなって」

紗々の言葉を聞いて、二人の顔がみるみる赫くなっていく。

「デ、デート・・・」

ふと、翔太が悪戯な笑みを浮かべる。

「なぁ美樹。行こうぜ、デート」

「え?翔太くん本気?!」

「本気の本気。じゃ、俺ら行ってくるから。部長と先生には紗々から言っといてくれ」

紗々が困惑した声で言う。

「え?ちょ、マジ?」

美樹の手を引いて翔太は出ていってしまった。

「まじか・・・あいつ・・・・」



一話完結しない短編小説、第一章『大嫌いだったハズなのに』編、終。

どうも、皆さん。霄です。はい。第1話投稿から1月以上経ちました。

いやね、聞いて下さいよ。

モチベーションはめちゃくちゃあるんですけど、どうしても、学校が忙しくなってきたのと、いつも言ってるようにネタが無いんですよ。(おまけにこれ恋愛小説だし。私恋愛したこと無いし・・・(´;ω;`))

まぁ、なんか気付いたら#1の方が伸びてて嬉しいっす。あざっす!

さて、この話の最後を見れば解るように、このシリーズはまだまだ続きます。ガチで完結までに何ヶ月掛かることやら・・・

じゃ、最後に謝辞を・・・と行きたいのですが、普通にめんどくさくなってきたのでやめます。

皆ありがとう!!


それでは、またいつか。

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