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第十九話 デミウルゴス-02

 今のは魔導粒子砲? でもなんで? いや、それよりも!


「ミュール!」


 崩れるように倒れるミュールを、既のところで抱きとめた。

 その顔色は悪い。もともと白く透き通るような肌をしているけれど、今は血の気が失せてより一層白い。真っ青だ。

 ともすれば、それは死相と呼ぶのかもしれない。


「ミュール! しっかりして、ミュール!」

「……ぅ、あ……あぁ…………」


 ダメだ。いけない。あたしの呼びかけにも、ミュールははっきりと答えられない。

 彼女の命が、血とともに流れ出してる……!


「やれやれ……せっかくの好機だったのに、邪魔をされてしまったな。まったくキミは運がいい。ハハハ」


 響く空虚な笑い声に振り向けば、そこには彼の化物が変わらず姿で立っていた。

 これは……まさかこいつ、頭部を消滅させても再生できる?


 外で暴れていた暴走ゴーレムは首を飛ばせば死ぬ──動かなくなることを、本能的に〝そういうものだ〟と認識していたから動かなくなったけれど、こいつの場合は個性とも言うべき自我がすでにある。


〝首が落ちても死なない〟という〝認識〟、自力で取っ払っているから、こうして蘇った?

 なんであれ、こいつがミュールの腕を……!


「いったい何が起きたかわからない、と言った顔をしているね。裏をかけたのなら幸いだが、いいところをそこのエルフに邪魔をされ──」

「ああああああああああああああああああっ!」


 気がつけば、あたしは喉を震わせて化物にフェンリルの爪を突き立てていた。

 縦に真っ二つに切り裂き、バランスを失って崩れる化物の体を踏みつける。そしてそのまま〝吸収〟の権能を使って欠片すら残さず消滅させた。


 ──しかし。


「まったくキミは、本当に僕の話を聞かないな。ハハハ」


 その時、あたしは見た。

 この化物が現れ出る瞬間を。

 奴は、この巨大な御神木の木の根の中から、まるで卵を割って生まれる雛のようにズルリと這い出てきたのだ。


「おまえ、は……かつての王族が使っていたゴーレムじゃないの……?」

「ハハ、やっと僕と言葉を交わす気になってくれたのかい?」


 化物のくせに、嫌味ったらしいことを言う。

 あたしとしても、こんな化物と言葉を交わすつもりなんて欠片もない。けど、こいつを確実に仕留めるには情報が必要だということを、今さらながらに思い知った。


 ああ、本当にあたしは迂闊だ。迂闊に過ぎる。


 最初から相手を甘くみないで、万全を期す心持ちで挑めばよかったんだ。そうすればミュールの腕を消し飛ばされるようなことも……なかったかもしれないのに!


「まぁ、僕に興味を持ってもらえるのならなんでも答えようじゃないか。この不出来な人間モドキは、確かにこの場に安置されていたゴーレムさ。世の理に反して動き出そうとしていたところを偶然にも見つけてね、拾ってみたら面白い特性も持っていることに気づいたんだよ」


 面白い特性……?


「このゴーレムは元の所有者の魔力波形と同期しているが、魔力そのものの質はアールヴの樹のままなのだよ。そして、その魔力はさらに僕の魔力波形へと塗り替えられつつある。そうすると……こういうこともできるようになるんだ」


 次々に、御神木の樹壁を割いて、化物と同じ姿をしたゴーレムが生み出されていく。

 ボトリ、ボトリ、ボトリ──あちこちから音が響く。


「そして僕にとって幸運だったのは、ここが森の中と言うことさ。いくらでも〝代わり(スペア)〟を生み出せると言っても、素体になるモノは必要だからね。気づいていたかい? 森の中に妖精の類が一匹もいなかったことを」


 そういえば、エルフ森林王国の領土内に足を踏み入れた時、フェンリルがそんあことを言っていた。普段はフェアリーやピクシーたちの羽音でうるさいくらいだと。


「奴らは生命力よりも魔力に重きを置く生物でね。どちらかと言えばアールヴの樹に近い性質を持っているんだよ。この森の王であるアールヴの樹が僕とすり替わった今、ダンジョンに封印されている僕でも、この器を通して奴らを作り変えることは容易かったさ」


 作り……変える……っって、まさか!


「この、次々に生み出されているおまえそっくりのゴーレムは……元はこの森に住んでいた妖精たちなの!?」

「奴らは肉の形にさほど執着がないからね。如何様にも帰ることができるというわけさ」


 こ、いつ……こいつは……冗談じゃない! ここまでイカれてる奴なんて、他にあたしは知らない。

 だからこそこいつは今ここで、この場所で、確実に消し去ってしまわないと駄目だ。

 そうしなければ、こいつは今後どこでどんな厄災を振りまくかわからない。


「ハハハ、今のおまえは凄い顔をしているぞ。視線だけで近寄るものをすべからく殺してしまいそうだ。だが、出来るかね? 僕を倒したければ、《代わり》ともどもこの巨大なアールヴの樹すら一気に消滅させる他ない」


 それは……できるかできないかで言えば、できる。フェンリルの兵仗顕現を使えば、周囲一面まるごと更地にすることさえ可能でしょう。

 けれどそれは、エルフ森林王国の消滅をも意味する。この騒ぎで避難している都民は元より、王都から離れた地方都市で今も平穏に暮らしている人々にも被害が及ぶ。

 なんだってこんな化物のために、何も知らず、なんの関わりもない人々まで犠牲を強いるようなことをしなくちゃならないのよ。


 だから、それはできない。

 できない……けど、他に方法がある?


 化物がアールヴの樹そのものを支配したというのなら、どっちにしろ樹そのものを消滅させるしかない。

 それに、あたしの側には腕を失い、命の灯火さえきえてしまいそうなミュールがいる。彼女の治療をするためにも、一刻も早く化物を倒さなければならない。


 それなら、あたしは──ッ!


「ピュイィィィィィィィィィィィッ!」


 その時、耳をつんざくようなけたたましい嘶きとともに、空から綿雪のような火の粉がふわりふわりと舞い落ちてきた。


『生者に祝福を。死者に安寧を。偽りの愚者に破滅をもたらさん!』


 見上げれば、そこにあったのは火の粉を撒き散らしながら羽ばたく聖鳥の姿。


「フェニックス!?」

「──────────ッッッ!」


 それはもはや鳴き声とも呼べない嘶きだった。

 あたしでさえも思わず両手で耳を塞いでしまう嘶きと響き合うように、舞い散る火の粉がぶわりと広がり。あたり一面、敵味方お構いなしに飲み込んだ。


「あっ……つく、ない?」


 フェニックスの炎は、確かにあたしをも飲み込んで燃え盛っている。

 けれど、熱を感じない。あたし自身には何も起きていない。

 なのに、周囲を見渡せば化物が妖精を材料にアールヴの樹から作り出した《代わり》は激しく燃え盛り、そしてミュールは──。


「腕が……再生してる!?」


 ミュールも炎に包まれているが、それで苦しんでいる様子もない。ただ、失った腕が見ているあたしの目の前で再生されていく。

 それはまるで、噂で聞く霊薬の効果を見ているようだった。

 正しく世の理に則った生者には欠損部位をも復元させる〝再生〟を行い、偽りの命で生者と偽る《代わり》には〝破壊〟をもたらす。


 生と死、再生と破壊。


 これこそが、フェニックスの権能。

 契約を結んだことで理解はしていたけれど、まさかこれほどのものだったなんて……!


「浄化の炎か……ハハ、参ったね。フェニックスがいると《代わり》を生み出せないじゃないか」


 そんな炎にまかれているのは、化物も同じだった。

 けれど奴は、あたしと同じようにフェニックスの炎がまるで意味を成していなかった。

 それどころか、フェニックスを狙って何か攻撃を仕掛けようとしている。


「させないわよ!」

「おっと」


 飛びかかったあたしの一撃は化物の攻撃を中断させることに成功したが、それは腕の一本を切り落とすだけだった。すぐに飛び退き、追撃を許してくれない。


「なんでおまえは無事なのよ。まがい物のくせに!」

「いいや、違うね」


 あたしの疑問を、怪物はきっぱりと否定する。


「フェニックスの権能は自動的でね、僕を一個の〝生物〟と認めているようだ。一部とは言え僕自身の生命と魔力を宿しているのだから当然だね。そしてアールヴの樹は、僕の魔力で塗り替えられた姿が〝正常〟だと判断されたらしい。《代わり》は生み出しても中身が空っぽだから焼かれてしまうが、それだけだ。依然、僕を斃すには僕自身とアールヴの樹を同時に破壊するしかない」


 言外に「そんなことは不可能だろう?」とばかりに化物が言う。

 けれど、あたしはそれをハッタリと踏んだ。


「フェニックスの権能を使えば、あんたを〝破壊〟して、アールヴの樹を〝再生〟できるんじゃない?」

「無駄と断言するが……ハハハ、ならば試してみるかい?」


 化物の手があたしに向けられる──と思った瞬間、魔導粒子砲が放たれた。

 かわすことはできない。だってここには、まだミュールがいる。

 それに、かわす必要もない。


「シッ!」


 一瞬だけフェンリルの権能を発動させ、魔導粒子砲の光を喰らう。わずかに足元も抉れたけれど、行動するのに支障はない。

 しかし、魔導粒子砲の青い光が消えた時、目の前にいるはずの化物が消えていた。


「こっちだよ」


 声は、真横から聞こえた。

 反応が遅れる。直後、鈍い衝撃を脇に感じて、あたしの体は吹っ飛んでいた。


「どうもキミは、僕と話がしたくないようだ。それなら仕方がない。キミがどうしてルティーヤーに気に入られたのか、肉をバラして調べてみることにするよ」


 そう聞こえた瞬間、見えたのは奔る雷霆。ここに来て魔法を使うのか!


「そんなもの!」


 さすがに魔法を使ってきたのには驚いたけど、今のあたしにはフェンリルの獣装宝術(レガリア)を纏っている。魔法を消し去ることくらい造作もない。


「足場は無事かな?」


 化物の声があたしの耳に届いた途端、足場が消失したような浮遊感に襲われた。


「なっ!?」


 消えている。わずか一瞬だけフェンリルの権能を使ったつもりだったのに、足場はあたしが姿勢を崩すには十分な穴がぽっかりと空いていた。

 そうか、ここはアールヴの樹の中。


 言い換えれば、化物の腹の中。


 足場はアールヴの樹の根でできている。穴を開けるくらい、造作もない。戦場の地形すら奴の思うがままだ。


「フェンリルの権能が仇になったね」


 覆いかぶさるように、アールヴの樹の根が何十本とあたしに絡みついてくる。

 これを断ち切るのは簡単だ。フェンリルの権能を使えばいい。

 けれどそうすれば、あたしは落ちていく。這い上がるためには権能を解除するしかないが、そうすれば怒涛の勢いで襲ってくる根を捌ききれない。権能を使わずに爪だけで切り裂くには、数があまりにも多すぎる。


 ヤバい、詰んだ!?


「ケエェェェェェェェェェェェッ!」


 絶望に思考が塗りつぶされそうなったその時、フェニックスが嘶きとともに炎の槍を放った。あたしに襲いかかってきていた根にことごとく突き刺さり、炎を上げて燃え盛る。


「うぅん、邪魔をしないでもらいたい」


 化物の狙いが、あたしからフェニックスに移った。

 雷霆が奔る。

 対してフェニックスは、羽ばたきによる突風に炎を混ぜて迎え撃つ。


 ぶつかり合う雷霆と炎舞。


 爆発が巻き起こり煙幕が舞う。その隙を、今度はあたしは見逃さない。

 フェンリルの速度を使って化物へ肉薄する。今は、拳を握るよりも爪を突き立てた方が相手に効くでしょう。


「りゃあああっ!」


 突き立てたあたしの爪は、見事に化物の胸に穴を穿った。


「フェニックス!」

「────────ッ!」


 加えて、フェニックスの浄化の炎。嘶きとは呼べない超高音の咆哮とともに、化物はあたしに穿たれた穴から炎を噴き上がらせた。


「ハハ、いい連携じゃな、い……か──」


 そんな言葉を残し、化物が燃えカスとなって崩れた──が。


「でも、無駄だよ」


 すぐに化物は復活を果たす。アールヴの樹の幹がぷくりと膨らみ、蕾が割れるように五体満足の姿を現した。


『我が君、奴はもはやあの姿が自然の姿。私の炎で如何に破壊し、再生しようとも、還る姿は変わりません』

「ハハ、そういうことだよ」


 化物がカラカラと嘲笑う。


「フェニックスは輪廻を司る聖獣だ。どれだけ破壊し、再生させたところで本質まで変える力はないんだよ。残念だったね、ハハハ」


 ……そうか、そういうことか。

 そういうことならば。

 まだ、試してみる手は残されている。


「我と契約せし者、汝、その真名を以て神威を示せ!」


 どうせこのままだとジリ貧だ。成功するかどうかなんてわからないけれど、何もやらないで後悔するのは性に合わない。


獣装宝術(レガリア)形態(モード)闇狼(フェンリル)──兵仗顕現(アサルト)!」


 だからあたしは、自らに〝禁じ手〟と科した力も厭わず行使する。

 全身を覆っていたフェンリルの衣は一振りの武器へと姿を変えた。


 それは剣の柄。


 あたしの手ではもちろん、前衛バリバリの屈強な戦士でも手に余りそうな、刀身が付いていればグレートソードに分類されるであろう大きさがある。


「ハハ、破れかぶれになったかい? アーヴルの樹をまるごと消滅させれば──」

「違う」


 あたしは否定する。

 いくら化物を消滅させるためとは言っても、国一つを犠牲にするなんて馬鹿な真似はしない。化物ごときの価値に、そこまでのものはないもの。


「叩き切るのは、おまえだけだ」

「そのフェンリルで? ハハハ、何を期待しているのか知らないが、フェンリルが狙ったものだけを喰えるはずないだろう。喰らうならば一切合切だ」

「……そうね。だから──接続(コネクト)不死鳥(フェニックス)!」


 フェニックスの力も借りる。フェンリルだけじゃない、フェニックスも兵仗顕現させた上で、二つの力を繋ぎ合わせて新たな力を生み出してみせる!


「……なに?」


 かくして、あたしの目論見は成功した。〝力ある言葉〟を受けたフェニックスは自身の体を光の粒子へと転じ、フェンリルが化身した大剣の柄に吸い込まれた。

 直後、噴き出す漆黒の炎が刀身を象る。


「馬鹿な!」


 その時、初めて化物が絶叫にも似た声を上げた。

 目の前で起きた出来事が信じられないとばかりに、目を剥いた。


「なんでそんな真似が出来るんだ!? 出来るわけがない! そんなもの、滾る炎を氷の中に閉じ込めるようなものだ! そんな真似は、この世界で許されていない!」


 知るか、そんなこと。

 あたしは、これしかないと思ったから実行した。そして、フェンリルとフェニックスが応えてくれた。だから実現できた。

 ただそれだけのことに、誰の許しがいるって言うのよ。


「おまえは……本当に何者なんだ? それは、そんな異なる法則を……こと、なる……ま、まさかおまえは──ッ!

「これが、最後の一撃」


 噴き出す漆黒の炎が、まるで暴れ馬のように猛り狂う。押さえつけるだけでかなりの力と精神力が削られていく。

 それでも、失敗は許されない。この一撃が通じなければ、もはやあたしに成す術はない。


「勝負よ」


 あたしの言葉に、化物は──。


「……冗談じゃない。おまえの正体が知れた以上、相手などしていられるか!」


 ──あろうことか、踵を返して逃げ出そうとした。


「ふ……ふざけるなっ!」


 エルフ森林王国を混乱させ、好き放題に暴れた挙げ句に逃げようだなんて、そんなの許せるわけがない。

 大剣を斜に構え、あたしは発走する。しかし、フェンリルと同化していた時のような速度は流石に出せない。


 今のあたしの身体能力は、一般人のそれと同じ。


 対して化物の身体能力は、ダンジョンに出るヴォイドに比肩する。下手をすればそれ以上だ。逃げに注力するというのなら、追いつける道理もない。


 このままじゃ逃げられる──そう思った、その時。

 化物の下半身が、足元ごと氷漬けになった。


「なんだと!?」


 予想すらしていなかったのだろう、驚倒する化物は視線を巡らせた。


「今さら逃がすとお思いですか」


 化物が向ける視線の先にいたミュールが、毅然と言い放つ。


「ハハハ、まさかここで裏をかかれるとはね」


 諦観したように力を抜く化物に、あたしは持てる力のすべてを振り絞り、上段から漆黒の炎が象る刃を叩きつけた。


「ラグナロク=サンサーラ!」


 解き放つフェンリルとフェニックスの真名。


 化物の体を容易く一刀で斬り伏せ、足元にあるアールヴの樹の根に食い込んだ刃を象っていた漆黒の炎が、猛り狂う竜巻のように溢れて踊る。

 化物を足止めした氷棺は千々に砕け、静水に垂らした墨汁のように広がる漆黒の炎は、化物のみならず巨大なアールヴの樹をまるごと飲み込んだ。


 そして──何も起こらない。


 燃えたりしない。傷さえ付いていない。

 けれどそれは、目で見える結果でしかない。


 手応えは、確かにあった。


 アールヴの樹は一秒にも満たない刹那の瞬間に一度は消滅し、消滅すると同時に再生を果たしていた。その中にもはや化物の魔力はなく、本来の無垢な魔力を宿す、正真正銘、エルフたちが信仰する聖なる樹木としての姿を取り戻していた。


 そして、彼の化物は──。


「ハ……ハハ、ハ……」


 ──フェンリルとフェニックスの刃を受けてなお意地汚く、ゴーレムの中にしがみついていた。


「本当になんなんだ、おまえは……」


 さすがのあたしでも、この化物のしぶとさには辟易する。ダンジョンの中でもあるまいし、規格外にもほどがあるでしょうよ。


「思わぬ……退屈……しのぎ、に……なったも、の……だ……。まさ、か……異界の造物主(デミウルゴス)、だった……とは……ね……。ああ……逃げ、て……おけば……良かった、よ……」

「……なんですって?」

「ハハ……僕と、はな……し、をしたけ……れば……ダンジョン、へ来る……と、いい……。待って、い……る……」


 その言葉を最後に。

 化物はグシャリと音を立てて倒れ、そして動かなくなった。


「……二度と会いたくないわよ」


 こっちは出来る限りの手を尽くし、相手は適当に遊んでいただけだった。あたしとしては、そういう印象が強い。

 結局、いいように弄ばれたってわけよ。

 あたしも。この国も。


「イリアスさーん!」


 ──でも、まぁ。


 涙目で駆け寄ってくるミュールを見て、少しは報われていると思うくらいは、許されるわよね?

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