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好奇心について

作者: 宵色朽葉

奇を好む心。すなわち好奇心という言葉がある。

奇。奇異、奇怪、奇形、と様々な単語に使われる語だがそのどれもが普通、大多数と異なるものを意味する。それは同時に相手を排斥し、否定をすることが少なくない。否定とは相手を忌み嫌うことである。それを好み、惹かれるとはどういったロジックが働いているのだろうか。


人は常に自由を求める。そのために古来より多く使われてきた手段のひとつが自分の考えと同じようなもの同士で組織を作り、他者を数の力で圧倒して自由を獲得することである。自分の考えと同じような人はたくさんいる。他の考えは排斥された。すなわちこれが絶対的な考えである。だからその考えを振り回すことは自由である。と、こんな理屈だ。


だがそれは自分の自由な範囲を縮小させることと同義である。多くの人が所属する組織になればなるほどそれぞれの細かい価値観は異なり、摩擦を生む。それでも結束を解かないために不自然なほどに考えを、価値観を統一するのである。


当然細かい機微や個々人に対する思いは無視される。あるのは組織としての考えと価値観。相手の組織への思いのみとなる。そのような変質した自由でも組織から抜けることはできない。多数派からの離脱は自身を少数派へと変えることとなる。考えを共にした仲間から向けられる視線は同胞へ向ける目から排斥すべき者への目と変わる。かつて自分が向けた視線と同じような。


それを避けるために組織としての考えに自分を合わせていくのである。自分の考えを自由に発信するために組織に入ったということを忘れたまま。あるいは気づかないようにしているのかもしれない。他者にばれてはならない。異なる考えは少数であり排するべき対象であるから。


だが組織の掲げる考えが自分のそれと多少なりとも異なっていることは変わらぬ事実である。それに息苦しさを感じて排斥されるのも厭わずに自分のそのままの考えを貫こうとする人もいる。そのような人に人は憧れを抱く。自分にできないことをやってのける人に。 だが行き過ぎた憧れは嫉妬へと変わる。なぜ、あいつは自分にできないことを平然としているんだ。あいつが憎たらしい と。自身が何も行動していないことを棚に上げて。 そうして、またや排斥する。自分たちの憧れで夢であった存在を。固まり、淀みきった組織に風を送るはずだった存在を。それは自分たちの最初の目的を否定し、自傷していることと変わらない。




























人は常に知を求める。知識を増やし、自身の理解が及ぶ範囲を広げようとする。同時に、理解不能なことを極端に恐れる傾向にある。自分に理解できない現象、考えがあることが許せず、それを解明してきた。できないものはそもそも存在しないものとして扱い、目を逸らしてきたのである。歴史を紐解けばそのような事例はいくらでも出てくる。

奇とは自身に理解不能なものであると同時に研究の対象である。忌み嫌うものであると同時に惹かれるものである。自身の理解が未だ及ばない未知の領域のことである。 だが気を付けなければならない。未知とは解明されていないものであり、何が潜んでいるか誰も知らないのだから。好奇の視線を向ける前に、知識を増やそうとする前に一度考えなければならない。なぜ今まで未知は既知となりえず、未知のままだったのかを。単純に先達が解明できなかっただけなのか、解明しようとすら考えなかったのか。あるいは、、、知ってはならないものなのかを。




好奇心猫をも殺す。ということわざがある。これはイギリスのCuriosity killed the cat.の和訳である。それに関連してCat has nine lives.ということわざをご存じだろうか。直訳すると猫は9つの命を持っているとなるがそんな猫ですら好奇心は容易く死に追いやってしまう。古今東西、不思議な力を持つ生き物の代表格とされてきた猫ですらこうなのだ。 どうして人がむやみやたらに未知を既知にできようか。 


人は自重を覚えるべきである。知ってはならない、触れてはならない領域があるのだと真に理解しなければならない。 森羅万象の遍く全てを理解しようなどおこがましいのだ。

知ってしまった時、それは種としての寿命を迎える時なのかもしれない。



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― 新着の感想 ―
[一言] 恐らく 未知の きっかけに 触れてしまったら 戻れないでしょうね 人間の性として ただ 恐怖という 意味を 真に理解しているなら 引き返せるような気がします 前者は まさに 好奇心という …
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