ベビー剣とスライム
少しすると、満足したのかペルが離れた。そして、すっかり放置してしまっていた、剣になったベビーを拾う。
ベビー剣を拾ったペルは、俺の服を引っ張って付いてこいと言うので、ペルとアリシアと一緒に小屋を出る。
小屋を出たペルは、刀身から鞘まで全て水色のベビー剣を抜いた。
「あっ、ペルが使うのか」
「まあ、ペルちゃんの方が強いですからね」
「ごめん」
アリシアの棘は未だに鋭いようだ。
ペルが木に向かってベビー剣を構える。次の瞬間、ベビー剣を振り抜いた状態のペルが目に映る。
少しして、思い出したかのように木が倒れていく。
「すっご」
「凄いですね」
「なあ、アリシア」
「何ですか?」
「ペルが動いたの見えた?」
「残念ながら、気づいたら振り終わってました」
「だよなー」
目に見えない速さで剣を振る幼女。
俺達二人より確実に強い幼女。
褒めて欲しそうにしている幼女。
「凄いぞペル!」
頭を撫でると、凄く嬉しいそうな笑顔を見せる。
頭を撫でられて上機嫌なペルは、ベビー剣を俺に渡してくる。
ベビー剣を受け取った俺に、今度は俺がやれと一本の木を指さす。
「ちょっと無理じゃないかなー」
「ペルちゃんが期待してるんですから、腕の見せどころですよ」
「腕も何も、ただの一般人なんですが」
しかし、この状態でやらない選択はない。
ベビー剣は想像以上に軽かった。片手で振り回しても体が引っ張られない位には軽い。
俺は、ベビー剣を上段に構える。剣術なんて知らないから、アニメの見よう見まねだ。
木に向かってベビー剣を振る。
切ったような手応えは無い。しかし、目の前の木は重力に従い倒れた。
「凄いです! シュウさんもやれば出来るじゃないですか」
アリシアに馬鹿にされた気がするが、この結果は流石に想定外だ。
俺のステータスではいくら剣を持とうと、直径50cmはあるだろう木は切れない。
それを手応えなく切るなんてことは、まず有り得ない。
確実にベビー剣が異常なのだ。
「このベビー剣ならアリシアでも出来ると思うぞ?」
「いやいや、何を言ってるんですか」
「いや、マジで。一回やってみ」
「分かりました。出来なくても知りませんよ」
そう言ってベビー剣を俺から受け取ったアリシアは、直径30cm程の木の前に行く。
俺と同じようにベビー剣を上段に構える。
「えいっ!」
可愛い掛け声と共にベビー剣を振り下ろす。
木に当たり失速するも、止まることなく振り抜いた。
俺やペルの時と同じく、木は綺麗な断面を残して倒れた。
「うそ」
「な、言った通りだろ」
「間違いなく世界一切れる剣ですね」
アリシアからベビー剣を受け取ると、ペルが俺の服を引っ張る。
ベビー剣を返して欲しいのかと思うと違うようだ。
ペルは俺が切ったのよりも大きい木の前に行くと、指を伸ばして手刀の構えをとる。
「おいおい、まじか? やるのかそれを?」
ペルはまたも見えない速さで、手刀を振る。切り倒される木。唖然とする俺とアリシア。得意げなペル。
恐ろしく速い手刀、俺でなきゃ見の・・・・・・がしました。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
掛ける言葉が見つからない。俺の語彙力は死んだようだ。
木を切って満足したペルは俺に抱きついてくる。すかさず頭を撫でる。
「これなら街に行っても安全だな」
「剣やペルちゃんを狙われても平気ですね」
「だな。よし、明日また街に行こう」
「はい」
例えまたフォレストウルフが来ようとも、これなら負けはしない。
そんな事を考えつつも、幼女を撫でる俺だった。
読んでいただき、有難うございます。
ペルが幼女になった事に他意はありません。元の大きさの問題です。
途中幼女押しがありますがこれも他意はありません。ないったら無いのです。
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