森の外とスライム
挨拶を済ませたところで、今後の話をする前に食事をする事にした。といってもスライムゼリーしかないのだが。
「ペルお願い」
ペルは了解と一度ふるえ、ゼリーを二つ出す。
俺はゼリーを受け取ると、一つをアリシアに差し出した。
「? これは何ですか?」
「スライムゼリーってやつ。美味しいよ」
「スライムゼリーっ!? そ、そんな高級品頂けませんっ!」
「高級品? でも、それしか食べ物無いよ?」
「えぇぇ・・・・・・」
高級品なんて言われても、この世界の事なんて知らないためよく分からない。
それに、毎日食べているので今更感が強い。
「ペルに頼めばいくらでも作れるから、食べないで餓死されても困る」
「うっ、分かりました。いただきます」
アリシアはまだ渋っていたが、意を決して食べ始めた。
「!? 美味しい!! これ凄く美味しいです!」
「そう? それはよかった」
幸せそうな顔でゼリーを頬張るアリシアと、それを見て満足そうなペル。
二人を見てほっこりしながら、俺もゼリーを食べる。
「美味しかったです。金貨一枚の価値は伊達ではありませんね」
「金貨?」
「そういえば、知らないんでしたね。お金は全部で七種類あります。下から銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨です。それぞれ十枚で上に上がります。スライムやゴブリンの魔石が、大体銅貨五枚から大銅貨一枚。ホブゴブリンだと大銀貨一枚位で買い取って貰えます。つまり、スライムゼリー一個でホブゴブリン十匹分の価値があります。」
「まじかよ。ん? そういえば、テイマーの事知らなかったよな。ならなんでスライムゼリーは知ってるんだ? どうやって手に入れるんだ?」
「それは、スライムを倒すと極稀にスライムゼリーを落とすんですよ。何百、何千と倒して一個とからしいですけど」
「なるほど、だから希少価値が付いて高くなったのか」
普段何気なく食べてたゼリーに、そんな裏があるとは。街に行けばこれで大金持ちになれるのでは? いや、興味無いけど。
「まあ、そんな事より今後について話そうか」
「そんな事って、まあいいですけど。それで、今後についてですが、一つ提案があります」
「提案?」
「私と一緒に街に行きませんか?」
「街? なんで?」
「シュウさんはこのままここで、誰とも交流せず生きていくつもりなんですか?」
「うっ、確かに・・・・・・」
「それに、このままお別れなんて寂しいじゃないですか」
「そう言われると、何も言い返せないんだが」
「ならいいですよね」
「分かったよ。ついて行かないとアリシア泣いちゃうしね」
「泣きませんっ! 泣きませんが、ありがとうございます」
俺がついて行くと言って、嬉しそうにしているアリシアを見て、思わず抱きしめていた。
「!? 何ですかっ!?」
「あっ、ごめん。つい癖で」
「癖って・・・・・・」
「ほんとごめん。ペル達は遠慮せず抱きしめてたからつい」
「分かりました。もういいですよ。今後気を付けてください」
「ごめん。ありがとう」
「それで、いつ頃ここを出るんですか?」
「別に何時でもいいけど、昨日の今日だし、明日にしよっか」
「分かりました」
「いろいろ迷惑掛けると思うけど、よろしくね」
「はい。お任せ下さい!」
その後は他愛もない話をして過ごし、いつもより早めに寝ることにした。
寝る前に、どこで寝るか一悶着あったが、それを解決したのはペル達だった。
ベビー二人が布団になり、ペルが枕になった。
なんと心地のいいスライムベッドなのだろうか。このまま死んでも悔いはない。むしろ死にたい。死ぬならスライムに殺されたい。
「いいなぁ・・・・・・」
何か聞こえたが、知らん。ここは俺の特等席だ。
朝、最高の感触に包まれながら目を覚ました。
「一生出たくない」
「何言ってるんですか! 行きますよ!」
「くっ! 俺の幸せタイムを邪魔する気かっ!」
「知りませんよ。毎日やって貰えばいいじゃないですか」
「はっ、天才か」
「シュウさんって、ペルさん達の事になるとバカになりますよね」
「よし、行こうか」
「はぁ、はい。行きましょう」
呆れているアリシアと一緒に小屋を出る。
今までの事から、南に向かえば外に出られるだろう。
「あれ? 街の場所は知らないって言ってませんでした?」
「当たり位付けてるさ」
「なるほど、さすがですね」
「まあ、いざとなれば、見つかるまで探すだけだ」
「褒めて損した気分です・・・・・・」
俺達は、そんな話をしながら歩き出した。
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