イワネの店
ご感想などいただけると嬉しいです!
「ちっさ!」
メディルの屋敷を見たあとだからか、タツが声をあげて驚く。
「こらタツ。失礼だぞ。」
カイトが叱りつつ、イワネの顔色を探る。
イワネは全く意に介さないといった様子で
「狭いところですがどうぞ。」
と言って3人を屋敷の中に招いてる。
中は熱気に満ち溢れていた。
そこには、中年の5、6人ほどの男たちが、カイトでも入りそうそうな木箱を次々と部屋の奥へと運んで行っている。彼らはいずれも筋骨隆々としていて、日にも焼け、力自慢であることが感じられた。
カイトは、男たちの迫力に気圧されながら、中を見回す。すると、1人の初老の男がこの男たちを仕切っていることが分かった。
彼は、頭は白髪でこそあるものの、男たちを休ませまいとして鼓舞する声に張りがあり、箱の腰を痛めない持ち方、歩き方など身振り手振りで指導している。
5、6人の男たちが箱を持ち上げ、部屋の奥に消え、また出てきては箱を運ぶ。
この光景を見ていて飽きないのは、この初老の男の見事な采配で動く男たちの、その動きの美しさにあるだろう。とカイトは思ったりした。
「おぉ。イワネ様。お帰りなさいませ。」
「帰ったわ。ところで、ヤマに彼らを紹介するわね。マギ国からの商人で、真ん中にいるのがカイトさん、左のちょっと馬鹿そうなのがタツさん、右の人相が悪いのがサーヤさんよ。」
「ちょっと、タツが馬鹿なのはいいとして、私のこと人相が悪いってどういうことよ!」
イワネによる不躾な紹介に、タツは呆然とし、サーヤは怒り、イワネに近づこうとする。しかし、それをカイトが止め、
「まぁまぁ、そんなに怒るなよ。……ところでイワネさん、そちらのヤマさんという方は?」
と話を続けようとする。
「彼はこの店の番頭よ。私が仕入れや販売に行っている間に店の切り盛りを全てやってもらっているわ。……ヤマ、彼らから綿を買うことにしたわ。上物よ。」
こういうとイワネはそそくさと部屋の奥へと入って行ってしまった。