俺tueeeeeeee は幻想でした。
ああ、これはやばい。やばいって言葉ってありきたりだよねって思いながらもやばいと思っている。
まじで新しく覚えた影針が強すぎる。
そこらへんのゴブリンだけではなく、この前苦戦していたトロールでさえ簡単に倒せてしまうほどだ。
ただ、ひとつ困ったことにレベルが最近全然上がらなくなってしまった。
いや、まぁ薄々勘付いてはいたのだが、どうやらこの世界では自分より格上の敵を倒さないと、レベルが上がりにくいらしい。逆に格上を倒すとすぐにレベルが上がるのだ。過去の経験からもそうだ。初めてゴブリンを倒した時や初めてあの変な大王イカみたいなのを倒した時然り、トロールの時だってそうだ。僕がレベル上がったのって大抵何か死闘を繰り広げた後だったのだから。
だから、いくらゴブリンやトロールを倒したからと言って、この先の成長は見据えれない。ならば、そろそろこの森を抜けてもいい頃合いかもしれない。
実際に森の外に行ったことはないし、そもそも森以外の所があるか不確かだけれど。
しかし、不確かならば調べればいい。
僕はそう判断し、この森を抜けるためにビニール紐を用意した。帰るときのための目印として、道中の木にいくつかくくりつける算段だ。
そういうことで、この鬱蒼とした森を歩くこと一時間ぐらい。
ようやく森ではない場所を見つけた。
そこからは森が切れたかのように木はなく、砂漠が広がっていた。なんだかちぐはぐな景色だとおもった。後ろは森で、前はいきなり砂漠なのだから。
と、目の前の砂漠には、何やら蠢くものがあった。それはまるでさそりのようなもので、僕はそれに近づく。ここの場所は砂漠だけれど、見た目に反して外気は全然暑くなかった。森の温度と変わらない。
が、そんなことよりも、近づけば近づくほど、そのさそりのデカさに気づく。
僕とさほど変わらないぐらいの大きさのさそりが、闊歩しているのだ。
先手必勝。
僕は出し惜しみなく叫ぶ。
「影針!」
さそりの影から、無数の針がさそりを襲った。が、その甲殻は硬く、貫くことなくたださそりを持ち上げる程度のものになってしまった。
「効かないかい。」
結構がっかりだった。
少し肩を落とすも、しかし状況はそれどころではなくなった。さそりみたいな化け物が僕の方に向かって、走ってくるのだ。
「ちょ、くんなッ...!」
意外に早く、気持ち悪い。肝を冷やしながらも、僕は森へと撤退した。
あれ? あれれれれ? 影針を習得して簡単にモンスターを倒せるようになって俺tueeeeeeができる流れだったじゃん。それが蓋を開けてみればこれだよ。自身の最強の技が全くもって効かない。
こりゃ萎えますわ。不貞腐れちゃいますわ。
砂漠へと抜ける木々の隙間風が、まるで追うのをやめ戻るさそりの後押しするかのように吹き、僕の髪を揺らす。
「はぁ...。」
結局は陳腐な技にご満悦の僕だったのだと自覚し、項垂れる。
なんだかなぁ。