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イカに吸い込まれ


目を開けてみれば、景色は先ほどの廃墟の中であった。 外ではないと言うのに、蝉の鳴く声が煩わしく感じさせる。言わずもがな暑く、気を失っていると言うこともあって、Tシャツは汗ばんでいる。気持ち悪い。というか、喉がカラカラである。家に帰って何か飲み物を飲むことも良いかもしれないが、スイカはとうに粉砕の極みである。道路の上の藻屑だ。

家に帰れば、きっと母さんに殺される。


というか、全部覚えている。東雲が女だってこと。春原さんたちの超常バトル。東雲が女だってこと。


大事なことは二回言っておいた。


まぁ、触らぬ神に祟りなしというし、関わらないでおこう。怖いし。


さて、色々なことを加味して考えるに僕が取らねばならない必然な行動は、なけなしの金をはたいて飲み物を買い、喉を潤し、ダンジョンに行くことである。現実逃避だ。そして、このまえいい水辺を見つけたのだ。そこで数分浮きたい気分だ。

僕はすぐ行動に移した。





水面は点在する木漏れ日を受け、キラキラとさざめいているように感じた。

そこに僕は飛び込んだ—————













私は紛れもなく女だ。少しだけだが突起した胸。それが憮然と物語っている。

けれど私は男として育てられてきた。由緒ある家の格式だとかなんとかで、その副産物が私だ。

小さい時からよく、女だと悟られてはいけないと言われ続けてきたので、その名残として男の子の姿をしている時に少々気を張ってしまい、うまく人とコミュニケーションをとることが下手になってしまった。まぁ、魔術を駆使して、男の子に見えるようにはしているのだけど。


そして、どうも気を張っている時の私は怒っているように見え、目が鋭くなっているというのはアヤメの談だ。


そんなに鋭いのかなぁ、ってこの前鏡で見てみたら自分でも怖いと感じてしまうほどだった。悲しい。


こんな容姿をいつもしているので、たまに何気取ってんだよとか言われて、他校の不良に絡まれたりすることも多々。流石に私の力を使うことはしないので、少し人数が多くなると対処に困ってしまう。自慢ではないが、これまで喧嘩してきた中で怪我をさせたことは一度もないのだ。それぐらいは余裕があるということだが、しかし面倒なことには変わりないので、あまり関わらないでほしいというのが私の願いである。


まぁ、それはなかなか難しいことで、私はどうやら喧嘩が強いと不良たちの中で有名らしい。アヤメがそんなことを言っていた。


喧嘩をする中で、ふと思ったことがあった。もし、私が一方的にやられていたら、だれか周りの人が助けてくれるのだろうかと。

一度やってみたが、まぁバカだったなって思う。自分が心底。

だいたい、そんな面倒なことに首を突っ込む人なんて、私が知っている中ではアヤメぐらいだ。まぁ、私だからということもあるのだろうが、周りはただちらりと見るだけなのだ。当たり前といえば当たり前なのだが、少し悲しかったのは私の本心だ。

 しかしそんな人はいないなと諦めかけた時、そんな面倒なことに首を突っ込むバカな人がいた。この表現は少しけなしているように思えるが、一番良く表現できているのではないかと思う。

だって、利益なんて何もないのに、何されるかわかったもんじゃないのに、かえりみずにそんなことができる人なのだ。アヤメ同様バカな人である。でも私はそういう人が嫌いではない。むしろ好きだ。だから少し興味を持った。しかも、異性だ。異性の人に少し魅力を感じるのは兄様時以来なのだ。だから、私は少しだけこの出会いを大切にしていきたいと思っている–——–—














さて、大変である。それはもう大変である。まさか、湖の中に巨大なイカがいるなんて思わなかった。 浮いていた僕の足をそいつは引っ張ったのだ。お陰でめちゃくちゃ苦しい。どうにかできないのか。僕は一旦冷静になる事にした。が、出来ることといえば、捕んでいるイカの足を噛むことぐらいか。僕は駄目だろうと足掻きながらも、思いっきり噛んだ。すると、ぶるりと振動したかと思えば、すぐに掴む力は弱まる。

よし! これで逃げれる!

喜んだが、つかの間だ。一度振りほどいたそのイカの足がまたもや絡みつく。次はしかも全身にだ。

くそっ、そろそろ息が続かない。が、イカの足は依然として僕を深く水中に引きずり込む。ついで、僕はそいつの全貌が見えた。最初、深くにいすぎて、その姿を見ることができなかったが、今なら見える。クッソでかい。筆舌に表し難いとはこの事で、圧巻の姿だった。そして、何を思ったのか、イカは拘束を解いた。

次の瞬間、僕はイカに吸い込まれ始めた。まじかよ。食うのかよ。もう抵抗する力も残されていなく、僕はなすすべなく吸い込まれていった。









「ん....、どこだよ、ここ」


意識が目覚め、状態をあげる。死んでダンジョンの扉の前に戻ってきたと思ったのだが、どうやらじょうきょうが違う。


「あぁ、ここイカの中か」


少し前のことを思い出し、そうひとりごちるのだった。

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