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地図埋めって、楽しいと思うんだよね。


 先日手に入れた地図を広げる。

 場所は洞窟で、軽装備をし、短剣をこさえている。水の入った水筒をポーチの中に入れ、準備は万端である。

 今回の目標は地図の中にある森を出来る限り埋めることだ。

 作戦っぽいものは一応用意した。作戦と言っても、砂漠手前までテレポートして、そこから上を目指して、森を抜けそうになったら砂漠から離れる方向に少し歩き、また下の方へ戻ると言った単純な方法だけれど。

 何はともあれ、行動あるのみだ。

 僕は森と砂漠の境界線ぐらいに指をなぞった。

 前回と同じようにあたりは光り、終えると砂漠と森の境界へと来ていた。

 よし、あとは上をいくのみだ。

 そう意気込みながら、足を進めた。



 一時間ぐらい歩いただろうか。中々これと言った発見もなく、たまに出てくるモンスターをなぎ払っては歩みを進めた。途中、地図を見ると確かに地図は埋まってき出していた。縦方向におおよそ三分の二ぐらいは埋まっていた。 

 あともう少しで地図の端に来るがいったい何が来るのだろうかとワクワクしていた。


 それから三十分後。僕は固唾を飲むことになった。


 目の前に広がっているのが空であったからだ。

 進もうとしても、その先は断崖絶壁で、下を覗き見るも青い空が広がっていたのだ。それが左右に途方もなく広がっている。

 ギリギリのところに立つと、土が少しほころびポロポロと崖下へ際限なく落ちていった。


「...いや、こわ」


 高所恐怖症には少し堪える光景で少し後ずさった。


 まさかこうなっていたとは。考えもよばぬ結果に少し呆気になったが、やはり不思議ばかりのダンジョン。常識では測れないらしい。


 とにかく当初の目的を果たそう。


 僕は崖から少し離れ、左の方へ歩いた。意外に地図が埋まる範囲は結構広かったので長めに歩いた。

 そして、崖から離れるように進む。

  

 十分くらい歩みを進めたからだろうか。僕は一種の違和感を覚えた。それは閉鎖感とでもいえばいいのか。

 囲われているような、そんな気がしたのだ。


 しかし、それは’気’ではなかった。囲われていたのだ。僕の周囲からぞろぞろと人型の木の集団が追い詰めるように滲みよる。

 僕は剣を抜き、先制攻撃として前方に叫ぶ。


「影針」


 三体ぐらい、一気に串刺しにする。その瞬間、木の人形が飛び襲って来た。それも結構な数。


「影霧」


 三百六十度に霧を散らす。

 飛び込んで来た木の人形どもは全部潰した。

 が、未だに多くの数の木の人形が辺りを囲んでいた。てか、数やばいんだけど。

 木の上や、地面に数百はいるんじゃないだろうか。


「ちょーと、やばいかも?」


 地図で逃げる?

 

 逡巡している間にまた三体の人形が襲って来た。僕は一体の攻撃をいなし、二体を切りつけ最後にいなした奴を切った。


 いやいや。この数だ。これを全て倒せば絶対レベルも上がるし、引くわけにはいかないだろ。そう自分を鼓舞し、闘うことを決意した。











「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ...。」


 数十分切りまくったし、影で刺したし、闇で潰したし、やばい時は足で倒した。

 ほんっとーに疲れた。

 相当きつい。息切れが全然治らないほどに、体力的に来ている。

 もう、この状態で歩くのは流石に億劫だ。

 僕は地図を取り出して、なぞろうとしたその瞬間だった。その翼竜が叫んだのは。


「GYRRRRRRRRR!!!!」


 身体中に力が入り、身を硬らせる。空から聞こえた咆哮。

 空を見やるとそこには、会って久しい、僕を初めて殺したドラゴンがいたのだ。

 いや、無理。闘うのははっきり言って無理だ。僕は早々にそう判断し、地図の洞窟らへんをなぞった。


 けれど、反応はなかった。


「は? え?」


 な、なんでだ!? 僕は諦めずに何度もさする。けれどうんともすんともしない様子は絶望しか生まない。

 制限回数でもあったのか? それとも何か別の要因が? 

 しかし、惑っていても状況は好転しない。空には絶望の象徴が今にも襲って来そうなのだから。

 逃げる。その一手を取らと決めた。

 

 その時、ドラゴンが火球を口からはいた。それは一直線に僕に向かってくる。避けないと。

 そう思い、バックステップを踏もうとした時、先程の木の人形の残骸のせいで足を躓き、横転してしまった。 

 しかし未だに向かいくる火球。


「闇霧!」


 そう叫び、火を消そうとする。


 が、闇の霧が出る気配はひと時としてなかった。


「は?」


 目の前には、未だに火球が。

 死。その言葉が色濃く漂い始める。

 死ねるかよ!


「影釣り!」


 久々に使う技。それはなんとか発生して、僕の手を引っ張り着弾地点から自身を離した。

 が、爆発の勢いで、何回転も転がってしまう。

 すぐに起き上がると、体に違和感を覚えた。倦怠感とでもいうのか、先ほども体力の消耗でキツかったが、それとは別の感覚に苛まれる。

 だるいのだ。

 一瞬、頭に過ぎったのは魔力切れという線。ステータスにもその欄があったし、スキルを使いすぎて魔力が切れたのかもしれない。もしかしたら転移にも魔力が必要で、ということなら、先ほど転移出来なかったこともうなずけるし。

 てか、早く逃げないと。

 重たい体を起き上がらせ、すぐに地図をポーチにしまい、走る。


 しかし、ドラゴンはそんな僕を追いかける。

 正真正銘の絶体絶命。僕はなんとか走るも着実と僕とドラゴンの距離は近づく。

 

 そして、森が途切れた。


 いや、辺りは森なのだけれど、いきなり木が全くない所に来たのだ。


 しかしそんなことよりも、驚くことに逃げた先の眼前には、マヤ文明の遺跡のようなものがあった。


 それが最後の記憶だった。


 僕はドラゴンの鉤爪で腹を裂かれた。激痛が走り、一気に脱力感がくる。


 そうやって、僕はまた死んでしまった。


 最後に何かを発見して。



『ゲーム、オーバー。貴方の装備はここにドロップしてしまいました!』

 ––––––––––









 それは懐かしくも、思い出したくない記憶であった。

 聞こえるのは、怒鳴る声。


 母と父が言い合っているのだ。


 小さい頃の僕は、それをただ静かに見ていた。


 しかし、その怒鳴り合いは僕に飛び火して、父さんは僕を殴った。「生意気な目をしてんじゃねぇぞ!」そんなことを言った気がする。

 母さんは、それには何も言わずに、自分の言い分をまだ吐く。

 僕はただ、振り絞るような声で「ごめんなさい」を繰り返していた。

 これがいつもの、幼少の頃の日常であった。


 そんなある日、ゴミ置き場にゲームボーイが置いてあったのだ。当然、あの親たちだからゲームなんて買ってくれない。けれど周りはDSなんかを買ってもらって、遊んでいて、自分にはそれが眩しく、とても羨ましい光景で。

 僕はそれを手に取った。カセットがちゃんと入っていて、電源もちゃんと入るのだ。

 感動した。


 カセットは何かのRPGだった。

 それから、僕は親から隠れるようにゲームをした。ひたすらしていたのだ。




 そして、場面は移り変わり、一人で家にいる景色へと来た。夕日の光だけが、窓から挿していた。それ以外に電気は付かなくて。

 僕はその夕日の光だけでゲームボーイを照らし、ゲームをしていた。

 そうやって、ずっと親の帰りを待っていた。ずっとだ。


 けれど、二人は帰ることなく僕はずっと一人だったのだ––––––––––









 目を開く。

 先程の鮮明な光景は夢だったのだとようやく実感する。嫌な夢を見た。嫌な汗は出るし、息は少し荒くなっている。

 思い出したくもない、過去の情景だった。


 あれから結局、父親も母親も帰ってこずに一人ぼっちだったのを覚えている。


 まぁ、後から知ったのだが、父はその日飲酒運転をして事故り死亡。

 母は恐らく父とは違う男の元へいき、蒸発したのだろう。そういう噂話をよく身内がしていた。


 でも、それは昔の話だ。忘れていい、昔の話なんだ。

 すぐに切り替え、僕は全身を確認した。

 やはり傷跡もなく、綺麗に蘇っている。せっかく集めた装備は消えていたが。

 あぁ、そういえば地図はどうなったのだろう。少し気になり、腰にあるポーチを調べてみると、幸運なことに地図は入っていた。ポーチはダンジョンで手に入れたものではなく、持参して来たものだから地図は消えなかったのだろうか。

 考えてもわからないが、ついている。と少しホッとした。


 その日はすぐに帰った。


 帰る前に、少しスキルを使ってみたがやはり出せなかった。


 しかし、ぐっすり寝て、日が変わるとスキルはあっさり使えるようになっていた。


 結構、魔力のことを考えないといけないんだな、と実感したのだった。

 











 




 

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