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避難完了。


 それは唐突の爆発だった。館内が振動するほどの。周囲の人たちは何事かと騒つく。警報まで鳴り始めて、まさに緊急事態という状況だ。

 警備員の一人が、避難のための誘導をし始める。

 そんな中、東雲さんは怪訝な表情で「...魔力?」と、小さく、小さく呟いた。

 すぐに僕の方を向いて、


「二色くん。先に避難しといて! わ、僕はちょっと行くところがあるから。早めにここを出るんだよ?」


 そういうと、東雲は先ほどの爆発音が鳴った音源の方へと走り始めた。

 今、『私』と言いかけたのを僕は見逃さなかった。

 というか、どうしようか。僕の選択は今二択、いや三択ある。

 まず一つは一人で静かに避難すること。

 二つは僕だけではなく、他のみんなを探してから避難すること。

 三つはこっそりと東雲の後を追うこと。


 うん。この中では、最後の選択肢が一番面白そうだ。

 本来であれば二番目を選んだ方が良さそうな気もするが、他の人たちがいるフロアは一階であり、恐らく爆発源は二階。今僕のいるフロアが三階で、音だけで二階と判断したけれど恐らく合っている。

 

 そうと決まれば、もう早い。影を薄くするのは得意だ。 

 僕は人の流れに逆らって、東雲にバレないように後を追った。

 

 そして二階フロアについたけれど、そこは結構悲惨な現場となっていた。

 その音源に近づけば近づくほど、気絶し、倒れている人が多数いた。

 だが、何よりも目を引くものは、その先にいた。


 それは人だった。そう、どこにでもいそうな。けれど、それは人ならざる力を使っていた。


 火だ。


 それを爆発的に発せさせながら辺りを見境なく破壊している。まるで自我のない獣のようだ。まぁ、何やら叫びながらそれを行なっているので、中身は獣なのかもしれない。


 そして、それを発見した東雲さんは、とっさにその人に向けて両手をかざした。


 そうした瞬間、氷の厚い壁がその人ならざる人を覆ったのだ。


 走るようにして春原さんもこの場に来た。

 合流した二人は何やら少し話した後、東雲さんがその化物から離れた。どうやら気絶している人たちを避難させるために動いているらしい。

 東雲さんは氷をうまく使って、大人数を運び、人ならざる人から離れるように駆けた。


 恐らく、二階の端に、それも階段近くに避難させるのだろう。


 東雲さんはすぐに見えなくなる。


 そうこうしているうちに人ならざる人が氷の壁をぶち破った。咆哮と共に。

 化物は残った春原さんを見て、本気で炎を春原さんに向けた。

 春原さんは構えることなく、その炎を自身が生成した炎でかき消した。

 なんだか、春原さんと人ならざる人の炎は別物に感じる。春原さんに対して化物は禍々しいと言うか。


 さて、ここで僕がしないといけないこと。


 それはまだ避難できずに気絶している人を助けることだ。


 一人、少年と思しき存在が化物の後ろ––––––棚の影に倒れているのが見える。

 どうやら東雲さんと春原さんはその子の存在が見えていないらしい。

 僕は即座に影渡を使用して、影に入る。そして影へ影へ。

 渡り渡ろうとした瞬間だった。火の粉の影が僕の影へと接触した。


「ッ!!」


 あっつい! マジであっつい! マジか、その攻撃の影が、僕自身いる所にあたるだけでもその威力を貰うのか。マッジで熱い。

 左腕を少しやけどしてしまったが、そんなかまっている暇もない。

 辺りはだんだん火が侵食している。少年の命も危ない。

 僕はすぐに少年の影へと来た。


 そして、これは勘だった。この少年を今僕のいる影中へと入れ込めると。

 僕は少し影から腕を出して、その勘通り少年を影に連れ込んだ。

 

 そして、また影へ影へ。渡って渡ってを繰り返して、東雲さんが気絶した人を運んでいったところまで持ってきた。


 一応、少年を避難させる途中で避難できてない人を探したけれど、どうやらこれで全部らしい。探してももう誰もいなかった。

 さて、戻って観戦もいいけれど、まずはこの人たちの非難が先だな。

 恐らく、あの二人なら大丈夫なんだろうと勝手に判断した。なんか大丈夫だろうって感がささやいているのだ。

 燃え盛る炎を見ながら、僕はそんなことを考えて、人を運んだ。


 警備員の人が途中からきて、なんとか全員を助け出し、避難は終えた。外に出てみると、野次馬やら避難した人たちがごったがえしていた。

 流石にみんなを探すのは無理だろうと、かすかながらに考える。

 そして、遠くから救急車と消防車の音が聞こえた。

 振り返りデパートを見る。


 やはり気になってしまう。あの二人はどうなのか、と言うことが。

 

 僕はすぐに人だかりから離れ、影に入り再びデパートの中へ、あの二人の元へと向かうのだった。









 



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