解毒のプロ、無限牢獄を解除する。
やっと、ですね。
こじつけは得意な方なんですが、難しかったです。
やっぱり主人公はチートなくらいが丁度良いのかもしれません。
「ど、どういうことです?」
お腹の調子が心なしか悪いのだが…。
【いやぁ…それは『中麻草』と言って、今では絶滅危惧になっている薬草の一つなのだ】
中麻…?
…あっ(察)
つまりは、そんな希少な物を俺はヤク中の様に摂取しまくっていた訳か。
「でも、俺の精神は飛んでませんよ?」
【それが分からないのだ。我の知識をもってしても解明出来ないとは…】
いやそんなに強力なの中麻草って!?
聞いてみると、かつて兵隊などが徴兵に対しての恐怖から逃れるために吸って使用されていたというが、あまりに効果が強すぎて人々は自我を失って徴兵どころではなくなったと言う。
そして今では見つけ次第焼却され周辺調査が行われるため、その価値は昔の比ではなくなっているという。
【まぁ、この洞窟はあまりに危険だからと見送っていたようだな】
少し自慢げに言うウェルドラを尻目に、俺は悶えていた。
【…どうしたのだ?】
…もし、ハッピー草もとい中麻草を節約していたら?
外に出て、ヤバい所に全部売り付けたら…?
下手すりゃ国宝すら買えるくらいのお金が入っていたかも…?
「くっ…そぉぉおおおおお!!!」
【!?】
やってしまった。
…まぁ、また集めるか…。
「はぁ…それで、なんの話でしたっけ?」
【あ、うん…それで、中麻草を問題なく吸収出来るなんて我でも出来ないことなのだ】
む、むむっ。
「なぜに俺は吸収出来るんすか?」
【いやだからそれが分からないんだって。時代の進化か、それとも…】
「それとも?」
ここで、新しい発見である。
【それとも、それがお主の無属性スキルということ…かな】
なんと、ここで二つ目のスキル発見…?
っていうか、ウェルドラの精神を持ってく中麻草の攻撃力が高い。
上手く使えば、俺の攻撃スキルになりそうだ。
ここで、俺はいつぞやの蜘蛛と戦ったときの事を思い出した。
蜘蛛の口に張り付き…俺は中麻草エキスを口の中に溢してしまった。
つまり、口から中麻草を吸収した蜘蛛は精神ごとぶっ飛んだという訳だ。
…あの時は、中麻草に助けられたんだな。
【しかし、我はそんなスキル知らない。故に、スライムよ】
「ん、はい?」
ウェルドラはどことなく恥ずかしそうに言った。
【出来れば、スキル名…を付けてくれないか…?】
あぁ、またか。
今度はちゃんとした名前にしたいが…
ギャグ要素抜きでな。
『どんな毒でも問題なく吸収する』スキルだろ…?
『超解毒』とかか?…捻りが無いけど。
いやでも、超程でも無い気がしてきたな。
三つしかない無属性スキルの内の一つなのに、あんまり使い道無い気がするし…。
んん、もういいや。
「そんじゃ、『絶妙解毒』で。」
圧倒的ネーミングセンスである。
【ぜ、絶妙…?絶妙ではない気がするのだが…】
「いやいや、絶妙が合ってますよ」
ばっさりと切り、このスキル名は『絶妙解毒』となった。
ウェルドラは、ちょっとだけ不機嫌になった。
一通り話し終えると、俺は本題を思い出した。
「あっ、それじゃあ事後報告しますね」
ウェルドラも思い出し、それからは俺の体験した三ヶ月をこと細かく教えた。
謎の女や、森羅干渉の事など。
「…ということで、これが俺の体験した全てです」
ウェルドラは、何故か唸り悩んでいた。
【ふむ…うーむ…分かったが、いくつか聞いてもいいか?】
「あ、どうぞ」
ウェルドラの言葉は、俺の頭をややこしくした。
【無の世界についてだが、その女は無限牢獄で閉じ込められたと言っていたのだな?】
「…はい、確かにそう言ってました」
【多分、その女は無限牢獄で閉じ込められていたのではないと思うぞ】
…は?
「つ、つまりどういう…?」
【無の世界は多数存在していて、それぞれが別物なのだ。例えば、我のいる無の世界には、あの時の無限牢獄を食らった…つまり、我しか存在しない。コウモリの無の世界だと、『あのブラックホールから入った者しかあの世界には行けない』のだ】
…つまり、あの女は俺と一緒の道のりを辿らないと会えないということか。
…いや、おかしい。
あの場には誰も居なかった筈…
それをウェルドラに言うと、曖昧な返事が返ってくる。
【幻覚という可能性もあるが…その女の助言のお陰で脱出することが出来たということは、実際にそこにいたということ…わ、分からん…】
まぁ、この話についてはいつまでも結論が出なさそうだし、これはまた後で考えるとしよう。
女も、またどこかで会う的な事を言っていたし、まぁ大丈夫だろう。
少し経って、ウェルドラは俺にある頼み事をしてきた。
「…え?我を解放してほしい?」
【そうだ。お主の『森羅干渉』があれば、我の無限牢獄の権限も上書き出来ると思うのだが…】
…まぁ、やってみる価値はあるかな。
『あっちの小説』でもこんな感じのシーンがあったし…
「それじゃあ、頑張ります」
【うむ、頼んだ】
頼まれた俺はまず、ウェルドラを包む無限牢獄と現実の境界線に触れた。
すると、目の前が暗くなっていく。
【おぉ、我の世界に来るのか!】
ウェルドラの興奮した声を聞いて、俺の意識は一瞬飛んだ。
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「…うーん…はっ!」
完全に意識が飛んでいた。
そして、次にウェルドラの声が耳に入った。
【だ、大丈夫か…成功したのか!?】
「あー…多分成功ですね」
どうやら一瞬だけ意識が飛んでいたようだ。
…さて、俺の仕事はここからだ。
「えっと、これから解除に入るんですけど、結構時間かかるかもなんで我慢していてください」
【そのくらい全然余裕だ!三百年もここにいたのだからな‼】
三ヶ月放置したら涙目になっていたのはどこのどいつだと思いながら、俺は作業に取り掛かった。
ひたすら集中、そして無の所有権を取るということに頭を回した。
ウェルドラが定期的に話し掛けてきたせいもあり、解除は難航した。
どうやら、ブラックホールの無の世界と無限牢獄の無の世界とは性質が違うようで、先に所有権が取られている場合は奪うのがとてつもなく難しい。
「…あ、なんかいける気がする」
俺はボソッと呟く。
ウェルドラは嬉しそうだが、さっき俺に喋るなと言われたから、鼻息で喜びを表現していた。
それから、約数時間の激闘の末。
「あっ…んぁ、んん…あ!いけた!!」
ついに、ウェルドラのいる無限牢獄の空間の所有権を持つことが出来た。
ウェルドラは叫びまくり、俺にタメ口を是非使ってくれと言った。
そこまで嬉しくないが、まぁいい。
【…あ、同じ空間にいる者に所有権を移すことは出来るのか?】
ウェルドラは興味があるようで、そう言ってきた。
「んーと…やったことないけど…多分、出来る。」
【ちょっと試してみてくれないか?】
俺も少し興味があったし、所有権を移そうと念じる。
すると、俺から所有権の感覚が消えた。
そして、その代わりに。
【…お、おぉ!何かを感じる!これが無の所有権…!これが無属性スキルの一部…!】
感嘆しているウェルドラを見ることができた。実にいらない。
「それじゃあ、ウェルドラの手で無限牢獄を、解除してみて。多分、この空間の中ではその無属性スキルが使えると思うから」
ウェルドラにそう言うと、ウェルドラは解除、と念じ…ようとして、途中で口を止めた。
「…ん?どうしたんだ?」
【いや、これは本能的に感じたんだが…ここで解除したら、我の肉体と精神体が乖離してしまう気がするのだ】
それは考えたことがなかった。
俺は無の世界に、無属性スキルで干渉する側として来た為、干渉される側の事を考えていなかった。
ある意味では、無の世界がウェルドラの事を拘束しており、それを解放させるとどんな状態でウェルドラが出てくるか?
…まぁ最悪の場合は、『無限牢獄の未確認の初期設定により肉体と精神体が別に保管されていて、正しい手順を踏まなかった為にウェルドラの肉体と精神体は別々に解放』される。事実上の死亡である。
生憎、俺にはこの世界の全権限を持っている訳ではない。
ただ所有権を持っているだけで、この世界を運営している『無限牢獄の使い手』が決めた不変のルールである初期設定に関しては触れることが出来ないのだ。
そしてなにより、ウェルドラが感覚で気付いたということは、本能がその危険を教えているということだろう。
「ってことは、ウェルドラが完全に戻ることは出来ない…?」
【…くそ、勇者はそこまで計算していたということか…!?】
…どうすればいい。
これから生活する上で、ウェルドラの存在は大きい。
出来れば俺と行動してもらいたいのだ。
俺は思案した。
それは丸一日に及び、俺は一つだけ、試したいことができた。
「ウェルドラ、これは賭けに近いんだが…いいか?」
【…あ、あぁ。なんだ?】
「まずは俺に所有権を戻してくれないか?話はそれからだ」
俺はウェルドラから所有権を貰い、作戦を説明した。
簡単に要約すると、次のようになる。
まず俺は、ウェルドラの精神体をどうにかすることにした。
そこで使うのが、ハッピー草…『中麻草』である。
無の世界に中麻草という概念を刷り込み、俺の作った特製エキスをウェルドラに飲ませる。
するとウェルドラの肉体から精神体は解放され、俺が所有権を持つ無の空間に出てくる。
それを俺はすかさず、『俺の肉体に保存する』。
つまり、ウェルドラの精神体を俺の精神体とは別に保存スキルを使って保存するのだ。無属性干渉スキルを使ってこの空間にいる俺なら無の世界の初期設定には当てはまらないし、問題なく現実に持って帰れるということだ。
ちなみに、スライムの保存スキルというのは便利で、空気など目に見えないあらゆる物を保存する事が出来る。実験済みである。
そして次に、無の世界からウェルドラの肉体を解放させる。
最後の仕上げに、現実のウェルドラの肉体に俺の持っている精神体をぶちこむ、という作戦だ。
【…最後の仕上げ、雑すぎないか?】
「まぁ、多分大丈夫よ」
多分、な。
なんだかんだ言いながらも、ウェルドラは信用してくれた。
そして、作戦実行の時。
始めに言っておくが…この作戦、ある一つの欠陥があったのだ。
それは、約十分後の話である。
中途半端な終わり方になります。
理由は、アクセス数の減少と今の私の下痢のせいです。
なんと、お腹を下していたのはミヤモトではなく私だったのです。
P.S.
祝?ブックマーク1減少!!
悲しみで心が破裂してしまいました…
これからも頑張って参ります。