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転生したらスライムだった話をしよう。

これで完全なるネタだと分かるはずです。

「消される」?

…かかってこいや、『限界』を見せてやろうか。


「はぁ…はぁ…んんっ」


 息が詰まる。

 心臓という概念はスライムには無いはずなのに、体全体が震えて言う事を聞かない。


「…雑草、ある。…ハッピー草、ある。不安も…ある」


 いつもの雑草は多分、体力を回復する薬草だ。

 そして、ハッピー草の酔いとかもこれを吸収すれば少し収まることに気付いた。だから雑草(薬草)はもしもの為に少しだけ持っていくつもりだ。


 どうやって持っていくかだが、それについては俺に考えがあった。

 一ヶ月以上この体で生活してきて、もちろん色んな機能を見つけることに成功していた。


 まず一つは『消化』。これは、体の中で物体を液体状に溶かすという機能。

 一時期、この機能を使って雑草を効率よく保存していたが、ある問題が生じた。

 それは、


『とにかく腐るのが早い』


 という問題だ。なんと、消化後の液体は一日も経たない内に異臭を放ち始めた。

 そして、吸収してもいつもなら感じる『体力回復』の効果が感じられなかった。あと吐き気がした。


 二つ目は『吸収』。例の問題後、消化と吸収を同時に行っている為あまり感覚は無いが、吸収は消化した物体を体に取り込んで栄養にすることが出来る機能だ。

 液体なら大体吸収出来るらしく、途中で感知した『水』も吸収することが出来た。

 水は吸収すると自分のスライム濃度、が薄くなるだけだからもう止めたが。


 そして最近気付いた目玉機能。それが、『保存』だ。

 これがまた便利で、体一個分の液体や物体を真空保存することが出来る機能なのだ。

 体一個分というのは小さい気がするが、間違えて吸収してしまう心配がなくなったから結構安心する。




 長い説明が終わったところで、今回の作戦を発表しよう。


 その名も、『ジリ貧カミカゼ作戦~当たって砕けろ~』だ!


 …ネーミングセンスに関しては本当に無い、自覚している。


 とにかく、作戦の詳しい説明をしよう。


 まず、ありったけのハッピー草と雑草を消化する。

 そして、消化した大量の液体を吸収せずに『保存』する。

 消化されたことによって濃度の濃くなったハッピー草と雑草は、体一個分の量でも吸収し始めて全部で三十分くらいは効果を持続してくれるだろう。

 その三十分の間に、全てを終わらせる。


 もしかしたら、死ぬかもしれない。


 でももしかしたら、案外話の通用するドラゴンかもしれない。


 結果は二分の一。生か、死か。

 だから、少しくらい怖じ気づいたっていいだろう?




「俺はやる…俺はやる…。よし…行くか」


 その間、僅か半日くらい。

 悩み続け、そしてようやっと覚悟を決めることが出来た。


 そして、作戦は開始された。


 まずは目の前にある雑草達を消化するところからだ。俺は小さい体で地道な作業を淡々とこなしていった。




 一時間程で全ての雑草が消化され、洞窟の地面に液体となったそれが水溜まりを作った。


「よし…次は保存かぁ」


 結構作りすぎた感があるが、果たして全部入りきるのだろうか。

 俺は恐る恐る保存を開始、すると俺の体に雑草エキスが満たされていく感覚が伝わった。

 おっと、案外入るんもんなんだな。

 と、結局全部保存することが出来てしまった。

 体はたっぷたっぷでお腹一杯になり、それが準備完了の合図だった。


「うっぷ…吐く前に行こうかな…」


 少し朦朧としながら体を引きずってさ迷い、ようやくあの空洞前へと辿り着くことが出来た。

 俺は軽く準備運動、という名の伸縮をして、ついに空洞の内部へと体を踏み入れた。


「…ぅうっ…きたきたきた謎の不快感」


 ドスの効いた空気が俺の体を包み込む。

 それを見計らって俺は雑草エキスを少しだけ吸収した。

 不快感が晴れ、一緒に調合した薬草は副作用である倦怠感を打ち消した。


「おぉ…!これならいける!」


 妙な喜びを感じながらも、俺は冷静を取り戻す。

 進み始めて五分後、体感からして雑草エキスは残り七割を切ってしまった。

 不快感の根源であるドラゴンまでは、もう目と鼻の先くらいまで来ている。あと、少しだ。


 その時だった。


【聞こえるか? 小さき者よ】


 何かが聞こえた。


 脳内に直接話しかけている…!?状態になった俺はパニックになった。

 ほ、本当に話しかけられている!?


 焦っていると、さっきの声の主がまた口を開いた。


【おい! 聞こえているだろう? 返事をするが良い!】


 確かに聞こえている。が、俺は声帯を持っていない。だから返事を返すことが出来ない。


「あーもう、スライムって不便すぎだろ…他人と会話すら出来ねぇのかよ…」


 そう心の中で呟くと、声の主は俺の心の声を聞いているかのように言った。


【ん? 聞こえているぞ?】


「えっ」


 衝撃の事実。なんと心の声を読まれていた。

 しかし良く言えば意志疎通が出来るということだ。


「すみません、感覚以外全て機能してないもんですから、意志疎通なんて出来ないものかと…」


 恥ずかしながら、と、そう言うと声の主は大きな声で笑い始めた。


【ククク。クハハ。クハハハハハハッ‼】


 アニメとかでよくある笑い声してんなぁ…と思いながら、俺も乾いた自虐的な笑いをこぼす。


【面白い。我の姿が見えぬから堂々と歩いていたのか。しかし、スライム種は基本、思考もせず吸収・分解・再生を繰り返すだけの低位モンスター。自らの生息領域から出ることは滅多にないんだがなぁ】


 長いわっ

 声の主はぶつぶつと独り言のように言って考え込んだ。


 …ん?

 『我の姿が見えぬから堂々と歩いていたのか。』?


 …ん?

 これ…もしかして声の主って…?


【ふむ…それに、スライムに自我…か?あり得ぬ筈なのだが…】


 不穏な考えをしていたその時、声の主はそう言った。


「…す、スライムって普通、自我が無いものなんですか…?」


 だとすれば、同類に会っても今みたいに会話は出来ないということだ。


【あぁ、普通はな。…お主は何者なんだ?】


 うーむ、どう言えば良いのか…。

 転生してきた、と言った時のデメリットはあるのか?


 …いや、多分無いな。言っても多分大丈夫だろう。


「自分、転生してきたクチでして…」




【ほぅ…魔物に転生…か。それは珍しいな】


 そう言ったドラゴ…じゃない、声の主は渋い声で言った。


 それからは、そのドラゴンと色々な情報交換をした。




【うむ…ここまで知性があるとは、流石我の魔力を吸った洞窟で誕生しただけあるな!クハハハ‼】


 どうやら、俺はこのドラゴンの住処に生まれてしまったらしい。




 …と、ここで。


 俺は違和感を覚えた。


 俺はドラゴンのいる洞窟にスライムとして転生した。


 『スライム』として。


 俺はこれに見覚えがあった。


 俺は、これを『読んだことがあった』。




 雑草エキスを絶えず吸収しながら、俺は一つの結論に行き着いた。


 それは、一つの質問をしてみることで分かるはずだ。




「あの…すみません」



【ん? どうした?】



「一つだけ…質問していいですか?」



【我に質問か。 構わんぞ、言ってみろ】



 もう大体分かっている。分かっているんだ。


 俺は溜め息混じりにこう言った。 



「お名前は…なんて言うんですか…?」



【名前か。 いいぞ、教えてやろう】



 ごくりと唾を飲み込むフリをする。


 さぁ、答え合わせの時間だ。






【我は、《個にして完全なる者》であり、四体しか存在しない《竜種》が一体。《暴風竜》ウェルドラとは、我の事である!覚えておくように!クハハハハハハッ‼】



「転○ラじゃねぇか‼」




 俺は引き気味にそう言った。


あっまだ続きますよ。


不快感を感じた方、又は私に個人的な恨みがある方、大変申し訳ありませんでした。

ハッピー草でもかじってください、気分が楽になりますよ。




P.S

 祝!ブックマーク1‼

 泣けてきますね、ありがとうございます。

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