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転生したら、なんじゃろな?

わざわざ貴重な時間を無駄にさせて貰って、とてもありがたいです。

これからもへりくだっていきます。


 ここは、どこだ。


 何も見えない、聞こえない。一人で無をさ迷っている気分だ。


 俺は多分、スライムになった。根拠はないが、感覚でそれが分かった。

 本当に異世界転生することが出来たのか?そうだとすれば、俺の特殊能力は何なんだろうか。

 ステータスカンストか?チートスキルか?


 …何かが違う。俺の想像していたのと違う。

 本来なら、神様やら謎の声やらが俺に何かしらを言う筈だ。

 しかし、今まで俺に話しかけてきた者はいない。なんなら環境音すら聞いていない。

 何かがおかしい。


 そう思ったものの、転生することは出来たから何かあるのだろう。俺は辺りを散策しながら考えることにした。

 その時、何かが俺の体の中に入った。今まで味わったことの無い感触に最大限の不快感を覚えた。


「んん…気持ちが悪いが…草、か?これは」


 触り心地(?)からして、これは雑草か何かの類の物だろう。どうやら体の内部に侵食された物体を感知することに関しては、目で見るよりも高性能らしい。

 とにかく、この世界初の第一村人はずばり。雑草。


 俺が雑草の形状をより細かく探っていると、次第とその雑草が熱くなっていることに気付いた。


「えっなにこれあったか…あっづい!!」


 そしてそれは一瞬だった。すぐにその熱は冷め、代わりに雑草の姿は消えていた。

 俺はすぐに理解した。『俺が消化したんだな』と。

 スライムといえば、物体を取り込んだり出来るというものだろう。そこらへんの知識は結構ある方だ。


「…うん、だからなんだっていうね」


 消化、もとい吸収して変わったことと言えば、俺の体調が気持ち回復した程度だ。それ以外には特に無い。

 しかし、この雑草を吸収出来たということは、他の物でも出来るということ。それから俺はそこらへんの物を片っ端から取り込むことにした。




 …大体一時間くらいが経った。


「うっ…はきそう…ぅぇ」


 良くなった体調は元の、いや、それより悪くなった。例えるとすれば、二日酔い中にテキーラショット飲んだ感じだ。まぁ俺は未成年だけどね。

 とにかく俺は絶望的な体調の中、吸収することを止めて探検をすることになった。


 探検、と言ってもだ。今目が見えない状態の俺がやっていること、それは迷路だ。しかも、分かれ道の存在すら理解できない高難易度の。

 どうやらここは洞窟らしく、壁という存在をずっと確認することが出来た。


 うん、洞窟ということは敵のモンスターとかもいる可能性がある、ということだ。

 でも、俺はここで立ち往生していても何も起きないことが分かっている。身の危機を感じながらも、俺は洞窟を探検するのだ。


 …というのは嘘だ。まぁ洞窟探検はするが、身の危険なんて感じていない。

 何故か?俺が主人公だからだ。

 主人公が最初の手探り中に死んだら、それは原稿五枚くらいの小説になってしまうからだ。

 俺は小説の法則を逆手に取り、悠々と洞窟探検に勤しむことが出来た。




 ちなみに、目が見えない俺がどうやって探検しているのか、そんなのは簡単な事だ。

 正式名称は知らないが、『右手の法則』的な何かを使っている。迷路なら、この法則を使えば大体の迷路は完封出来るというわけだ。

 しかも、感覚が冴えてきたのか、俺は今いる場所の広さを確認することが出来るようになった。

 適当に振動を起こし、反響してきた振動を体で感じる。そうすることによって俺は、迷路の分岐点であるところの存在を確認することが出来た。



 唯一の味方である雑草を食いまくりながら探検すること、大体一週間。

 俺は孤独感で押し潰されそうになりながらも歩を進めていた。



「まぁ…あっちの世界に比べたら、まだマシかな…」


 そう思うと、この孤独感も今まで俺が求めてきたものだと錯覚を起こし、恐怖なんて吹っ飛んでいった。




 …大体、一ヶ月が経った。

 最近は雑草の食い過ぎか、俺の体が大きくなった気がした。吸収はつまりそういうことだからしょうがないが、俺にはもうひとつ不思議に思ったことがあった。


 どんどん、感覚が鋭くなっている。


 なんなら、目を使うよりも物を認識しやすくなっている。気がする。

 特に最近変わったことは特に無かった筈だ。変わったことがあるとすれば、雑草に新しい種類が加わった程度だ。


 ん、雑草…?


 あっ、あの雑草のせいじゃね?


 最近、いつものやつかと思って吸収していたときに違う雑草を吸収したことがあった。

 それを吸収した時、急に感覚が鈍くなって、鋭くなった。

 意味が分からないかもしれないが、つまり、ハッピーな気分になったということだ。

 その時はヤバい薬とかに使われている葉っぱとかかと思っただけでスルーしていたが、もしかして…この薬のせいで俺は最近おかしくなっているのでは?


 俺はとりあえずハッピー草(と名付けておく)を見つけたら、一ヶ所に集めておくことにした。

 現実世界じゃ高く取引されていたものだし、こちらでも相当の価値があるに違いない。

 そういう意味での投資として、俺はまた一つ趣味を見つけた。




 ハッピー草をかじりながら歩いていたある時、俺はいきなり禍々しい気配を感じた。

 生理的に受け付けない感覚というか、心の底から嫌いになれる感覚だ。

 なにがあるのかと石を転がして自分の居場所を測ってみる。


 どうやら、大きい空洞に出たようだ。そして、気配の根源は真ん中に佇んでいるようだ。

 俺は恐怖に支配される前に逃げようと残っていたハッピー草を全部吸収し、全力で逃げる準備を完了させた。


 ハッピー草の感覚が俺を襲う。少し気を紛らそうと吸収したのだが、予想以上にその効果は強かった。

 恐怖は消え去り、瞬間的に感覚が鋭くなる。その時、洞窟内の構造が手に取るように分かる瞬間があった。




 ドラゴンだ。

 空洞の真ん中にいるのは、くそデカイ、ドラゴンだった。


 俺は全力で逃げた。恐怖は無かったが、本能は逃げろと警告していた。

 少し場所を離れて頭の中を整理する。


 まず分かるのが、あそこには行かない方がいいということ。


 そしてもうひとつは、あそこ以外に物語を進める材料は無い、ということだ。


 洞窟内では運が良く、モンスターと遭遇することはなかった。俺の感知能力のおかげで、遭遇する前に隠れることに成功したからだ。

 しかし、それではいけない。

 もう一度、行くしかないんだ。


「でもなぁ…あの雰囲気の中を進むのは…うぅ」


 ドラゴンは攻撃してこなかった。

 だから、安全である可能性は必ずしも無いというわけではない。


 …無理だ。あの感覚は二度と味わいたくない。

 そう悩んでいるとき、あそこにいるときのワンシーンを思い出した。

 確か俺は、逃げる直前にハッピー草を吸収した。その時だけは、あの感覚を回避することが出来ていた。


 …これなら、いけるかも。


 俺は来た道を辿って、ハッピー草のある場所まで戻ってきた。

 自分の大きさよりも高く積んであるハッピー草を感知して、俺は決意した。


「目標ができたな…まずは、あのドラゴンと接触することだ!」


なにか、見覚えがありませんか?

もう一回、読み直して見てください。

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