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第一章 『魔法』

「そこよ! 栞ちゃん。腕から目覚めよ、我が黒竜の業火! はい、やってみて」


「本当にやるんですかそれ。......我が黒竜の(以下省略)」


「当たり前だよ栞ちゃん。イメージ出来てこそ魔法は強くなるんだから」


 草原で二人の少女の声が響きわたる。片方は元気に満ち溢れた表情でなにやら痛いセリフを決めてくる。

 もう片方は元気少女が吐いたセリフを棒読みで言っていく。


 ラルチャイリと夢美奈栞は二人で魔法の特訓をしているのだ。

 魔法のプロのラルは技術こそ凄いがテンションが高く、栞はついていけてないようだった。

(あっ、これ迷焦がお金の話した時と似てる)と、微笑むとラルは何事かと首を傾げるがすぐにハイテンションになる。


「いいですか、そもそも私たちの言う魔法とはこの世界の元素、感情粒子を操るというものです。私たち魔法使いが扱う感情粒子は主に火や水と言った記憶が詰まっているものなのです」


 感情粒子にはいろいろ種類がある。楽しい日の記憶。その時の思い。もちろん人のだけではない。

 木や石、水、火などにも時を過ごした記憶は存在する。それを操るのが魔法使いなのだ。


「もちろん法則はありますよ。この世界には感情粒子の塊である心。ようは私たちのように形あるものは存在理由という肉体の代わりになるようなもので保護されているんです。

 その存在理由を一部壊したりして中の感情粒子を使うとします。ですが存在理由にも硬さがあり、形のないものは柔らかくて扱いやすい。例えば火や水ですね。

 逆に形あるものは存在理由が硬いので壊すのが大変。なのでなんとか扱える土などを土魔法と言ったりします」


 あっ、人の存在理由はそれこそ硬すぎて誰もやろうとはしないんですけどね。出来たんなら禁忌ものですよ。としっかり付け加える。これには馬鹿なことをしないようにと言う念を込めた意味合いが含まれる。


 栞は長い話に飽きたのか、近くでひなたぼっこ中の迷焦に歩み寄る。

 迷焦の顔を覗き込むようにして問う。


「メイメイは魔法何種類使えるの?」


「メイ、メイ? まあいいや。微睡み中の僕は無敵なのです。種類ってのは厳密には違うと思う。元は同じ元素からなってるんだから。でも線引きしないと曖昧なのは確かだね。

 ここでは特定の感情粒子を使う四大元素からの派生で雷、氷、光とかの属性魔法。

 治癒や蘇生、創造のような特定の感情粒子を必要としない特殊魔法がある」


 ふぁぁ。大きくあくびをし、むにゃむにゃと口ごもった迷焦は右腕を上げ、人差し指を青空へと向ける。


「僕は自分の武器の補助で氷魔法が出来るよ。それを除けば創造魔法(アートマジック)のみだね」


 言い終えるやいなや、迷焦の人差し指の少し上らへんに一つの枕が出現する。それを掴むなり、自分の頭へともってゆく迷焦。ふかふかの枕に頭を預け、気持ちよさそうに寝る。


「これが創造魔法。作りたいなにかの性質、肌触り、重さ、色、その他もろもろを想像して周囲の感情粒子をかき集める。んで、想像した通りの形に作成。僕は家までの大きさが限度だけどなにかと便利だよ」


 簡単に枕を作り出す迷焦を見てやる気を出す栞。簡単で便利ならそりゃ使えるようになりたい。ラルにご教授願う栞だったが、あいにくラルも創造魔法は使えなかった。


「だいたい先輩を見本にしたら駄目ですよ! 先輩は軽々使ってますけどむちゃくちゃ集中力いりますよ。そのくせ、作った物は存在理由が出来るまでその形を維持しなくてはならないですし。何をどうしたらあんな風に出来るんですかッッ!!」


 と、本人もめちゃくちゃ使いたそうだった。


 体を起こした迷焦はコキコキと関節を鳴らす。


「なあ、ラル。あの大乱闘っていつ始まるんだっけ?」


「あれはですね~。多分明後日には始まると思いますよ」


「そっかぁ。もうすぐだな」


 頭に?マークをつける栞に迷焦は説明する。


「年に一度この街、サンレンスで開催される男vs女のサバイバルデスマッチ。繰り返される大乱闘に男も女も音をあげる。あれよこれよと手段を選ばぬ行いもお構いなし。見事戦乱の世を生き残った者にはトロフィーが貰えるという恐ろしいイベントだ」


「なんそれ凄く怖い」


 栞は手で腕を押さえ、ワタシには出来ないと首を横に振る。説明する迷焦の顔にも険しさが漂い、相当危険なイベントだろうことがわかる。


「だから栞には一旦この街を離れてもらう事になるけどいい? 一応手配はするけど」


「怖いからそうするよ。そうとなれば荷物の整理だよね。今すぐ王立なんちゃら院に行って来るよ」


 栞はよほどそのサバイバルデスマッチが怖いのか、一目散に駆け出す。


 その背中を見届けた二人は深くため息をつく。


「なんで先輩そんなに脅そうとするんですか。そこまで恐ろしいイベントじゃないですよ」


「ラルよ、あんな純粋無垢な少女にあのイベントは悪夢の他ないよ。それに嘘は言ってないよ」


「まあそうですね。確かにある意味では本物の方が恐ろしいです」


 迷焦はげっそりした顔でぼそりと呟く。


「あと......アダルト系......だからね」


 それから二日後、サバイバルデスマッチこといろいろまずいイベントが街一つを巻き込んで開催された。そのイベントの名は、


『童貞サバイバルデスマッチ』


 童貞が逃げ惑い、童貞を守りきる大会が今始まる。


どうもです。今回は魔法について書きましたが伝わったでしょうか。


謎の大会『童貞サバイバルデスマッチ』なるものが行われるわけですが、果たして迷焦は童貞を守れるのか! 

 

 15禁にならない程度に抑えます。

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