第三章 『二人のチート能力者』
クレオスの名字をダルスからラナベントに変更しました。
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俺、帝爆音寺は田舎の集落で育った。
別に不自由は無かったし、店が遠くにあることもこんなもんかと割り切れば暮らせなくは無かった。
ただ俺の集落には良く熊が出てきて、畑を荒らしたり、村人を襲ったりしていたので一概に平和とは言えなかったが。
そんな俺はある秋の季節、親父と共にキノコ狩りで山に出向いた。
今日の晩飯はキノコ尽くしだぞと親父が元気良く言っていたのを良く覚えている。
まあそこで運悪く小熊に遭遇、連なるようにして母熊と出会ってしまい、親父は簡単に殺された。
これでも親父は集落の中では力自慢で筋骨隆々、俺はそんな親父みたいに強くなりたいと思っていた。
そんな親父が簡単に殺される。
力でも押し負け、そして親父の殴りは熊には効かず、圧倒的な力の前になすすべも無く負けてしまう。
その時の俺はまだ幼く、ただ無我夢中になってその場から逃げ去った。あの母熊の強さに俺は恐怖したんだ。
逃げ帰った俺は、その後ただ狂ったように喧嘩に没頭した。力が欲しい。それも熊に勝てるくらいの力が。
本来ならばここは親父の仇を取るとか思うところだろう。
しかし俺は親父の事なんて気にもとめなかった。弱いのがいけないのだ。
俺は圧倒的とも思えたあの母熊の強さを欲した。
野生の動物は人間よりも強い。それは単純な身体能力もそうだが、何より打たれ強い。
比べ人間と言うのはなんとも脆い生き物なのか。
呆れてしまうほど弱いと親父が殺されるところを見て俺は思った。
人間はそもそも肉弾戦が熊に比べ不得意だ。
細い体はあまりにも脆く、五体満足じゃなければまともに動けもしない。
別に俺は人間を辞めたいわけじゃない。
ただ野生で暮らした人間はその分野生の動物に近く、普通の人間よりも身体能力が高くなる。
ならば毎日のように戦っている人間は身体能力が高くなるはずだ。それに、より強い奴と戦った方が強くなりやすいはずだ。
人間でも野獣でも神でも関係無い。
俺は強くなりたいんだ。
それ以外に望む物なんてない。
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「オラオラオラッ! 兄貴の本気とやらを見せてみろよ。じゃなきゃまじで死んじまうぞ!」
爆音寺は迷焦の顔面、腹めがけて拳を振るう。
迷焦はこれをいなすでも無く、弾くでも無く避ける。触れるだけで即ゲームオーバー。
そんな勝ち目のない状況で迷焦はただ避け続ける。
以前の爆音寺の拳なら容易く避けられたが今は違う。彼は格闘術を学び、キレの増した動きで迷焦を追い詰める。
迷焦がなんとか避けれているのは優れた胴体視力とそれに反応出来る体、そして二ヶ月にも及び共に特訓した事での慣れによるものだ。
しかし爆音寺の動きは時を追う毎に速くなりつつある。
時に爆音寺は地面を殴りつけ、爆発の余波と粉塵で迷焦の動きを鈍らせる。
そしてそれが現在、明確な決定打となる。
爆音寺の拳が今度こそ明焦の腹に伸ばされた。
爆発の余波でその場を動けずにいる迷焦に、この余波で加速した爆音寺が進撃する。
迷焦は渋るように剣状のアクウィールを防御のために構えた。
直後、鈍い音がし、嗚咽が聞こえたかと思うと迷焦の剣に亀裂が入る。が、破損はしていない。
それを見て爆音寺は更に笑みを増した。
「へーえ。本物は頑丈だな」
「ちぃっ、聖霊級武器相手にこれとか化け物過ぎるだろ」
「何言ってんだよ兄貴。本番はこれからだぜ」
「勝手に言ってろッ!」
迷焦は爆音寺との間に氷の壁を張る。そんなもの片っ端からぶち壊す爆音寺には通じない。
でも時間なら稼げる。
迷焦は壁が壊される間に距離を取り、自身から漏れ出る感情粒子をアクウィールの修復のために注ぎ込んだ。
創造魔法で作った武器ならば形を維持する事しか出来無いがアクウィールは違う。
生き物に餌を与え、体を休ませるようにして回復させる。
亀裂の入った刀身が徐々に元の姿を取り戻し、それを爆音寺はたまげたとでも言いそうな顔で見る。
「まじかよ、武器の回復は鍛冶屋で修理に出さなきゃ治んねえと思ってたのによ。学院じゃ学べない事も兄貴からは学べる。やっぱ兄貴はいいな」
「アクウィールは生きてるからね。他の武器と一緒にしない方がいいよ」
嬉々として話す爆音寺を迷焦は敵として認識する。左手から青い輝きを放つ剣を軽く数回振るい、納得したように頷く。
それが、嵐の前の静けさという事をまだ爆音寺は知らない。そしてこれから何が起こるのかもだ。
「これから爆音寺に質問するんだけど、完膚無きまでに僕にやられるか、降参するかどっちか選んでくんない?」
「兄貴、それは負け惜しみとしか言わねえよ。それで俺がびびるとでも?」
「......そっかぁ、やっぱり降参してくんないよね。なら、僕が多少痛めつけても問題無いよね」
迷焦は浅く笑う。普段と何ら変わらない口調で。むしろ穏やか過ぎるくらいだ。
しかし迷焦の中で明確にスイッチが切り替わる。
「アクウィール、君を武器状に留めておくために必要な気力を今から半分別の事に使うけど、どれくらい今の形を保っていられる?」
それは囁くように小さな声。それは迷焦の左手にある紺碧色の剣に言った言葉なのだから。
本来なら武器に意思は無い。
しかしテレパシーとでも言うのか、迷焦にのみ剣の声が聞こえてくる。
『う~ん、微妙なとこだね。唯でさえ君はボクの姿を変えるためにその力の殆どを使って、なんとかこの形を保ててる状況なんだ。もって三分、かな』
氷精剣は楽しげに分析する。久しぶりに主人と再開したペットのように子供っぽく告げる。
迷焦はアクウィールの答えに安堵した表情を見せ、含んだ笑みを氷精剣に向ける。
「三分はギリギリかな。相手はチートだからね」
『なんならボクを氷竜の姿に戻したら? そうすれば君の制限は無くなり、本来の精霊使いとして戦えるよ』
「だから言ってるでしょ。それは来るべき戦いの時だけだって」
『そんな事言ってたら身内を失うよ』
「そこまでやると身内まで巻き添えになるって言ったよね。とにかく三分我慢してよ」
『はいはい。相棒のボクが君を勝利へと導こう』
途端、剣が一瞬光り、何事も無かったかのように輝きが消える。
それを満足そうに見つめる迷焦を見て、爆音寺は怪訝な顔をする。
「おいおい、さっきから何やってんだよ。さすがに頭馬鹿になったフリをしてるわけでも無さそうだし。まさか生きている剣と話でもしてるって言うのか?」
「後者で正解かな。アクウィールは元々精霊竜なんだ。それを生きたまま武器にするために僕は常時創造魔法に精神力とかの殆どを裂いてる。この意味がわかるかな?」
「......」
「それを三分の一にしたらどうなるか。これは最終試練までとっておこうと思っていたんだけどね。覚悟してくださいよ」
静かに迷焦は言う。その瞳にはもはや容赦と言う概念は感じられない。
最終試練へと臨もうとして来た少年の力が今解放される。
淡い青い光が剣から流れ、そして迷焦に纏うように吸い込まれていく。迷焦のオーラが、嵐の前の静けさが今、終わりを告げる。
いつの間にか体の一部が氷に包まれ、鎧と化していた。瞳の奥から覗く炎は静かに揺れ動く灯火となる。
「第二ラウンド、開始」
刹那、別人と化した迷焦は恐るべき速度で攻撃(蹂躙)を開始した。
どうも。今回は迷焦の本領を発揮する前振りですね。
えーと、まだ第一章の編集が終わっていなく、読んでいて??となるところも御座いますでしょうがお許しを。
ちなみに迷焦は弟の仇である親を憎んでいたけど栞との話し合いで親への憎しみが少しながら薄れる、ちゃんと話し合おうと決めるっていうのを第一章で書くのでそれを前提で読んでいただけると幸いです。




