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第二章 『強さと力』

『ボルス神話』


 ある時何もない場所に一人の少年がやってきた。理由はわからない。

 ただその少年はここにある石を落とした。

 それがこの世に散らばっていた記憶の欠片、感情粒子を一カ所にへと集めたのだ。次第に形になるその世界はかつて少年が想像した世界を元にして形作られ、法則をも作り上げたのだ。

 

 世界が整うと少年は次に天界を作り出した。

 そして最初の人類、ガブリエル(見守る者)を天界に住まわせこれから先、生まれてくる人間の誕生が地球の人と変わらぬように見守る役割につけた。

 そして人類は生まれ、文明が発達し、世界は安定の日々を暮らすのだった。人口は徐々に増え、身分を作り、領土を作り、時に戦争を起こした。さらに人類の天災となる存在、“神獣”

を作り出した。 

 こうして順調に世界は構築され、少年は喜んだ。

 これで理想通りになると。

 しかし問題が起きたのだ。なんと見守るはずであったガブリエルが世界を支配し出したのだ。さらにガブリエルたちの力はこの世界の人類から天災をはねのけ、人類の進化を妨げたのだ。本来なら天災を経験した事で人類は新たな進化を遂げる事が出来るはずなのだ。

 ガブリエルの行き過ぎた行動にしびれを切らした少年は彼らの立場をわきまえさせるため、総数二百のガブリエルを半壊し自分の方が上だと知らしめた。



 こうして出来た世界で少年は始まりの丘に生える一本の木に背を預け、一粒の涙をこぼした。

 そして人類の進化を見届けながら少年は静かに眠りについた。


 後に石版で書かれた言葉にはこう記されていた。

『僕は世界を壊す強さよりただ一人を守れる力が欲しかった。一人のために手に入れた強さも僕は手放したかった。

僕を殺せる者がいるのなら殺して欲しい。延々と続く時を終わらせてくれる人が現れる事を僕は祈る。    ボルス』



******



「ふぅ~。用語が多すぎるよぉ。でも世界を壊す強さよりのところが良かったなワタシは」


 栞は朗読を終え、迷焦の顔をちらちらと伺う。迷焦は首を横に振りる。


「僕はそんな事を言えるほどの強さが欲しいよ」


「以外だね。メイメイなら救う力の方を選ぶと思ってたのに」


 少し残念そうに栞はすでにテーブルにある紅茶を飲んだ。


「確かに身内は守りたいよ。ただ......今は僕がダントツで弱いから」


 曖昧に笑う迷焦は指で頬をかく。それを聞いて栞も「確かに」と微笑む。

 こうして紅茶を飲んでいる姿の栞はとても絵になっている。

 白銀の髪は紅茶を飲む動作と共にふわりと下ろされ、紅茶の熱で暖かくなったのか頬が赤く染まり、より整った顔立ちを際だたせる。

 服装は最初に迷焦と出会った時と同じ白のワンピースだ。

 

 しかし迷焦はそれに気づく事もなくある言葉が脳裏を過ぎっていた。


______僕はこのままでいいんだろうか。守りたいと思える人たちよりも弱い存在で。


 すぐにその考えを頭から消す。迷焦は普段の表情に戻すが少しぎこちない。

 そんな迷焦に気づいた栞はすぐに話題を変える。


「それにしてもこの紅茶は感情粒子が高密度だから美味しいね」


 この世界の物質は全て感情粒子によって作られる。そしてこの世界の法則は物質に含まれる感情粒子が多いほど質が上がるという物だ。そのため栞の言っている事は正しいのだが、


「さすがにそんな言い方は言わないと思うけど。普通に美味しいでいいと思うよ」


「わかってるよ、元気ない迷焦を励ましたんだよ」


「えっ! 僕元気ないように見えたの?」


「うん。丸わかりだよメイメイの事なら」


 栞がえっへんと腕を組んだのがちょっと子供っぽく、迷焦はそれで笑った。


「そっか、顔に出るくらいか。機動力失っちゃったからさ、変わりとなる技術、力が欲しいんだよ。パーティーの中じゃ僕だけが平凡何だし」


 栞は考えるようにして一間置く。そして何か閃いたのかいきなり立ち上がった。


「メイメイ、気晴らしに武器屋行こ!」


 栞は迷焦の手を掴むなり走り出した。


(気晴らしに武器屋って女の子発想じゃないな)



******


 魔法都市ソロモンは魔法が発達した都市だがそれ以前に工業が発達しているのだ。刀鍛冶から魔法道具、日用品などを昔から作っている。

 最近になって魔法による生産が流行だし、さらに賑わいを見せているのだ。


 商店街らしき出店では武器が直に地面に置かれて売られているのもあれば、ちゃんとした立てかけにかけられたお高そうな品まで様々だ。

 この世界での武器のクオリティは最高質の《神獣級》から精霊やドラゴンなどを素材とした物を《聖霊級》、魔法が付与された物を《霊製級》、ただ良い品質にした物を《名製級》、普通に売られる品を《作製級》と分かれている。


 そして聖霊級の武器を持っている迷焦にとって霊製級までしか置いていないここら辺の店の品は無用の長物のはずだ。栞の武器にしてもここに来るくらいなら学院でオーダーメイドの方が良い品を作ってくれる。

 それをわかった上で栞が迷焦を連れてきたのだとすればいったい何を見せたいのだろうか。


 栞は店を手当たり次第に探しサーベルや太刀、バスターソード、ステッキと様々な武器を中腰になって拝見する。


「メイメイはさ、いろんな武器を見てて楽しいと思わない?」


 くるりと体を翻し迷焦の顔を見る。ワクワクとした顔があどけない。

 対する迷焦はというと難しい顔をする。


「何というか創造魔法で大抵の形を作れちゃうから欲しいって思えないんだよ」


 迷焦がそう言うと栞はあからさまに不機嫌になり、頬の辺りを膨らませる。


「メイメイはもう少し女の子に気を使った方が良いと思うよ。楽しいってのは理屈じゃ無いんだよ」


 栞のお説教を受ける迷焦はちらりと視線を横に向ける。

 そこには銃やボウガン、弓といった遠距離武器が置いてあった。近接戦闘しか行わない迷焦には無用の品だ。

 しかし彼は今、新たな手段が欲しいのだ。そう、単純な事であった。人間は安全な遠距離からの攻撃をしたがる。

 遠距離からなら迷焦の衰えた身体能力もカバー出来る。


 目を光らせた迷焦は高々と叫ぶのだった。


「これだー!!」


 

 アルカディア学院に帰ってきた迷焦は学院が所持する森の中にある射撃場へと到着した。

 そして腰にさしてある《聖霊級》の剣を遠距離武器へと変化させる。

 迷焦の使う創造魔法にはある法則があり、それは媒体にした物質と同じクオリティの物質になるという事だ。つまり聖霊級の素材で作ったのならその武器は聖霊級となるのだ。

 しかし欠点も存在する。元の形をいちいち覚えとかないと形を戻した時に不具合が生じる。

 そのため遠距離武器を形作るのなら一種類に限られるのだ。

 そして迷焦が選んだ武器とは......




******


 次の日のパーティー戦、迷焦たちのパーティーは個々が強すぎ連携にならないとの事で地下ダンジョンへと送り込まれた。

 

 そこは上級のドリム、死霊騎士の寝床となっているらしく奥に進むとドラゴンが眠っているという。本来なら熟練したパーティーが挑むべきダンジョンなのだがパーティーメンバーの中で迷焦以外の者が規格外なのだから仕方のないという事だった。

 さらにハンデもある。


1.爆音寺の能力は腕だけの範囲に限定。


2.栞は魔法増加を使ってはならない。


3.ノエルは極力援護に徹する。殲滅はNG。


 と、なかなかのハンデである。そして四人はそのハンデのままダンジョンへと潜った。


 そして最初に現れたのは死霊騎士五体。陣形はこうだ。

 爆音寺が三体を相手取る。迷焦が二体を引きつけノエルと栞の魔法で片付ける。


 爆音寺は軽々と蹴散らし、迷焦は剣で応戦し、後退すると即座にアクウィールを弓へと変形させ氷属性の矢を放つ。敵は一筋の光の矢によって貫かれ、その形を霧散させる。


 迷焦が遠距離武器として選んだのは弓だった。銃の方が威力はありそうなのにだ。

 しかしこの世界での遠距離武器には追尾や攻撃の軌道という点も重要視され、その点では弓の方が優れるのだ。


 狙いを定めた迷焦は死霊騎士に次々と氷の矢を当て凍らせていく。そして弓から再び剣に戻すと氷付けとなった敵の胴体を切り裂く。

 片付け終わると迷焦は自分への意気込みを兼ねてパーティーメンバーに宣言した。


「僕もみんなに後れをとるつもりは無いです。むしろ追い抜いてやるので覚悟してください」


 ニャハハと笑い、その声はダンジョン内に響き渡り薄暗い空気の中にこだました。


 そして四人は順調にダンジョンを進み、ついに一番奥のドラゴンの元へとやってきた。

 ドラゴンであるために今度こそ連携が必要だ。


「とりあえず俺がドラゴンの注意を引きつけて残りが援護と総攻撃をする。連携とかわかんねえからせれでいいな」


 爆音寺が提案し、全員が頷く。そして四人はドラゴンのいる空洞にたどり着いた。

 ドラゴンは深紅の鱗に緑の(まなこ)は異彩を放つ。全長は十メートルとなかなかでかい。

  

「えーと、攻撃開始ー!」


 迷焦の力無い声で一斉に爆音と閃光が空洞内に轟いた。



 結論から言おう。ドラゴンは難なく倒せた。迷焦以外の三人の活躍によって。

 そしてその時迷焦は思い知ってしまったのだ。決して埋まらない力の差を。このパーティーに迷焦は必要ないという事を。

 小手先の力じゃ届くはずもない強さを。


 <その事実は迷焦の心に嫉妬を植え付けた>



  

次第に迷焦は心に闇が芽生え始める。


みたいな事です。

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