表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/78

第一章 『童貞サバイバルデスマッチ』開幕

 

 迷焦は再び最終試練に挑むと栞に約束した。なのにその栞をこの街から離し、最終試練へ挑むための努力を怠った。

 それは何故か。それは彼にも負けられない維持があるのだ。彼にはそして全ては最終試練をクリアするための布石。


 例えどんなクソな内容の大会だとしてもだ。


******

 早朝にも関わらず辺りがとても賑やかとなっており、何事かと小鳥たちが近くの木に集まってくる。

 

 お馴染みサンレンス中心地の広場は溢れんばかりに人が押し入り、芝生の地面を埋め尽くしている。この中には他の街や王都から来た人もいるのだ。そんな彼らのお目当ては今から開かれるあるイベントだ。


 賑わいを見せる広場全体に司会の声が街中に響きわたる。


『さあ~間もなく始まります。“童貞サバイバルデスマッチ”ルールは簡単。童貞諸君は24時間、合図があるまで己の童貞を守り抜けばクリアです。』


 参加者である男性たちの左上には淡い青色を放つ光が文字らしき形で浮かんでいる。

 そこにはでかでかと『童貞』と表示されていた。


『男性の諸君。もうお気づきかと思いますが、童貞と標記される文字が見えると思います。これは童貞を卒業すればこの文字が消える魔法です。

 女性の皆さんはこの文字めがけて襲ってください。童貞を奪うにつき一ポイント入ります。

 そしてポイント毎に豪華な特典or金貨が手に入ります。

 男性諸君で童貞を守り抜いた者には公共施設自由パスとトロフィーを与えよう』


 この大会、実は童貞を捨てるためのイベントであったりもする。勇気のない人でも向こうから襲って来てくれるなど一部の人からはありがたいイベントであったりもする。

 さらに、この場で恋人を探したりなど婚活目的で来る者も多いのだ。だからバカ正直に童貞を守り抜こうなんて輩はごく少数で、迷焦がそれに当てはまる。


 長ったらしい開催式が終わると皆各々と散らばる。開始までに三分間の空き時間があるのだ。それで逃げるなり何なりしろと言う事だろう。

 迷焦は先輩のユーリと共に隠れるのにちょうどいい物件を探索中だった。辺りは住居が多く、隠れられそうだが見つかった時はやばいと二人で判断したのだろう。あえてスルーする。


 歩きながらユーリは後ろに視線をやる。


「しっかし隠れる時間を与えてくれたのはいいがすでに俺ら後をつけられてるからなあ~。」


 わざとらしい言い方だがユーリのいうとおり、見物に隠れてはいるが何人かの女性がギラギラとした目をこちらに向けているのがわかる。

(獲物を狩る目だよあれ。怖いよ)

 

 もっとも、この場に童貞は一人しかいない。


「ユーリ先輩は童貞じゃないんですよね。手伝ってくれるのはありがたいんですがその理由をお聞きしても?」


「んなもん後輩のためだ。それにお前は童貞守り抜いて賞品手に入れるんだろ。そうすりゃ最終試練への道が近づくってもんよ」


 そう。迷焦はこんなアダルト全開なこの大会に目的をもって来ているのだ。

 それは公共施設自由パス。なんと普段入れないような区域にも一部入れたりするのだ。それが世界最大級の図書館なら普段は公開しない最終試練に必要な情報が手に入れる可能性がある。


 だからなんとしても守り抜くのだ。童貞を。

 

 迷焦が堅く決心してると、また司会の声が聞こえ始める。童貞を守り抜けるかいなか。迷焦にとって、運命をかけた大会の開始の合図だ。

 始まるのだ。デスゲームが。


『ではいいかい! 3.2.1童貞サバイバルデスマッチ。開始ッッ!!』


 合図がなりだすと、見物に隠れていた女性たちが一斉に動きを見せ始める。

 その手にはロープを持っている。縛っていたぶる気満々だが、このデスマッチでは大概の事が許されてしまう。

 女性たちは退路を絶つよう連携を取り出す。おそらくこの手のプロだろう。

 ここでは風俗の女性たちも多く参加している。店の宣伝や顧客獲得を目的としてだろう。


「数は6。多いですね。さらに全員縄持ち。不本意ですが最終試練のため。斬り伏せますか」


「なんだよそのファイナルアンサー? みたいな乗りは! 第一そんな事したらガブリエルの野郎どもにまたボコられんぞ」


「そんな事言われても、このままだとまずいですよ。......ホント、ホントにまずい」


 がち目に青ざめる迷焦。そんな彼のの肩に手をおくユーリは任せろと言い、先輩の風格を表す。イケメンな顔は爽やかにスマイルを浮かべる。

 

 しかしなぜだろうか?その顔には死亡フラグをたてる予感しか感じない。それは主人公を逃がすために犠牲になるモブの姿とも見て取れる。つまり囮になろうとしているのだ。


「ここは俺に任せろ。先輩は壁くらいにはなんぞ!」


 迫り来る女性どもの前に立つユーリは迷焦に向けて指を指す。


「三分間時間を稼ぐ。その隙に迷焦は逃げろ」


 どこかのアニメで聞いたようなフレーズを耳にし、この展開を予想ていた迷焦はユーリの耳元で囁く。

 格好いい事を言っているが騙されてはいけない。ユーリは女ったらしチャンピオンなのだ。


「(......ユーリ先輩。もしもあの女性たちとただお遊びしたいからとかが理由じゃないですよね? ね? ............おまっ、彼女いるのにそんな事駄目でしょ)」


 ギクリギクリと話の途中でユーリがわかりやすく反応してくれるので図星らしい。


「(な、なわけないだろ。先輩を疑うなんて............別にいいだろ時間は稼げるんだから)」


 途中から反抗しだすユーリには先輩の威厳なるものは存在しなかった。

 

 仕方なく迷焦は一人で走り出すが、後ろからユーリと女性たちの笑い声が聞こえてくる。

(あの駄目先輩がー! あんたを頼ろうとした僕が馬鹿だった)


 先輩に殺意を覚える迷焦だが逃げる隙を与えてくれたのも事実。人は善意だけでは動けない生き物なのだ。そう迷焦は割り切る事にした。


どうもです。とうとう始まりました。童貞サバイバルデスマッチ。

 開始早々先輩が落ちる。果たして迷焦は己の童貞を死守出来るのか。

 そして最終試練への有利な特典をゲットてまきるのか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ