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1-2

 女子生徒Aは、自分の気持ちをデカい声で言うなり、走り去っていった。告白の名所『体育館裏』に残っている2人、ごんべーと私。


「何突っ立ってんの?初めてなの?告白されるの」


 私からの問いかけに、ごんべーは中々答えようとしない。


「ねえ、私、あんたに聞いてんだけど」

「…あっ、ハイ、えぇっと…いち、にぃ…」

 あー、イライラする。何なのこいつ。話しかけるんじゃなかった。ごんべーのくせに。


「人数聞いてるんじゃないの!何なのよ。自慢かよ。ごんべーのくせに私の昼寝の邪魔してくるなよ!」

「ごっ、ごめんなさ…ごん…べい?」

 …言ってしまった。変なあだ名つけて遊んでたのがバレてしまった。


「あんたなんて、名無しの権兵衛。ごんべーで充分」



「ねぇ、君、さっきの子の友達じゃないの?」

「は?」


 聞けば、指定された『体育館裏』で待つ2人の女子。一人は告白する子で、もう一人はその結果を聞く子、と思ったらしい。だからさっき私が、告白が初めてかどうか聞いたとき、誤魔化しながら答えて、さらに女子生徒Aからの告白も断ろうって筋書きの演技をしようとしたらしい。ごんべーのくせに、よく考えていやがる。


「俺の名前はごんべーじゃなくて、アラタ。新しいって書いて、アラタ。いい名前でしょ?それから、俺は3年。君は2年。その辺のこと、考えたらどうなの」

「さっき告白した女子生徒Aの名前すら聞かなかったくせによく言うよ」

「…それは確かにそうかも」


 ごんべーは手に持ったままの小さい紙切れを、裏までよく眺めて言った。

 ふと腕時計を見ると、12時25分。始業前の予鈴がなる時間だ。


――キーンコーンカーンコーン…


――ピンポンパンポーン

予鈴のチャイムが鳴り終わると同時に、立て続けで放送が入った。


――2年2組松岡つぐみ。至急職員室まで。

――ピンポンパンポーン



「私じゃん」

「へえ、君の名前、つぐみっていうんだ。覚えとくよ」


 ごんべーが去るのが早いか、私が飛び起きるのが早いか、私は職員室へと駆けた。親を呼び出す等々言われたら敵わん。上履きに履き替えるロスタイムももったいなくて、靴箱の隅に下靴を脱ぎ捨てて、職員室まで靴下で駆け上った。


「失礼します!2年2組松岡つぐみです!さっきの授業では頭が痛くて寝てました!反省しております!もうしません!それでは5時間目の英語に行ってきます!」


 さすが予鈴後の職員室。授業の受け持ちが少ない生徒指導の石神先生くらいしかいない。生徒指導の先生って怖いし長いし、挙句に親を呼び出すって言うから嫌いなんだよな…。


「ちょっと待て、ナメてんのか?松岡ぁ!頭が痛くて寝てただの、反省してるだの、もうしませんだの、矛盾しまくりじゃねぇか!だいたい、頭が痛くて寝ていたのに、保健室にいないんだ?おうちに帰って自分のお布団でおねんねしてたのか?あ?だいたい松岡に友達作れと強要したくはないが、自分の居場所が誰か一人にでもわかるように伝えておけ!」


「あ、あの…親を呼び出すなんてことは…」

「今日は松岡のサボり癖じゃなくて、第一回進路希望調査の面談で松岡を探してたんだ。でも次、行方不明になるようなことがあったら呼び出しだからな!」


「…ハイ」



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