表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/14

【番外編】 オ オ カ ミ 少 年 2

 母さん、やめてくれ。その子はダメだ。その話をしちゃダメなんだ。


 朦朧とした意識は、病室から自分の部屋に帰ってきた。俺の目線はハッキリと天井を捉えている。浮遊した意識が俺の体に戻ってきたんだ。だが、手は、口は、動かないままで、目もしっかり開くことなく、半開きのままぼんやりとした天井のみを取り込んでいた。


――ごんべー!

 母さん、やめてくれよ。俺の話をしないでくれよ。

 俺はもう、話を聞いた人が腫物を扱うように俺に接してくるのが嫌なんだ。俺はどんな待遇も受けない。…中学校での唯一の思い出づくりなんだって、安原先生が俺を答辞を読む人に指名してくれたけど、元生徒会長は傷ついて卒業式に来なかったらしいよ。そんなの、俺は嫌なんだ。辛いのは俺だけで充分なんだよ。


 …水の中で音を聞くみたいな、どんよりとした声がやっと俺の耳に入ってきた。『ごんべー』だなんて、ダサいあだ名、呼ぶ知り合いは一人しかいない。――俺の、唯一の友達。


 ショートヘアの女の子が、動かない顔の前に現れた。目はまだ開かなくて、ショートヘアの女の子の顔は見えないけど、その声、つぐみだろ?

 髪、切ったんだ。似合ってるよ。可愛くなった。いや、前が可愛くなかったとか言ってないよ?前も、大人っぽくて好きだった。つぐみはどんな髪型でも似合うよ。それで、性格が優しければなぁ。


 伝えたい。伝えたい。伝えたい。

目の前の女の子に、自分の心に湧き出した気持ちをぶつけたい。これが全部、長い夢だったとしても、目を開けたら病室で、中学生の『僕』のままだったとしても、自分が終わる前の走馬灯だったとしても。

言い終わったら「ごめん、…嘘(笑)」で済ませて、つぐみには何もなかったように振る舞うから、全部言いたい。意識があるうちに。


――ごんべー!大丈夫!?

 つぐみの声を聞きながら、俺はまた眠りについた。ぼんやりと白かった視界が、しだいにグレー、そして暗くなっていった。水の中のようなぼんやりとした音が、遠のいて遂には聞こえなくなった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ