表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
叙事詩世界イデアノテ  作者: 乃木口ひとか
4章 世界は誰が為に在る
87/177

4-33

 更新再開です。



 サライは思いの他早く立ち直った。


「ケイゴさんもチカゲさんも元々尊敬しているし、今までと特に変わら無いんじゃない? えっと……しゃべり方は今まで通りで良いんですよね? あたし『かしこみ、かしこみ、なんとかかんとか』とか知らないですよ」


 なんだその変な呪文は……もしかして祝詞の事か?


「普通にしてくれ……そんな言葉で話しかけられてもこっちが困る」


「良かったー! じゃあこれからも宜しくお願いします」


 そう言ってサライが頭を下げる。別に敬って欲しくて、神である事を話したわけじゃ無いから逆に助かる。良く解らないが、この世界は変な宗教観とか無い為か、大体はこういう反応で終わるのがありがたい。だけど祝詞とかあるんだなぁ……そこをもっと詳しく聞こうと、口を開こうとしたがアドルフの質問によりそれを聞くことは出来なかった。


「ケイゴとチカゲが神である事と、その今向かっている湯幻郷という場所の関係はなんじゃ?」


 そうだった! その事を話す為に、神であることを先に話したんだったな……。

 俺は三人に湯幻郷を造った経緯を語って聞かせた。別の世界の創造神が、自らの創った世界で滅茶苦茶な支配を行った事、虐げられた種族が居た事、その者達を移民させる事。

 創造神とは別の神(その世界で生まれた神)が、自らの命を賭けて反旗を翻した事により、この世界に二つの種族を迎え入れる事になり、移民の二種族を住まわせる為に宛がった場所が湯幻郷という今から行く村だと説明した。


「流石はケイゴ様でございます。そのお優しい心。このヤーマッカ感服致しました」


 最近ヤーマッカの心酔具合が心配だ。別に優しい訳じゃ無い。技術の向上という打算もあるんだ……あまり持ち上げないでくれ。


 何かを考えていたアドルフが、質問を投げかけてくる。


「うむぅ……異世界の者というわけじゃな? その者達は、この世界とは違った思想を持っているのじゃろう? 馴染めるものかのぅ?」


 まさにそれが頼みたい事であり、俺が心配をしている事の一つである。


「ああ、実は俺も懸念していた。この世界に受け入れたとはいえ、元は他の世界の常識で動いていた者達だ。少しずつ慣れていって貰うしかあるまい。そこで頼みなのだが……」


「大体予想はつくわい……。その者達が馴染めるように手を貸してくれというのじゃろう? それと暫くの間、護ってやってくれって所かの?」


「確かに大体合っているが、それだけでは無い。異世界の者だと隠したままで、この世界に住まわせる為に一芝居打って貰いたいんだ」


 俺の言った事にアドルフは「ふむ?」とだけ言葉を発して続きを促した。


「彼等を元からこの世界に住んでいた“知られざる種族”という事にしたい。それを発見し交流を持つようになったと、モルデカイギルドマスターとして発表してくれないか?」


「ワシとてそう出来るならやぶさかではないが……創立者であるケイゴも知っているとは思うが、ギルドは慈善団体では無いのじゃ。『営利企業のようなもの』としたのは創立者のどちらだったかの? ……まあ、どちらでも良いのじゃがな。ギルドマスターとして動くなら、見返り無しでは動けんのぅ」


 やっぱり侮れないな……確かにそれを言ったのは俺だ。“正当な働きに正当な報酬を”はギルド員を護る為には必須だったし、ギルドを大きくする為には、利益を求めなければならなかった。幹部やその候補には経営理念も教えたからな。

 だがそこは考えてある。ギルドを頼る限りそう言われる事は解っていたのだ。


「勿論見返りはある。一つは観光地としての価値……あの景観はきっと有名になる。そして温泉も沸いた。他にもあの土地だけの特産になり得る物がいっぱいある」


「おお! 温泉とな? あそこにそんな物があったとは……なるほどのぅ。経由するモルデカイにも利益があるな」


 意外と一つ目で良い反応だな。だが本命はそれでは無い。


「もう一つは、その者達が持つ技術と知識だ。この世界には無い技術を持っている。今はまだ物になるか未知数だが、あの二種族が協力すれば出来る筈だ。その技術で作り出した物を優先してギルドに卸す事が出来れば、莫大な利益を生む事になるだろう」


 アドルフは一つ目の利益よりも反応が悪い。何かを考えているような素振りを見せた後、質問してきた。


「その技術で作り出せる物、というのが解らない限り返事は出来んのぅ。まあ一つ目だけでも十分なのじゃが……出来れば教えて貰いたいものじゃ」


 もったいぶるのは俺の悪い癖と言ったのは千香華だったか? そうだよな……判断材料を話さずに事は進められないな。


「すまない。失念していた。それを話すにあたり、不躾だがアドルフの武器は何だ?」


「いきなりじゃの? ワシの武器か? それは……こいつじゃ!」


 そう言うとアドルフのオブサロリスは、自らの袋から何かを取り出した。瞬間に現れたそれをアドルフは受け取り、武器を構えた。


「なっ! 青龍偃月刀だと!?」


 その武器は薙刀に似た形状をしているが、薙刀よりも幅の広い刀身をしていた。何よりも特徴的なのは、刀身に施された龍の装飾である。言わずと知れた三国志演義の関羽が愛用していた武器である。まあ実際は三国志の時代には存在しない武器の為、本物のの関羽が使っている史実は無いと言われているけどな。


 俺はこの武器が何なのか思い出した。これは俺の物語の設定で、辰王が代々受け継ぐ武器だ。この武器は設定で保護されているはずだ。この世界でまさに“神代武器”と称しても良い武器の一つとなるだろう。


「ほぅ……この武器の名前まで知っているか。神なのじゃから当たり前かの? 素晴らしいじゃろ? 本当は次の辰王に渡すのじゃが、あいつとは戦っていないからの! 渡してやる気は毛頭無いわい」


「そうか……それは俺が創りだした武器の一つだ。俺が元居た世界では有名な英雄神が使っていた武器とされている」


 しかし困ったぞ? 予定外だ……。本来は、この世界の武器の脆弱性を補えると言うつもりだったのだが……そんな武器を出されては、それも霞んでしまう。


「ほほぅ。そんな謂れのある武器なのか! 神からの賜り物とは、ますます渡す気が失せたわ」


 そう言いながら、大きな声でアドルフは笑っている。それをサライが羨ましそうに見ていた。うーん……後はサライの武器ぐらいしか引き合いに出せないが、流石に同じ系統の武器を目の前で貶すのは悪い気がする。

 困った俺を見兼ねたヤーマッカが、自らのバックパックから一振りの包丁を取り出して渡してくれた。俺のしたい事を理解して直ぐにフォローを入れてくれるヤーマッカに感謝だ。


「この包丁は……ホブゴブリンの集落産か?」


「左様にございます」


 という事は鋼製か……結構良い物使っているな。ホブゴブリンはゴブリンの上位種で、鉄製では無く鋼製の装備をしている。その強さから鋼製の物はあまり出回らない。


「ヤーマッカ、すまない……後でこれよりも良い物を贈らせて貰う」


「ご随意に……」


 そう答えるヤーマッカに心の中で礼を言いアドルフに向き直った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ